「世界経済INSIDE‐OUT」
日本の環境パフォーマンスは悪くはない? ~かつての「優等生」、近年の取り組みと今後~
提供元:三井住友トラスト・アセットマネジメント
世界では環境を重視した投資などを通して経済を浮上させようとする動きが急速に高まっています。
ところで、日本は1970年代の石油ショックを機に省エネルギーの技術を高め、京都議定書の締結を主導するなど1990年代までは「環境の優等生」と見られていましたが、最近の評価はどうなっているのでしょうか?
世界の環境ランキングでは日本はそこそこの優等生?
環境への配慮が高い国をランキングしたものには、米国イェール大学環境法政策センターと米コロンビア大学の国際地球科学情報センターが発表する「環境パフォーマンス指数(以下、EPI)」が有名です。
この指数は世界各国の政府・民間による環境政策の実績や環境の持続可能性などを様々な項目から分析・数値化し、国別にランク付けしたものです。
2002年以降は、毎年スイスのダボスで開かれる国際会議「世界経済フォーラム(ダボス会議)」で報告されており、各国の環境政策を比較研究する上で重要な指標となっています。
【図表上】はOECD加盟国(37カ国)で2020年のEPIを上位順にしたものです。これによれば、日本のEPIはOECD加盟国の中でも12位(調査対象180カ国中でも12位)と、かなり上位に位置しており、環境パフォーマンスは決して悪くありません。
特に日本は大気汚染対策や水質管理など衛生面では先進国の中でもかなり質が高く、アジアではナンバー1と言ってもよい国なのです。
一方、【図表下】の10年前の数値と比べたEPIの増減ランキングでは、全く違う風景が見えてきます。
これによると、OECD加盟国内で日本のみがマイナス(EPIスコアが低下)となっています。また増減では世界180カ国のうちでも130位と相当に下位にあります。
※「環境パフォーマンス」:組織が環境に対して取り組んだ測定可能な成果。具体的には、「消費電力量の5%削減」や「ムダ紙使用量の10%減少」など環境負荷を減らすため実際に行った結果。 「EPI」:各国の環境パフォーマンスを評価したもの。2020年は180カ国を対象に算出。具体的に、環境衛生の面では大気の質、水質衛生、重金属、廃棄物処理、生態系の持続力の面では農業、漁業、水資源、汚染物質の排出、気候変動、生物多様性と生物環境、生態系サービスの計11カテゴリーからなる32の指標を用いて指数化(0~100)。スコアが高いほどパフォーマンスが高いことを示す。
日本は脱炭素などの環境改善への取り組みが遅れた?
この結果となった要因について見てみると、日本は生態系に影響を与えるような廃棄物(二酸化硫黄や窒素ガス等)や温室効果ガス(二酸化炭素)の排出などについてかなり評価を落としており、また農業や漁業など第一次産業における環境対応にも厳しい評価がなされているようです。
つまり日本は今でも世界で見れば「環境に配慮した国の一つ」であることは間違いないものの、この10年間においては他国に比べて改善に向けた取り組みが十分ではなかったことが示されているのです。
日本の10年前といえば、東日本大震災が発生した年です。原子力発電所が運転を停止し、電力については石炭などによる火力発電に大きく依存せざるを得ない状況となりました。
また経済活動の維持が急務ななか、地政学的な問題やコスト面の問題もあって再生エネルギー活用へ大きく舵をきることは難しく、結果として低炭素化の流れには大きく後れをとることとなりました。
「この先の10年」は発想を変える必要も?
2021年5月には改正地球温暖化対策推進法が成立し、2022年4月から施行されます。これにより2050年カーボンニュートラルが基本理念として明確に法に位置づけられ、政権交代などがあってもその実現に向けて取組みが継続されていくことになります。
2021年10月から11月に英国で開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締結国会議)では、岸田首相も参加するなど、気候変動問題に対して日本も真剣に取り組んでいることを世界に示す機会となりました。
しかし一方で石炭火力の廃止を志向している世界の潮流とは一線を画し、国際環境NGO(非政府組織)が温暖化対策に後ろ向きな国に贈る「化石賞」に日本を選ぶなど評価は二分されているようです。
日本の「この先の10年」は「過去10年」の延長線上ではなく、目標達成に向けた明確なビジョンのもとで、地球温暖化対策の取り組みを加速していくことが求められています。
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