マネ部的トレンドワード

旗艦店での直販がもたらすメリットとは

4年間で売上18倍。D2Cによって人気家具ブランドとなった「LOWYA」

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Eコマース(EC)全盛の中で、近年増えてきた「D2C」というビジネス手法。D2Cとは、メーカーが自社でECサイトなどを作り、消費者に直接販売することだ。詳しい内容は、以前の記事で紹介した。

そんなD2Cの手法によって成長している家具・インテリアブランドがある。「LOWYA(ロウヤ)」だ。同ブランドは、自社サイトの「LOWYA」でも商品をみずから販売している。

Yahoo!ショッピングや楽天市場といったECショッピングモールにも出店しており、2016年の時点ではそれらが売上の大半を占めていた。当時、自社サイトの売上は5億円ほど、全体の約5%だったという。しかし、2020年には売上90億円ほど、全体の約5割を占めるまでに成長。今後はこちらを伸ばしていくという。

なぜ同社のD2Cは著しく伸びているのか。そして、大手ECモールでも販売しながら、自社サイトでの販売に力を入れる理由とは。近年よく聞かれるキーワードを追いかける「マネ部的トレンドワード」。D2C編の2回目は、LOWYAを運営するベガコーポレーション代表取締役社長の浮城智和氏にその戦略を聞いた。

「安さ」以外を求める消費者が、旗艦店サイトを訪れるように

まずはLOWYAにおけるD2Cのビジネスモデルを整理したい。同社の商品は、自社のインハウスデザイナーがデザインし、国内外100社近くの工場で生産。出来上がったものを倉庫に保管する。そうして、みずから運営しているECサイト「LOWYA」で販売する。この自社ECサイトを「LOWYA旗艦店」と呼んでいる。

「当社はECに特化した家具・インテリアの販売事業を2004年にスタートしました。そのときはまずYahoo!ショッピングと楽天市場に出店。旗艦店を立ちあげたのは2年後の2006年です。とはいえ、自社でサイトの開発から集客、認知を取るためのマーケティングをするのは本当に大変でした」

冒頭で述べた通り、旗艦店の売上は2016年時点で全体の5%ほど。しかし、そこから急激に売上が伸びてきた。理由はさまざまだというが、ひとつ挙げられるのは、ECで家具を購入する人が増える中でニーズが多様化したことだという。

「家具は高い買い物なので、最初はスマホやネットで買う方は少なく、買うとしても安い商品を求める方が多かったといえます。しかし、スマホやネットでの家具購入が増えてくると、購買者のニーズも多様化。安さを求める方もいれば、少し値段が高くてもおしゃれな家具を探すなど、いろいろな要望が出てきました。その中で、安さとは違う部分を重視する方が、私たちの旗艦店を訪れるようになったと思います」

LOWYAというブランドは、デザイン性や世界観を重視した家具を販売している。デザイナーが一から企画しているのもその表れだ。しかし、大手ECモールはどうしても各ブランドが横並びとなり、わかりやすい基準で比較されてしまう。特に「価格の安い順」といった比較が多く、モールを訪れるユーザーも安さ重視で来る傾向が強くなる。

一方、安さ以外のニーズを求める人は旗艦店に向かうようになった。そんな変化も売上の成長につながっているのかもしれない。

「LOWYAとしても、ECモール中心の販売だと安さに重きを置いた商品開発に寄らざるを得なくなります。訪れるお客さまの求める要素がそこにあるからです。徐々に自社サイトに力を入れたのは、私たちのブランドコンセプトに沿った商品を作り、それを求める方が訪れる場所を作りたかったからといえます」

ブランドの世界観を自由に伝えられるというD2Cの価値

自社サイトであれば自分たちが自由にサイトを開発し、見せ方も工夫できる。「ブランドの世界観を伝えるという意味では、D2Cが良いのではないでしょうか」という。

実際にLOWYA旗艦店のサイトを見ると、単に商品を紹介するのではなく、部屋全体の空間演出やライフスタイルを提案するページもある。商品を含めた世界観を発信できるのはD2Cならではだろう。

「そのほか、今後ARが普及すると、家具の購入を検討しているお客さまの部屋にARでその家具を配置してみるといったことがサイト上でできるかもしれません。しかし、ECモールは家具以外にもさまざまな商品を売っており、このようなサイト仕様が今後実現するかはわかりません。ARが必要ない商品も多数ありますから。そういった未来の発展性を考えても、旗艦店に力を入れて自分で実現させようと考えました」

また、ECモールは仲介手数料が発生する。10%近いことが多く、売上が上がるほど仲介手数料も増える。その中で「どこかのタイミングでコストを変動費から固定費に変える必要があると思いました」という。

とはいえ、決してECモールを否定するわけではない。「ECモールによって、何もないところからここまで成長できました。それは感謝しかないと思っています」と浮城氏はいう。

なお、D2CはECモールに比べて認知度を高めにくいという難点もある。LOWYAはSNSを中心にマーケティングを展開。インスタグラムのフォロワーは80万人(2021年10月時点)を超えており、SNSを使って確実に認知を広げている。

そこで浮城氏にSNSマーケティングの秘訣を聞くと、「とにかく失敗すること」だと答える。

「次々に施策を打つと、大半はうまくいかず失敗に終わるのですが、中に少しだけ反応のあるものが出てきます。それらがなぜ反応したのか分析しながら、より広げていく形ですね。D2Cはすべて自前なので、サイトのビュー数やリアクションの大きさが明確に数字でわかります。それはマーケティング面でメリットになっていますね」

浮城氏は「最初から失敗分のコストを加味して現場に予算を渡しているので、現場も恐れずチャレンジできるのだと思います」とのこと。そうして各施策の結果を分析しながら、反応のあるもの、刺さりそうなものを強化していく。

ECに特化した家具・インテリア販売で着々と売上を伸ばすLOWYA。その成長の裏には、D2Cのメリットを理解し、それを生かした経営手法があった。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2021年11月現在の情報です

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