【日経記事でマネートレーニング22】相場ニュースを読む~下がっても高く売り、上がっても安く買える権利
提供元:日本経済新聞社
このコーナーでは日経電子版の記事を読むことで資産形成力のアップを目指します。実際のニュースやコラムを引用し、初心者には難しく思えるような用語をかみくだき、疑問点を解消していきます。金融・経済ニュースをどれだけ読みこなせるかは投資のリテラシーそのものです。日々の情報にリアルタイムで動ける実践力を養いましょう。
22回目は株価指数を対象にした「オプション」取引をとりあげます。21回目の先物とあわせて学ぶと理解が深まります。
アトラクションの待ち時間を短縮できる便利パスのイメージ
先日、大阪にある人気テーマパークに出かけたのですが、人気アトラクションが4時間待ちでした!もはや並んで入場する気はなくなります。このアトラクションに10分で入場できるパスや整理券が売られていたら。。。みなさんは購入しますか?私なら200~300円程度であれば買うかもしれません。4時間を10分に短縮できるなら時間的価値があると考えるからです。では待ち時間が20分程度に縮まったらいかがでしょう。整理券のプレミアム感は間違いなくなくなりますね。
ここで整理券=オプション、アトラクション入場の待ち時間=株価、と置き換えてください。イメージをつかめたでしょうか?
では、サンプル記事をご覧ください。
株式、債券、為替などあらゆる市場にオプション取引は存在します。株式では日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)など株価指数オプションがよく知られており、本稿では日経平均を対象にしたオプションで解説します。株価指数オプションとは、ひとことでいえば自分の望む株価で売ったり買ったりできる権利です。もちろん対価が発生します。テーマパークでは待ち時間が長い、もしくは長くなりそうな環境であるほど整理券の価値が上がるように、株価のオプションも株価が大きく動くときほど価値が上がります。
望みの値段で買えるコール、望みの値段で売れるプット
株価指数オプションには、決まった値段で売る権利=プット、決まった値段で買う権利=コールの2種類があります。プットがわかりやすいので事例を挙げてみましょう。みなさんが自家用車を100万円で売りたいと考えてください。現在、中古車市場では100万円で取引されていますが、モデルチェンジが発表され80万円ほどに下がるかもしれないという情報を手に入れました。
このときどんなに中古車価格が下がっても、「100万円で売れる権利(プット)」が5万円だったらどうしますか?プット代5万円を払っても差引95万円で確実にもうけが出るので安心感がありますよね。相場環境がどのようになっても決まった値段で売り買いできる権利は、手持ちの金融商品にとっての保険の役割を担うわけです。
もっとも、テーマパークの混雑具合によって整理券の価値が変動するように、プットやコールも株価の先行きによって需要や価格が変化します。裏返せば、プットやコールの動きをみていると、株式市場に先高観が台頭しているのか、先安観が芽生えているのかがわかるということです。日経電子版で毎日のようにオプション市場の動向を報じているのは、その重要性からです。
①株価指数オプション=東証株価指数(TOPIX)や日経平均株価を対象にしたオプション
②日経平均オプション=日経平均株価を対象にしたオプション。28000円、29500円というように500円刻みで取引対象が決まっている
③ 売る権利=決まった価格で売れる権利。相場が下がる、あるいは下がりそうな要因が出ると価値が上がり、値段も上がる
④ プット=売る権利
⑤ 権利行使価格=一般に取引されるオプションは、あらかじめ決められた株価水準でしか権利を使えないようになっている。その株価水準を指す
⑥買う権利=決まった価格で買える権利。相場に先高観が台頭すると価値が上がり、値段も上がる
⑦コール=買う権利
では、いつものようにかみくだいて直した記事をみましょう。
オプションには自動車保険のように「〇月〇日までに使いなさい」という賞味期限が存在します。自動車保険は事故を起こさなければ保険金はもらえず、保険料は消えてなくなるだけです。オプションも権利を行使しないままだと「掛け捨て」になりますが、オプションだけを単独で売買できるので途中で換金してもうけを得るチャンスがあります。
テーマパークをもう1度引き合いにだすと1000円で手に入れた整理券だったが混み具合が2時間から3時間に伸び、整理権の価値が2000円に上がったので、整理券を使って入場せずに整理券そのものを売却してしまうという選択がとれるわけです。
オプションを使って株式相場が動かなくてももうけを得ることができますし、相場が上がっても下がってももうけを得ることもできます。オプションを使いこなせると投資戦略の選択肢は大きく広がります。
昨今ではオプションの存在感が増すことによって日経平均株価やTOPIXも影響を受け、節目節目での相場変動が大きくなりました。その解説はまた別の機会に譲ります。
(日本経済新聞社 コンテンツプロデューサー 田中彰一)
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