「コモディティ投資」に迫る・後編

「コモディティ投資」最初の一歩は「ETF」から?

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金やプラチナといった貴金属、トウモロコシや大豆などの農産物や天然ゴム、原油や電力を含むエネルギーを投資対象とするコモディティ投資。日常に密着したものが多く、価格の動きも把握しやすいといえるだろう。

ただ、コモディティは株式や債券とは少し違った動き方をするため、初めてだと戸惑うこともあるようだ。コモディティ市場の専門家であるマーケットエッジ代表の小菅努さんに、コモディティ投資の特徴とコモディティ初心者でも始めやすい手法を聞いた。

株式とは異なる要因で値動きするコモディティ

「コモディティ市場は、一般的な金融市場とは法則が異なるものと考えましょう。大きく異なる部分が、価格形成の要因。株式や債券、為替は社会経済や金融政策の影響を受けて変動するものですが、コモディティは主に商品ごとの需給要因で値動きします。そのため、株価が上がったからといって、農産物の価格が上がるわけではありません」(小菅さん・以下同)

価格形成の要因が異なるため、株式投資と同じような感覚でコモディティの値動きを予想しようとしても、うまくいかないのだ。

「法則が違うので、コモディティ、特に農産物はハードルが高いと感じてしまう人もいるでしょう。貴金属やエネルギーは金融市場寄りの部分もあるため、株式投資をしている人には人気があります。例えば、金は株価が下がると安全資産として買われ、株価が上がると売られる傾向があるので、コモディティのなかでは金融市場との関連度が高いのです。原油も景気動向との連動性が強いので、株式に近いといえるでしょう」

株式や債券とは違う値動きをするからこそチャンスが増える、というメリットと捉えることもできるという。

「不景気で株価が下がり、株式投資で損をしたとしても、景気の影響を受けにくいコモディティにも投資していれば、大きな損失を回避し、逆に利益を出せるかもしれません。投資する市場を増やすことでチャンスが増えますし、リスクの分散にもつながります」

ただし、コモディティ投資に関しては、まだまだ情報が少ないというデメリットもある。

「一般的に出回っている情報が少ないので、何を見て投資のタイミングを判断すればいいかわからないといった悩みが出てくるでしょう。農産物であれば、アメリカの農務省(USDA)が毎月需給報告を出していて、日本の農林水産省がその要約を公開しているので、参考にするといいでしょう。金や原油は情報収集が難しいのですが、日々の値動きを追うだけでも得られるものがあると思います」

コモディティ初心者が取り組みやすい手法は「ETF」?

コモディティ投資というと、金の延べ棒を買うといった現物投資をイメージするかもしれないが、ほかにも先物取引やETFといったさまざまな方法がある。

「現物投資は保管コストがかかりますし、自宅で保管する場合には盗難のリスクも考えなくてはいけません。コモディティ投資の基本は先物です。とはいえ、既に株式投資をされている人であれば取り組みやすいのはETFかもしれません。先物取引にも多くのメリットがありますが、証券総合口座とは別に先物を取引するための専用の口座を開設する必要があります。また、取引期限(限月)があり、証拠金取引のため比較的レバレッジが高いなど、投資初心者や未経験者にはややハードルが高いといえます。一方で、ETFは株式と同じ口座で取引ができるので、既に株式投資をされている人なら簡単に始められるでしょう」

コモディティ投資基本は先物で、ETFのなかには原資産が先物というものもあるが、最初に取り組みやすいという観点ではETFに分があるようだ。ただし、コモディティETFにおける注意点も。

「中長期的に保有する場合は、さや(限月間の価格差)に注意が必要です。コモディティETFのうち先物を原資産としている場合、一般的に、先物の限月までの期間が長ければ長いほど将来の価格の不確実性が増すことから、時間的価値は大きくなり、先物価格は高くなります。先の限月の先物ほど高い状態のことをコンタンゴと呼びます。この状態で先物取引の次限月以降の限月への乗換え(ロールオーバー)が行われるとロールオーバーコストが発生します。つまり安い限月を売って高い限月を買うことになるので、こうした先物価格を参照する先物型ETFは、ロールオーバーを繰り返すことで価値が減少していく場合があります。コモディティETFを使う際、とりわけ中長期の投資を行う場合には知っておいた方がいいでしょう」

投資手法によるメリットやデメリット、注意点をしっかり把握したうえで、選択していくことが重要だ。

「コモディティ初心者の方であればETFから始め、慣れてきてもっとリスクをとれると判断したら先物取引をしてもいいと思います。そして、先物取引に難しさを感じたらETFに戻ってもいいですし、2つを平行させる方法もあります」

社会情勢の影響を受けやすい「金」「原油」の動向

最後に、今後気になる金や原油の動向についても聞いた。

「金への投資を判断するうえで重要なポイントが、現在の金融市場のテーマになっているインフレ。米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)などは『現在のインフレは一過性のもの』と分析していますが、万が一、その認識が間違っていることがあれば、インフレが発生する可能性は否定できません。そうしたインフレ下においては、安全資産といわれる金の価格が上がり輝きを増すかもしれません」

原油は、予断を許さない状況にあるそう。

「新型コロナウイルスの流行によって移動が制限されたことから、2020年春ごろ原油価格は一気に下がりました。一方で、2021年10月時点では、全世界的に新型コロナウイルスの流行がある程度抑えられ、移動再開の流れも出てきており、原油価格は大きく上がっています。コロナ次第のため、今後が読みにくいのが正直なところです。新型コロナウイルスも1カ月後には落ち着いているかもしれませんし、感染拡大となるおそれもあります。原油需要は大きく影響を受けるので、感染状況や社会の対応を見ていく必要があるでしょう。また、ここ数年の価格低迷や脱炭素の流れで各国の政府・資源会社が石油資源開発への投資を少なくしている流れもあります。石油輸出国機構(OPEC)など産油国の生産能力が需要を満たせるのか、新たなテーマに注目していく必要もあります」

ETFの登場によって、投資しやすくなったコモディティ。社会や環境の影響を受けて値動きするため、イメージのしやすい身近な投資対象ともいえる。まずはどのような銘柄があるか、チェックしてみよう。

(有竹亮介/verb)

 

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