会社員より年金は少ない
フリーランスは年金を70歳まで繰下げても「月9万円」。老後資金をどう確保する?
提供元:Mocha(モカ)
多様な働き方がしやすくなった昨今、フリーランスを選ぶ人が少なくありません。仕事内容を自分で選び、マイペースで働けるフリーランスは、魅力的な働き方です。
しかし、老後資金は、何も対策をしていないと会社員などと比べて少なくなってしまうことに注意が必要。今回は、フリーランスの老後資金準備について、お伝えします。
国民年金だけなら、65歳からの年金は約78万円
フリーランスが加入する公的年金は国民年金です。20~60歳まで保険料を支払い、65歳から老齢年金を受け取るのが基本的な仕組みです。
支払う保険料は、月払いだと1万6610円(2021年度)。
フリーランスは収入に波があることも多く、ピンチの月は支払いが難しい場合もあるかもしれません。そんな時は、国民年金保険料の免除を利用することもできますが、その分老齢年金の金額は減ってしまいます。
そのため、計画的に年払いや半年払いができるといいですね。月払いよりおトクになるメリットもあります。
とはいえ、20~60歳の40年間しっかり払っていても、65歳からの年金は約78万円。月額6万5075円(2021年度)です。これだけで暮らしていくのは、厳しいのではないでしょうか。
そこで、まずは繰下げ受給を考える人も多いでしょう。
70歳まで繰下げ受給しても年110万円
繰下げ受給とは、老齢年金を65歳では受け取らず先延ばしにすることです。繰下げ受給にすることで年金額は増額し、その金額が一生涯続きます。
増額率は1か月あたり0.7%。1年繰下げて66歳からの受給なら8.4%増額、70歳からなら42.0%の増額です。
フリーランスは定年がないので、70歳まで働くことも十分考えられます。働いて収入があるなら公的年金の受取りは繰下げても生活には困らないでしょう。
しかし、年金月額6万5075円が42.0%増額したところで、9万2407円。年110万円にしかなりません。また、2022年4月からは75歳まで繰下げ受給ができる(増額率最大84.0%)ですが、それでも約12万円ですし、繰下げには75歳までの生活費を自分で用意する必要もあります。繰下げに過度な期待は禁物ですね。
老後資金準備には、繰下げ以外の対策もとっておきたいところです。
フリーランスにオススメの老後資金準備
では、どのような対策をとるといいのでしょうか。フリーランスにオススメの老後資金準備を、3つピックアップしました。
●小規模企業共済
小規模企業共済は個人事業主・フリーランスの方が加入できる、積み立てによる退職金制度。毎月1000円~7万円の範囲で掛金を支払って積立てておき、廃業時には共済金を受け取れます。
予定利率は2021年11月現在で約1%。毎月1万円を30~70歳まで掛けると、70歳時には約590万円受け取れます。
メリットは、掛金が全額所得控除になり節税効果があることや、いざという時には貸付を受けられることが挙げられます。
また、掛金を柔軟に変更することができるので、厳しい年には掛金を少なくして支出を減らしたり、利益が多かった年には掛金を増やして節税したりできるのも、フリーランスには大きなメリットと言えるでしょう。
●国民年金基金
国民年金基金は、国民年金の上乗せとして加入できる年金制度。加入は口数制で、年齢と性別で掛金が決まります。
30歳女性の場合、1口目は月額1万1510円(B型、保証期間なし)で60歳までの支払いになります。1口目は保証期間なしとあり(15年間)の2種類から選びます。どちらを選んでも年金は月額2万円上乗せになり、一生涯受け取れます。
2口目以降は支給開始時期や期間、加算額が異なる7種類から選べます。一生涯~5年間の受け取りまで、ライフプランに合わせたものを選ぶとよいでしょう。
掛金は全額所得控除なので、節税効果もあります。ただし、1口目は途中で減額したり、型を変更したりすることはできません。また、会社員になるなど厚生年金加入者になった時には、国民年金基金の加入資格を喪失しますが、任意に脱退することはできません。加入する時にはしっかり考えて加入しましょう。
●iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)
iDeCoは、節税しながらおトクに老後の資金づくりができる制度。掛金は月額5000円から始められ、預金・保険・投資信託などで運用し、60歳以降に受取ります。
掛金は全額所得控除なので、節税にもなります。さらに、運用で得た利益は非課税、受取時にも税の優遇が受けられます。
ただし、掛金には上限額があります。フリーランス・個人事業主などの国民年金の加入者は、月額6万8000円が上限なのですが、これは国民年金基金との合算です。
iDeCoと国民年金基金を組み合わせて、老後資金の計画を組み立てるといいでしょう。
国民年金基金は、将来受け取る金額が確定しています。
iDeCoは、自分で運用先を選べるので、将来の受取額を増やせることが期待できます。その反面、損失を出す場合もありますが、リスクの小さな投資先で長期運用することで、損失はある程度避けられるでしょう。
まとめ
フリーランス・個人事業主が将来受け取る年金は国民年金の月約6万5000円だけ。70歳まで繰り下げたとしても、月約9万円にしかなりません。老後資金準備には、繰下げ以外の対策も必要になってきます。老後資金の準備方法は、それぞれにメリットや注意点があります。働き方に合わせて、自分に合った方法を選んでください。
[執筆:ファイナンシャルプランナー タケイ啓子]
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