マネ部的トレンドワード

在庫ロスが減り環境にもメリット

アパレル大手もD2Cを開始。オンワード樫山の「uncrave」に見る“売り方”の変化

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アパレル会社のオンワード樫山といえば、「23区」や「組曲」などのブランドを擁する業界大手。そのオンワード樫山が2020年の春夏シーズンから立ち上げた新ブランド「uncrave(アンクレイヴ)」が、着々とファンを増やしている。

ブランドの特徴は、メインの販売窓口を自社ECサイトに絞っていること。リアル店舗は常設せず、また、大手ECプラットフォームにも出店していない。オンワードグループの運営するECサイト「オンワードクローゼット」に特化している。

この手法は、近年流行するD2C(Direct to Consumer)というもの。メーカーが商品の企画・生産だけでなく販売まで一気通貫で行うビジネスモデルだ。

なぜuncraveは、D2Cブランドとしてスタートしたのか。また好調の理由はD2Cのビジネスモデルとも関係しているのか。市場の新しい潮流に注目する連載「マネ部的トレンドワード」。D2C編の3回目は、uncraveの国府美咲MDに話を聞く。

商品ニーズを確認して追加販売。自社サイトならではのスピード感

uncraveは、上質でコスパの良い商品を展開し、忙しい女性が服選びに迷う時間を減らそうと生まれたブランド。立ち上げ以降、順調に業績を伸ばしており、2020年度は外出自粛で業績が悪化するアパレルブランドもあった中、uncraveはコロナ前に組んだ売上目標をクリアしたという。

特徴的なのはその戦略だ。自社ECサイトでの販売に特化し、ブランディングも大手メディアの広告ではなくSNSが中心。すでにインスタグラムのフォロワーは4.8万人に増えている。

それにしても、なぜオンワード樫山は新ブランドをD2Cで立ち上げたのだろうか。国府氏は「立ち上げの際に私は別ブランドの担当でしたが」と前置きした上で、uncraveとしての当時の意図を説明してくれた。

「いまの時代にブランドを進化・拡大させるためには、D2Cが最適ではないかと考えたといいます。生活スタイルが多様化する中では、時間や場所を限定せず、いつでもどこでもお客さまが商品を探して購入できるECサイトが便利。また、お客さまのニーズを素早く捉えて反映するには、自社サイトでのD2Cが有効な選択肢でした」

ニーズを捉えて反映するまでのスピード感について、国府氏はこんな例を挙げる。

uncraveでは、シーズンごとにEC上で新商品の先行予約販売会を行う。商品が完売しても顧客は「再入荷リクエスト」ができるため、各商品の人気が明確に数字でわかる。その数字を見て人気の高い商品はすぐに追加販売を行うなど、ニーズに合わせた戦略が取れるのだ。また、人気商品の要素を分析して次のシーズンに生かすこともできる。

これまでのリアル店舗でも顧客との会話などを通じてニーズをつかむことはできたが、ECのようにはっきりと数字で表れにくい。

「D2Cは、お客さまにとっても『自分たちの要望が届いて追加販売が実現した』という実感が湧きやすいと思います。再入荷リクエストや追加販売がコミュニケーションのひとつになっていて、要望に応えることでお客さまとのエンゲージメントが高まると感じています。インスタグラムの投稿に対する反応が多いのも、その表れではないでしょうか」

国府氏はいくつかのブランドに身を置いてきたが「uncraveは特にエンゲージメントが高い」という。再入荷リクエストに対する追加販売などによって、顧客は「自分たちの要望に応えてくれた」という実感がある。だからこそ、SNSでも積極的にブランド側へ意見を伝えるようとするのだろう。そうしてファンとのエンゲージメントが高まっていく。

D2Cは「お金の流れも変える」。売上を確保してから生産するサイクルへ


ECで販売するなら、大手のECプラットフォームに乗ることも可能。しかし、先行予約販売や再入荷リクエスト、追加販売などを行うとき、自社サイトの方が自由度やスピードは高い。

「売れ行きを見ながら柔軟に販売数を追加できるのは、環境に配慮するいまの時代にも合っています。大量生産して在庫が余るよりも、最初は投入量を多くしすぎず、予約販売や再入荷リクエストの状況をふまえて数量を増やす方が商品のロスは減りますから」

いままではメーカーが商品を企画し、ある程度の量を生産。それを販売して初めて顧客の反応が見えた。しかしD2Cでは、この順番に変化が起きている。メーカーが少量生産した段階、あるいはもっと手前の企画段階で顧客の反応を確かめ、それを見て生産数を上げることができる。

さらにこのシステムは、お金の動きも変えている。従来は、企業が商品を企画・生産する段階でコストを捻出し、その後販売してようやく売上が生まれた。しかし、先行予約販売が主流になると、本格生産する前にすでに売上が確保された状態になる。具体的な利益が見えてから商品を作るので、経営面のリスクが少なくなるという。

そのほか自社ECサイトにこだわった理由として、ブランディングの面も関係しているとのこと。

「ブランドの立ち上げで大切なのは、そのブランドのコンセプトやイメージを正確に伝えることです。であれば私たちの手の届く場所、自社サイトでやっていくのがベストだと考えました」

D2Cのビジネスモデルを採用する企業は、大きな広告を打たず、SNSやクチコミ中心で行うケースも多い。uncraveも同様だ。

「特に20〜30代の女性は、SNSで情報収集することが一般的になっています。私たちのブランドは購買者の平均年齢が35〜36歳と、まさにSNSを活用する世代。費用対効果を考えても、大手メディア広告よりはSNSを使ってクチコミで拡散した方が良いと感じています」

SNSに投稿する内容やECサイトの商品説明なども、自社で行っているとのこと。すべて自前でまかなうのは大変な部分もあるだろうが、ここまでの話を聞く限り、D2Cにはそれ以上のメリットを感じる。

現在は洋服だけの展開だが、今後は雑貨などのジャンルにも「トライできれば」と国府氏。着々とファンを広げるuncrave。その飛躍には、顧客とのコミュニケーションやそれに基づく販売戦略など、D2Cのメリットが確実に関係している。

(取材・文/有井太郎)

※記事の内容は2021年12月現在の情報です

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