「株主優待」の裏側に迫る!

優待を拡充して額面が500円アップ!

なとりの株主優待:600品以上ある自社製品から厳選したおつまみ詰め合わせセットがもらえる!

TAGS.

今や個人投資家から大人気の「株主優待」。株主優待を目的に株式投資をしている人も多いのではないでしょうか。各企業の優待内容は、企業のホームページで確認できると思いますが、優待誕生の背景や開発秘話はなかなか知ることができません。

そこで、人気企業の株主優待担当者にインタビューを敢行!株主優待導入の背景や現在の優待に決まった経緯、裏話までセキララに語っていただきました。

今回は、看板商品である「チーズ鱈」、さきいか、サラミなどのおつまみを製造・販売している食品メーカー「株式会社なとり」の株主優待です。

聞き手・執筆:優待好きFP 高山 一恵

――では、本日はよろしくお願いします。早速ですが、なぜ、株主優待を導入しようと思ったのですか?

当社は1999年11月1日に株式を店頭公開したのですが、店頭公開をした最初の年度から株主優待制度を導入しています。

優待を導入した理由は、当社の製品を優待品としてお届けすることで、実際に製品をお試しいただき、当社の事業をより知っていただきたいという想いがあったからです。

当社の事業は、一般のお客様にご利用いただく食品の製造・販売なので、個人株主様=お客様でもあります。ですから、できるだけ多くの個人の方に株主になっていただくことで、ファン株主様をもっと増やしていきたいと思っており、優待には力を入れています。

当社では、2022年3月末時点の株主様に贈呈する優待から内容を更に拡充しています。拡充前は100株以上1,000株未満保有の株主様には2,000円相当、1,000株以上3,000株未満保有の株主様には3,000円相当、3,000株以上保有の株主様には4,000円相当の自社製品詰め合わせセットを贈呈していたのですが、変更後は、それぞれ金額を500円アップしています。これまでよりたくさんの製品を試していただけると思います。

――御社の優待はとても人気がありますが、ますます人気になりそうですね。金額が500円アップも嬉しいですが、長期保有優遇制度の導入をご検討されたりはしないのでしょうか?

長期保有優遇制度が注目されていた頃、実は当社でも検討したのですが、当社の株主様はもともと長期で保有してくださっている方がほとんどだったので、あえて設定する必要はないとの判断になりました。

それよりももっと多くの株式を保有していただきたいということになり、それまで100株以上1,000株未満、1,000株以上3,000株未満の2段階だったのを、2014年に3,000株以上の枠を新しく作って3段階にしました。

――長期保有する株主の方が多いとは、ファン株主の方が多いのですね。御社の製品は魅力ある製品が多いのでファン株主の方が多いのも頷けます。個人的には「チーズ鱈」の大ファンです。

ありがとうございます。「チーズ鱈」については実は面白いエピソードがあるんです。

創業当時から遡ってお話しさせていただきますね。当社はおつまみの会社として知られておりますが、実は創業は精米店から出発しています。

創業者で初代社長の名取光男は長野県出身で、製糸工場に就職しました。その工場で、あまりの忙しさに多くの人が病に倒れているのを見て、「健康こそ何より大切だ」と考え、独学で学んだ栄養学の知識を生かして、工場食の改善に情熱を注いだそうです。その後、事業を始めるために長野県から東京の北区に上京しました。

そして、「食こそ命なり」という強い考えのもと、北区で精米店を始めたのですが、戦争の最中だったので、食べ物が配給制になりお米を扱えなくなってしまい、事業転換を余儀なくされてしまったのです。

そこで、お米に代わる良い商材はないかと探していたところ、栄養豊富なイカを原料とする乾物のスルメに目をつけました。そこから水産加工品を取り扱い仕入れ販売をしていたのですが、それと並行して、1948年にイカを使用した佃煮原料の「いかあられ」の製造卸もしていました。

その後、もっと消費者に直結した製品を開発し、自社ブランドで製品販売ができる「食品加工メーカー」に脱皮しなければと考え、1955年には甘く味付けしたのしイカ「東京焼いか」を発売し、これが大ヒットとなりました。その後も、水産加工品のラインナップを大幅に増やし、水産珍味の事業を拡大していきました。

1960年以降になると、日本人のライフスタイルや食が洋風化してきた時代の背景から、西洋の食材「チーズ」と組み合わせた和洋折衷の珍味の開発に取り組み始めました。しかし、大衆珍味の王様であるイカとチーズを組み合わせたところ、脱酸素剤に反応してイカが赤く変色してしまうという大きな壁にぶつかったのです。

そこで、2代目社長の名取小一が試行錯誤し、鱈のシートで試してみたところ、味も大変美味しく、手もべたつかないので、これはいける!となり1982年に「チーズ鱈」を発売しました。過去の記録を見ますと、三菱総合研究所が発表した成長消費財トップ20で、ランキング1位を獲得したようです。

――すごく面白いお話ですね。「チーズ鱈」は、チーズイカだったのかもしれないと思うと、感慨深いです(笑)。そして、御社がたくさんのおつまみを製造するに至った過程のお話も興味深かったです。今や本当にたくさんの種類のおつまみを製造していらっしゃいますね。

