「自治体」だけでなく「事業者」も支援できる!

「ふるさと納税」にも“コロナ支援”の視点を取り入れよう

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2020年から続くコロナ禍によって、多大な影響を受けている事業者は全国各地に存在する。支援をしたいという気持ちは持ちつつも、個人が支援を行うのは困難な部分が多いだろう。

選んだ自治体に寄付ができるふるさと納税で、応援したい事業者をサポートできる仕組みが導入されているらしい。自治体に寄付し、税金が控除でき、さらに事業者の支援にもつながる“一石三鳥”の仕組みである。この制度と支援の事例について、ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」の宗形深さんに聞いた。

「新たな事業へのチャレンジ」をサポートする仕組み

「『ふるさとチョイス』では『コロナに立ち向かう地域応援プロジェクト』を立ち上げ、2020年3月から事業者支援をスタートしています。通常のふるさと納税と同様に、選んでいただいた自治体に寄付する形ですが、コロナ禍で影響を受けたにもかかわらずチャレンジしている特定の事業者さんから返礼品の仕入れを行うことで、コロナ禍で影響を受けた事業者さんの支援につながる仕組みです」(宗形さん・以下同)

地方税法によって、「返礼品は寄付額の3割以下にすること」と定められている。例えば、1万円の寄付があった場合、3000円以下が返礼品の仕入れによって事業者にわたることになるのだ。残りの7000円近くを、さらなるコロナ支援に充てている自治体も多いそう。

「事業者支援を始めた2020年3月は、一斉休校の影響で学校給食に納品する業者が大きな打撃を受けていたので、そこを支援するプロジェクトとして公開しました。さらに、飲食業界、旅行業界、生花業界も厳しい状況にあったので、範囲を広げていきました。事業者の方々からは『寄付のおかげで持ちこたえました』という話を聞きましたし、寄付者の皆さんが『応援しています』というコメントを添えて寄付してくださるケースも多かったですね」

もともとはコロナ禍で打撃を受ける事業者・生産者を支える取り組みだったが、1年以上の時が過ぎ、支援の形が変わってきているという。

「コロナ禍で打撃を受けた事業者さんがアフターコロナを見据えて前進を図るため、新たなチャレンジに動き出しています。現在は、そのサポートを行う支援がメインになっています。例えば、コロナ禍をきっかけに新たな商品を誕生させ、普及に励んでいる事業者さんなどのサポートです」

その一例が、岩手県北上市の牛たん。地元のお店「牛たん焼の佐助」では海外から輸入した牛たんを提供していたが、空輸が困難になって仕入れ価格が高騰し、提供が難しくなった。そこで、同じく打撃を受けていた地域のブランド牛の生産農家とタッグを組み、和牛のたんをおいしく提供する方法を研究したそう。
福岡県柳川市で340年続く「本吉屋」は、うなぎのせいろ蒸しの名店。現地に行かないと食べられない味を求めて県外から訪れるファンも多いが、緊急事態宣言や外出自粛の影響で大きな打撃を受けた。そこで、お店の味を再現し、うなぎのせいろ蒸しを自宅でも楽しむことができるようにと、お店とふるさとチョイスが共創して製品の開発に挑んだという。
「その国産牛たんやうなぎのせいろ蒸しが、返礼品の1つとなっています。どちらのお店もEC販路立ち上げを視野に入れているのですが、まずはふるさと納税でマーケティングや商品発送のノウハウを蓄積されている段階です。写真や説明書きの見せ方、喜んでもらえる梱包といった細かな部分を経験していただき、事業者さんが自走して事業を継続するための土台を作ることも支援の1つと考えています」

そして今、新たなチャレンジに動き出している事業者を応援するプロジェクトがスタートしている。「Power of Choice project」というもので、2021年12月31日までにふるさとチョイスを通じて行われたふるさと納税の寄付金額の0.5%相当(上限5000万円)を、支援金として新たな挑戦に踏み出している事業者や生産者に届けるというもの。事前エントリーを行えば、寄付者の負担はなく、いままで通りにふるさと納税をするだけで事業者や生産者の支援につながるため、気負わずに寄付できるだろう。

ふるさとチョイス「Power of Choice project ~私たちの選択が、地域事業者の力になる。~」(2021年12月31日まで)

「寄付金の使い道」を選んで寄付する方法も

「事業者さんを支援するだけでなく、自治体の取り組みに対して寄付する『ガバメントクラウドファンディング(R)』という仕組みも提供しています。クラウドファンディングという名前はついていますが、ふるさと納税として利用していただけるもので、自治体が抱える問題を解決するための寄付を行えます」

コロナ対策として、医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーへの支援はもちろん、打撃を受けた施設や交通機関の支援を呼び掛けている自治体などもある。

例えば、東京都三鷹市では、休業要請などの影響で経営難となった三鷹の森ジブリ美術館の支援を募っている。また、既に受付終了しているが、新潟県粟島浦村では、約350人の島民の方々の交通手段であった船が、観光客の激減で運航中止になりかねない状況にあったそう。航路を維持するため粟島浦村が支援を呼びかけ、無事に目標金額達成に至った。

「『ガバメントクラウドファンディング(R)』に掲載されている支援は、返礼品がないケースもあります。寄付でありながら返礼品を受け取ることに戸惑いを感じる方もいると思うので、返礼品なしでこのような細かな使い道から選ぶ支援方法もあることを知っていただけるとうれしいです」

“誰かのため”になるふるさと納税

「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクでは、一般的な寄付の窓口として「コロナ寄付プロジェクト」も用意している。

「10万円の給付金があった際に、困っている人に有効活用してほしいと思っている方の受け皿として『10万円寄付プロジェクト』を設置したのがスタートでした。ありがたいことに寄付していただく方が多いので、名前を変えて継続しています」

「医療支援」「福祉・教育・子ども支援」「文化・芸術・スポーツ支援」「雇用喪失・生活困窮支援」という4つの支援テーマから選択して寄付を行うと、公益財団法人パブリックリソース財団が寄付者に代わって助成を希望する個人・団体・企業に分配する仕組みとなっている。寄付を行うことで、確定申告時に寄附金控除を受けることができる。

「コロナ禍をきっかけに、ふるさと納税や寄付が誰かの支援につながることを実感してくださった寄付者の方々や、返礼品だけでなく使い道を示して寄付を募ろうと考える自治体が増えたように感じています。ふるさと納税には、寄付者に地場産品の魅力を伝えてファンになってもらい、継続的な支援につなげることで、地域活性化が進むという役割があります。寄付者にも自治体にも“支援”という意識を持ってもらえると、より有意義な制度になっていくのではないかと思っています」

返礼品や節税というメリットだけでなく、自治体や事業者に対する直接的な支援となるふるさと納税。“誰かのため”といった視点で寄付先を探すと、各自治体の新たな魅力や知らなかった名店・名品が見えてくるかもしれない。
(有竹亮介/verb)

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