マネ部的トレンドワード

野村不動産による住宅営業の最前線

住まい探しにおける「ニーズの空白」を埋める。コロナ禍で進む不動産営業のDX

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さまざまな業界の新しい動きを深掘りする連載「マネ部的トレンドワード」。この連載では、コロナ禍に起きたビジネスやサービスの変化を追ってきた。

今回の記事で取り上げるのは、コロナ禍で進んだ不動産業界のDX。たとえば「住宅営業」の領域では、商談のオンライン化や、いままでにないオンラインの新サービスが生まれているという。

具体的にどんな変化が起きているのだろうか。野村不動産 住宅事業本部 営業推進部の五藤安奈氏に話を聞いた。

マンション営業のプロセスを変えた「オンライン商談」


新型コロナウイルスが蔓延した2020年春以降、不動産業界でも盛んにDXが行われてきた。たとえば野村不動産では、マンション営業において大きく2つのDXを進めてきたという。まず1つ目が「オンライン商談」の推進だ。ここでのオンライン商談というのは、ウェビナーなどのイベントではなく、これまで対面で行われていた営業そのものをオンラインで実施する個別商談のオンライン化である。

「これまでのマンション営業は、お客さまがマンションギャラリー(ショールーム)を訪れて物件情報を聞き、購入を検討するのが一般的な流れでした。オンライン商談では、マンションギャラリーに行かずともオンライン上で物件情報をお伝えする形に。2020年4月から開始し、これまでに1万件以上のオンライン商談が行われています」

物件の価格や間取り、周辺環境といった物件情報は、マンションギャラリーなどに出向かなければ得られないのが、この業界の基本だった。「事前にお客さまに伝える情報は最小限にし、現場で細かく伝える」のが不動産の一般的な営業プロセスだったといえる。

そのプロセスを変更し、まずはオンライン商談で基本情報を伝え、その後、モデルルーム見学等を中心にマンションギャラリーへと足を運んでもらう形をとった。

「昔は対面でなければ伝えるのが難しかった複雑な情報も、技術の発達によりオンラインでも齟齬なく伝えられるようになりました。野村不動産では、ダウンロード不要でお客さまが使える専用のウェブ会議ツールを利用し、オンライン商談を実施。商談時にお見せする各物件のデータも、WEB上での閲覧に適したものに作り直しました」

もともとは“コロナ対応”として始まったオンライン商談だが、仮にコロナが終息しても、オンライン商談→ギャラリー見学というプロセスは「定着していくのではないか」と五藤氏。それほど、オンライン商談のメリットが大きかったからだ。

「これまではマンションギャラリーで物件紹介から見学まですべて行っていたので、1回の来場につき3時間ほど必要でした。また、2回以上は足を運ばれるのが普通で、お客さまの負担は大きかったといえます。可能な部分をオンラインで代替することで、お客さまの負担が減るのはもちろん、事前に説明を聞いてからギャラリーに足を運ぶので、効率的な住まい探しにつながります」

加えて、オンライン商談の方が「価格などの細かな情報を冷静に見られる」「次のギャラリー見学でチェックしたいポイントが明確になる」という声も多かったようだ。そのほか、単身赴任の家族などは、オンライン商談の方が家族全員が参加しやすいといったメリットもあるという。

住まい探しの悩みを相談できる「プラウドオンラインサロン」

野村不動産がコロナ禍で進めた大きなDXはもう1つある。2021年8月から開始した「プラウドオンラインサロン」だ。

「野村不動産の経験豊富なスタッフが、お客さまのご要望やお悩みをオンラインで聞きながら、住まい選びをサポートするものです。先ほど話したオンライン商談は、希望物件が絞られたお客さまが対象ですが、こちらはもっと手前の検討段階、たとえばどのエリアに住もうか悩んでいる、あるいは、家探しの仕方がわからないといった悩みにもお答えする“総合窓口”です」

オンラインで相談する内容は、利用者の悩みや要望により千差万別。スタッフと話す中で物件候補を絞り込み、実際にモデルルームを見学することも可能だ。野村不動産が展開する新築マンション・新築一戸建ての「プラウド」シリーズについて、首都圏エリアの全物件情報がオンラインサロンで手に入る。

「これまでは、住まい購入を検討しているもののエリアや希望物件が絞り込めていないお客さま、あるいは、資金面に不安があり決断できないといったお客さまが相談できる適切な窓口がありませんでした。そういったお客さまの“ニーズの空白”を埋めるものになっていると思います」

物件の資料請求はしたものの、ギャラリー訪問までには至らない人もたくさんいる。そういった人がこのサービスを利用して、疑問や不安を解消するケースも多いという。

「サロンはホームページから予約するだけなので、気軽に利用できます。また、不動産のモデルルームやギャラリーは火曜~木曜休みが基本でしたが、こちらはあえて平日営業の土日休みに。平日の隙間時間に住まい探しのご相談をしていただき、希望物件が見つかれば土日にお越しいただくといった流れも増えています」

今回は2つのDX事例を取り上げたが、このほかにも、契約書類のDXなどにも取り組んでいるとのこと。今後も、オンラインで代替するものと、オフラインで続けるものの棲み分けが進んでいくだろう。

コロナ禍で進んだ不動産のDX。この流れは、たとえコロナが終息しても止まらないはず。それほどDXによるメリットは顕著に表れている。


(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2022年1月現在の情報です

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