当社では1981年に「常温で流通でき、いつでもどこでも手でつまんで食べられるもの」をおつまみと定義づける「おつまみコンセプト」を制定しました。このコンセプトのもと、水産品以外にもチーズ、畜肉、ナッツなど、さまざまな素材を使った幅広いジャンルのおつまみを開発、製造してきました。

現在の3代目社長の名取三郎は、それまでのおつまみコンセプトをさらに発展させた「新おつまみ宣言」を2006年に制定しました。手でつままなくてもお箸でも楊枝でもいいし、もうちょっとウェットでもいいし、温度も常温にこだわらず、チルド品でもいいということで、新たなおつまみの可能性を追求して、さらに領域を拡大しています。

――まさに御社がおつまみ食文化を作ってきたわけですね。

実はスーパーの「珍味売場」や「おつまみ売場」ができたことに当社が関わっています。もともとそのような売場はなかったようですが、とある小売様からお声がけをいただき、珍味コーナーを開設すると、初日から行列ができるほどの人気コーナーになったそうです。それが後のスーパーマーケット販路開拓の糸口になりました。

今では「おつまみ売場」のコーナーを設置しているお店もたくさん見かけるようになりました。手前味噌ではありますが、当社のおつまみをお届けすることを通して、今後もおつまみという言葉やおつまみ食文化をより広く深く定着させることに努めていきたいと考えています。

いろいろ試行錯誤しておつまみを作ってきた結果、今や年によっても前後しますが、製品数は600品以上あります。

――600品以上ですか!優待の製品を選ぶ時もそんなに多くの製品の中から選ぶのは大変そうですね。

はい。株主様は3万人程度いらっしゃるので、皆様のお好みに合わせるのはさすがに難しいです。

基本的にみなさんがよく好まれる「チーズ鱈」のような定番品と、当社が株主様に知っていただきたい新製品を入れて、毎年内容を変えるようにしています。

当社の製品は、「水産加工製品」、「畜肉加工製品」、「酪農加工製品」、「農産加工製品」、「素材菓子製品」、「チルド製品」、「その他製品」の7つのジャンルに分かれているのですが、全国5つの工場でそれぞれ違う製品を製造しています。

例えば、埼玉工場では、サラミ、ビーフジャーキーなどの畜肉加工製品、ナッツなどの農産加工製品を製造していますし、2017年に竣工した埼玉第二工場では、チーズ専用の工場として「チーズ鱈」などの酪農加工製品を製造しています。

幅広く製品を株主様に知っていただきたいという思いもあり、各工場の生産状況も踏まえながら、製品のジャンルが偏らないようバランスよく入れています。また、バランスよく入れることで、どれか一つでも株主様のお好みに合うものがあるといいなと思っています。

――優待の製品選びにご苦労されている様子が伝わってきます。

個人的には、いつか優待に入れたいと思っている製品がありまして・・・チルド製品の「まろやか チータラ」シリーズです。

こちらの製品は、チルド品ならではのなめらか食感があって、本当に美味しく、特に女性のお客様に大変人気のある製品です。

ただ、要冷品であるため常温で流通させることできないので、優待の製品として入れるのが難しく、この辺りももどかしいですね。

――一押しの製品と言われると食べないわけにはいかないですね。話は変わりますが、ご担当者様としては、優待を送ったあと、株主の方の反応は気になるところですよね。

はい。優待をお送りした後、SNSなどをチェックしまして、株主様のお喜びのお声を見つけて、密かに喜んでいます(笑)。

時には「アレを入れて欲しかった」といったご要望・ご意見もありますが、次回以降の優待品選定に活かしています。

実は、社長をはじめ、役員も株主様の優待に対する反応はすごく気にしております。ですから優待品の発送後、一通りSNSをチェックして、投稿内容をまとめ、社長や役員と共有しています。

――ちゃんと、SNSの投稿の内容をまとめているのですね!すごいです。御社がとても優待に力を入れていることがわかりました。それでは最後に株主の方にメッセージをお願いします。

今後も株主優待を通じて、株主様に当社の事業を理解していただき、より多くの方にファン株主になっていただけると嬉しいです。

これからも従業員一同、力を合わせて、楽しさを演出するおいしいおつまみをお届けできる様に頑張ってまいりますので、引き続きご支援をよろしくお願いします。

――本日は貴重なお話しをいただきましてありがとうございました。

 

【株主優待のプロフィール(データは2021年12月13時点)】

100株以上保有で自社製品の詰め合わせセットを贈呈します。

優待内容は、 2021年度。

●優待商品例:なとり製品詰め合わせセット 4,000円相当(3,000株以上)
※2021年11月10日に公表された「株主優待の拡充」をする前の優待内容

年間予想配当金:22円(予定)
最低投資金額:199,500円(100株単位)
優待に必要な投資金額:199,500円(100株より)
※データは2021年12月13日時点

<合わせて読みたい!>
【絵でわかる】株主優待のもらい方

用語解説

"※必須" indicates required fields

設問1※必須
現在、株式等(投信、ETF、REIT等も含む)に投資経験はありますか?
設問2※必須
この記事は参考になりましたか?
記事のご感想や今後読みたい記事のご要望などをお寄せください。
(200文字以内)

This site is protected by reCAPTCHA and the GooglePrivacy Policy and Terms of Service apply.

注目キーワード