副業をしている人は「登録番号」を取得する必要があるらしい!?

令和5年から導入される「インボイス制度」って会社員も影響あるの?

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令和5年10月1日から、仕入税額控除を受けるための新たな制度として「インボイス制度」が導入される。仕入税額控除とは、商品の販売や行ったサービスの対価として預かった消費税から商品の仕入れサービスの対価として支払った消費税をマイナスすること。そのため、主に消費税を納めている企業や個人事業主に影響のある改正といえる。

ただし、会社員であっても副業として仕事の受託契約をしていたり商品を販売していたりする人は、消費税を納めなければならない可能性があるため、影響を受ける場合があるという。インボイス制度の内容と影響について、税理士の宮﨑雅大さんに教えてもらった。

※記事の内容は2021年12月13日現在の情報

納税額や控除額を明確にするための制度

インボイスとは「適格請求書」を意味する言葉で、売り手が買い手に対して正確な適用税率や消費税額などを伝えるもの。インボイスには以下の事項の記載が必要になる。

(1)発行者の氏名または名称
(2)取引年月日
(3)取引内容
(4)受領者の氏名または名称
(5)軽減税率の対象である旨の表記
(6)適用税率ごとに区分した合計額
(7)インボイス制度の登録番号
(8)適用税率(8%・10%)
(9)適用税率ごとの消費税額の合計

「インボイス制度は、消費税の税率が10%に上がった際に始まった軽減税率(現時点での軽減税率は8%)を受けて、導入が決まった制度です。消費税を計算するに当たり、8%と10%のどちらが適用されているか明確にする必要があるため、インボイスが導入されることになりました」(宮﨑さん・以下同)

そもそも、なぜ請求書に消費税を明記しなければならないのか。冒頭でも触れた仕入税額控除が関係しているそう。

「一定の売上基準を満たすと、消費税を納める義務が生じる課税事業者となります。その際、仕入れにかかった消費税を売上にかかる消費税から差し引くことができる制度が、仕入税額控除です。これは、消費税の二重課税を防ぐための制度です。例えば、年間100万円の売上があり、事務所の家賃を年間30万円支払っている場合、売上にかかる消費税10万円(100万円の10%)から家賃にかかる消費税3万円(30万円の10%)を引き、納める消費税は7万円になります。控除や納税の金額を明確にするため、8%と10%を分けて記載するインボイス制度が導入されるのです」

ちなみに、以下の基準のどちらかを満たすと課税事業者となる。どちらも満たさない場合は免税事業者となり、消費税の納付が免除される。

・基準期間(※1)における課税売上高が1000万円を超える
・特定期間(※2)における課税売上高が1000万円を超え、給与支払額が1000万円を超える

※1 個人事業主の場合はその年の前々年、法人の場合はその事業年度の前々事業年度
※2 個人事業主の場合はその年の前年の1月1日から6月30日までの期間、法人の場合は原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6カ月の期間

現在はインボイス制度に対応した請求書でなくても仕入税額控除は適用されるが、原則として令和5年10月1日以降、課税事業者は制度に対応した請求書でないと仕入税額控除を受けられなくなる。そして、制度に対応した請求書を発行するには登録番号が必須となる。

「今回の制度に対応した請求書を作成する場合は、所轄税務署(確定申告をする際の窓口となる住んでいる地域などの税務署)に適格請求書発行事業者の登録申請を行いましょう。登録申請は、申請書の郵送またはe-Taxでできます。令和5年10月1日以降、インボイスを発行したい場合は、原則として令和5年3月31日までに税務署に登録申請を行い、登録番号を発行してもらう必要があります。なお、登録費用などは発生しません」

「BtoC」の副業ならインボイスは不要?

基本的には、課税事業者である企業や個人事業主が関係する話といえるインボイス制度。ただし、副業をしている会社員も、インボイスを提出する必要が出てくるケースがあるという。

「副業といっても、いろいろな形態があります。本業と同様に企業や団体に所属して給与を受け取り、年末に源泉徴収票を受け取っている人であれば、インボイス制度は気にしないで問題ありません。なぜなら、給与には消費税がかからないからです。一方、企業や団体に所属せずに個人で仕事をしていて、確定申告を行っている場合は、インボイス制度の影響を受ける可能性があります」

インボイス制度の影響を受けるかどうかの判断ポイントは、買い手である仕事の依頼主のステータスにあるとのこと。

「フリマアプリで手作りアイテムを売るなど、一般消費者向けのBtoCの副業しかしていない人は、インボイスを発行しなくていいといえます。なぜかというと、一般消費者は買った商品にかかった消費税を集計して納めることがないからです。買い手が消費税を納めないならば、売り手が税率を明確にする必要性が低いからです」

副業で個人に商品やサービスを提供している場合は、適格請求書発行事業者にならなくても良さそうだ。

「また、依頼主が企業だったとしても、取り引きしている相手が1~2社のみで、そのすべてが免税事業者または簡易課税制度を選択している課税事業者であれば、インボイスを発行する必要はありません」

簡易課税制度とは、基準期間(2年前または前々事業年度)の課税売上高5000万円以下の企業を対象に、仕入税額控除を行う際の仕入れにかかる税額をみなし仕入率で計算できる制度。業種によってみなし仕入率は異なるが、サービス業であればみなし仕入率は50%。売上にかかる消費税が10万円の場合、5万円差し引いて納税することになる。簡易課税制度を使う場合、実際に発生した消費税の額を明確にする必要がないため、インボイスも不要となるのだ。

副業を見直すきっかけとなるインボイス制度

「買い手となる依頼主が簡易課税制度を選択していない課税事業者の場合は、副業だったとしてもインボイスの発行が必要になるため、インボイス制度の登録番号を申請しなければいけません。ただ、インボイス制度がスタートする令和5年10月1日から6年間は、仕入税額相当額の一定割合を控除可能という経過措置が設けられるので、その時点で絶対にインボイスを発行しないといけないわけではありません。令和5年以降も取り引きが継続しそうな依頼主に、インボイスが必要か確認するところから始めましょう」

やや面倒な印象のインボイス制度だが、「副業の取り組み方を改めて考えるきっかけにもなり得る」と、宮﨑さんは話す。

「現在は1~2社としか取り引きをしていないものの、将来的に10社、100社、1000社と増やし、規模を広げることを考えるのであれば、今のうちから課税事業者となりインボイス制度の登録番号を申請しておくのも1つの選択といえます。取引相手が増えれば、課税事業者とやり取りする可能性が高まるからです。依頼主のステータスに加え、今後の自分の働き方も踏まえて、検討してみましょう。ただし、何度も言うように登録申請は令和5年3月末までなので、焦る必要はありませんよ」

場合によっては、副業にも影響するかもしれないインボイス制度。まずは制度内容をしっかり把握し、副業の依頼主の状況を確認しよう。それから自分に関係するか判断しても、遅くはなさそうだ。
(有竹亮介/verb)

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