「65歳以上の副業」も失業保険の対象に!?

「副業における雇用保険」の最新状況をチェック!

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離職時に基本手当(通称、失業保険)が受け取れる「雇用保険」。会社員であれば基本的には加入しているものと考えられるが、副業となると話は別。受給要件を満たさなければならなくなる。

2020年8月に変更された基本手当の受給要件に加え、2022年1月1日に行われる雇用保険法の改正について、『得する会社員 損する会社員』の著者でファイナンシャルプランナー・社会保険労務士の川部紀子さんに教えてもらった。

副業も「月80時間以上労働」で雇用保険に加入できる

「2020年8月1日に雇用保険法が改正されたことで、基本手当の受給要件が変わりました。1週間に20時間以上勤務すると雇用保険の加入要件を満たしますが、基本手当を受給するには『原則として、12カ月以上雇用保険料を支払っていること』という要件があります。その支払っていた期間の計算方法が変わったのです。以前は『1社につき1カ月間に11日以上働いていること』を満たさなければ基本手当は受け取れませんでしたが、改正後は『1社につき1カ月間に80時間以上働いていること』でも認められるようになったのです」(川部さん・以下同)

ひと月に11日以上働いていなかったとしても、「8時間×10日」のように月80時間以上の労働をしていれば、基本手当の受給要件を満たすようになったのだ。

「副業であっても、月80時間を超えていれば、離職した際に基本手当を受け取れます。これまでダブルワークなどで労働日数が少なかった人も、失業等給付を受け取りやすくなるといえます」

65歳以上は「労働時間を合算して週20時間以上」なら雇用保険の対象に

2022年1月1日には、雇用保険法のさらなる改正が行われるが、その対象は65歳以上の高齢者。

「これまで65歳以上の労働者も、『1社につき1週間に20時間以上働いていること』という雇用保険の加入要件があり、副業をしている場合も1社ごとに週20時間ずつの労働時間が必要でした。しかし、今回の改正で65歳以上に限り、『2つ以上の事業所の労働時間を合算して1週間に20時間以上働いていること』という要件が追加されるため、複数社それぞれの労働時間が短かったとしても、雇用保険に加入できる可能性が出てくるのです」

これまでは、「労働時間週14時間のA社」と「労働時間週10時間のB社」の2社で働いていても、どちらも週20時間以上に達していないため、雇用保険には加入できなかった。しかし、2022年1月1日以降は、「A社」「B社」の労働時間を合算すると週20時間以上となるため、加入要件を満たすのだ。

「ただし、注意点があります。労働時間が週20時間を超える勤め先が1社でもあれば、合算はできません。また、週5時間未満の勤め先も対象外となります。つまり、1週間の労働時間が5時間以上20時間未満の会社に複数勤めている人が対象となるのです」

ちなみに、本人が会社に申し出をしなければ、雇用保険加入とならない。労働時間を合算するすべての会社に「労働時間を合算すると20時間を超えるから、雇用保険に加入したい」と忘れずに伝えよう。「A社」「B社」の2社で働いている場合は、その両方で雇用保険に加入することとなる。

「65歳以上で雇用保険に加入していると、離職時に高年齢求職者給付金(65歳未満の基本手当にあたるもの)が支払われますが、辞めた会社の分だけです。先ほどの例の『A社』を辞めた場合、『A社』の賃金をもとに算出された給付金だけが支払われます。また、90~360日間支給される現役世代とは違い、65歳以上は一時金での支給になります。そして、離職した場合は、『B社』だけでは労働時間が週20時間を超えないため、雇用保険から外れることになります」

高齢者が働きやすい環境を作るための改正

「2022年の雇用保険法の改正は、2021年4月に努力義務化された『70歳までの就業機会の確保』と関連している」と、川部さんは話す。

「70歳までの就業機会の確保」とは、企業が下記のいずれかの措置を講じるように努める必要があるとするもの。

(1)70歳までの定年引き上げ
(2)定年制の廃止
(3)70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
(4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5)70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

「『就業機会の確保』は65歳から70歳に引き上げられました。それに伴うように雇用保険法も改正されるのは、高齢者も働きやすい環境を整える狙いがあると考えられます。現在の60代の皆さんは、『働きたい』と言っている方が多い印象です。働く理由は金銭的なことだけでなく、社会に必要とされることや日々出かける場所ができることが生きる活力になるから、という面もあるでしょう」

これから60代に突入するプレシニア世代も把握しておくべき改正点といえるだろう。老後の計画を立てる際に、労働について考えるきっかけにもなりそうだ。
(有竹亮介/verb)

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