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アプリで車両情報を確認

バイクにもDXの波。ヤマハが取り組む「つながる二輪車」とは

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DXがトレンドとなる中で、二輪車・バイクの分野でもデジタルを使った変革が進んでいる。その一例が、ヤマハ発動機の取り組みだ。

二輪車業界を牽引してきた同社は、通信機能を持った「コネクテッド二輪車」と専用アプリを開発。ユーザーがバイクの状態や細かな情報をアプリで確認できるようにした。これらの取り組みが評価され、経済産業省と東京証券取引所が行う「DX銘柄2021」にも選出されている。

そこで今回、ヤマハ発動機 IT本部デジタル戦略部部長の新庄正己氏と、同MC事業部GB統括部MCつながる推進グループの山田宗幸氏に取材。近年よく聞かれるキーワードを深掘りする連載企画「マネ部的トレンドワード」。DX編の今回は、ヤマハ発動機を取り上げる。

目指したのは全世界5000万人のユーザーとつながり、声を分析すること

バイクや電動自転車でお馴染みのヤマハ発動機(以下、ヤマハ)だが、実は売上の約90%を海外が占め、世界中に点在する関係会社も150を超えるグローバル企業。そんな同社が本格的なDXに取り組み始めたのは2017〜2018年のこと。具体的な内容について、推進役を担ってきた新庄氏が説明する。

「当社では『経営基盤の改革』『現業ビジネスの強化』『未来の創造』という3つの視点のDXを並行して行っています。このうち、『現業ビジネスの強化』で大事なのがお客さまを知ることです。そこで、お客さまとつながる商材開発や仕組みの構築を始めました。世界に5000万人いるとされるヤマハのお客さまとつながれば、行動や要望、お客さまの声をデータで得られます。それを蓄積し分析しながら新たな価値を創造する。そういったDXに取り組んでいます」

では、どのようにユーザーとのつながりを作るのか。そこで生まれたのがコネクテッド二輪車「NMAX」と、専用アプリ「Yamaha Motorcycle Connect(Y-Connect)」である。

これにより、ユーザーはNMAXの車両情報をアプリで見ることができる。さらに、その車両情報をヤマハのデータシステムに溜め込んで分析し、次のサービスや体験の開発につなげていく。2020年にインドネシアから導入を始めた。なお、NMAXは日常の移動手段として比較的高価であるが、決して手が届かないモデルではない。なぜNMAXから、しかも海外から始めたのだろうか。

「ヤマハの売上の40%以上はアジアであり、インドネシアは主要な市場。NMAXが一番売れているのもインドネシアでした。あえてその市場から始めたのは、世界中のお客さまや関係者に、私たちが本気でDXに取り組んでいるという明確なメッセージを出したかったためです」(新庄氏)

もちろん、ここまでに細かな実証実験も積み重ねており、一定の結果が得られていた。だからこそ、本格展開するときは「主力商品から行きたかった」と新庄氏は振り返る。現在、コネクテッド機能のついたNMAXは日本市場でも導入。また東南アジアでは他の車種への導入も進めている。

オイル交換の時期やバッテリーの状態をアプリで確認できる

ここからは、NMAXとY-Connectの仕組みを細かく見ていきたい。通信機能により、どんな車両情報をアプリで見られるのだろうか。プロジェクトに関わってきた山田氏が説明する。

「わかりやすいところでは、オイル交換の時期のお知らせや、バッテリーのコンディション表示、車両に問題や故障が発生した場合の通知などがあります。オイル交換のタイミングは、前回交換してからの走行距離や経過日数などで判断していますね」

なお、トラブルや故障が発生した場合、ユーザーが了承していれば自動でメーカーや第三者に連絡がいく設定にもできる。

「今回まず意識したのは、お客さまのバイクに対する不安を軽減することです。故障は誰もが避けたいものの、完全に無くすことはできません。であれば、この機能が少しでもその不安を減らし、お客さまには“走る楽しみ”に集中していただきたい。そう考えています」(山田氏)

そのほか、燃費を日ごと、月ごと、年ごとに確認できるほか、バイクの最終駐車位置をGPSで記録するなどの機能もある。また、バイクのメーターには表示されないエンジン回転数もアプリで表示可能だ。

「さらに、これらのデータを活用したランキング機能も設けています。お客さまの走行距離やエコ走行をポイント化し、世界中のお客さまに競っていただくなど、新しい体験を生み出すのも狙いです」(山田氏)

もちろんこういったデータはヤマハにとっても宝となる。そのデータからユーザーのバイクの使用状況やニーズがわかってくるからだ。それが次なる「新しい体験」につながる。

ちなみに、車両はBluetoothでスマホと接続し、インターネットにつながる仕組みになっている。

「さまざまな方法を検討する中で、クオリティが高く、かつ安価に提供するためにこの形式を選びました。車両につけたIoTデバイスやスマホとの接続方法には、私たちの研究し尽くしたノウハウが詰まっています」(山田氏)

技術屋の集うヤマハが、二輪車で行ったDX。これはまだ始まりであり、さらなる発展を見据える。山田氏は「いまアプリに表示される情報は安心安全に根ざしたものが中心ですが、今後はお客さまの楽しみ、さらには成功や成長につながるサービスを提供していきたいですね」という。

新庄氏も「デジタルを使い、お客さまの期待を超える体験を届けたい」と意気込む。それは、いままでの技術を否定するわけではない。「デジタルを使えば、ヤマハが培ってきた強みをもっと丁寧に、多くのお客さまに届けられる」という。

今回のようなコネクテッド機能は、二輪車以外の商材でも導入に向けて動いているとのこと。確かな技術で世界にその名を広めたヤマハは、デジタルを活用して、さらにその技術の価値を高めていく。

(取材・文/有井太郎)

※記事の内容は2021年12月現在の情報です

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