期限は10年以内ですが…
国民年金保険料の「追納」がお得になるタイミング
提供元:Mocha(モカ)
経済的な事情などで国民年金保険料の免除・猶予を受けた期間がある場合、あとから保険料を納められる「追納」という制度が利用できるのをご存知でしょうか?追納することで将来もらえる年金額を増やすことができます。今回は追納の仕組みと、追納がお得になるタイミングについて解説します。
追納することで年金額を増やせるが、期限もある
追納とは、免除・猶予を受けた期間分の保険料をあとから納められる制度です。保険料の免除・猶予を受けると将来もらえる年金(老齢基礎年金)が免除・猶予の期間や内容に応じて減額されますが、追納することで減ってしまった年金額を増やすことができます。
2021年度の老齢基礎年金の満額は78万900円。たとえば保険料の全額免除を2年間受けた場合、将来もらえる年金額は約76万1378万円となり2万円程度減ってしまいます。この期間分を追納することで、満額に増やすことができるのです。
国民年金保険料の免除・猶予制度では、在学中の保険料が猶予される「学生納付特例制度」が幅広く知られていますが、国民年金の第1号被保険者が利用できる「保険料免除制度・納付猶予制度」も追納の対象です。
追納は年金事務所への申請が必要です。申請が承認されると納付書による追納が可能になります。なお、追納が可能なのは承認された月から過去10年間の免除・猶予期間です。老齢基礎年金は生きている限りもらえるので、長生きリスクに備えるため、チャンスがあれば期限内に追納して増やしておくことをおすすめします。
追納は免除・猶予から2年以内がお得!
追納は早く納めれば納めるほど保険料がお得になります。免除・猶予を受けた翌年度から起算して3年度目以降に追納すると、保険料に対して経過期間に応じた「加算額」が上乗せされるからです。
たとえば2021年度中に追納する場合、2019年度・2020年度の免除・猶予分に加算額はかかりませんが、2018年度以前の分には加算額が上乗せされます。加算額はひと月あたり数十円〜数百円で、年数が経つほど高くなります。
2020年2月以降の保険料については、新型コロナウイルスの臨時特例としての免除・猶予(学生納付特例含む)が受け付けられています。この特例を利用している人のなかには、免除・猶予を受けてからそろそろ2年経つ人もいるのではないでしょうか。追納が可能な状態なら、早めに申請することをおすすめします。
所得税・住民税の軽減効果も!
追納した保険料はその年の所得控除(社会保険料控除)の対象になるため、所得税・住民税の負担を軽くすることができます。たとえば所得400万円の人が年間40万円(約2年分)を追納した場合、どのくらい所得税・住民税が節税できるか見てみましょう。
【計算の前提】
追納保険料:40万円(約2年分)*加算額なし
税率:所得税20%、住民税(所得割)10%
・所得控除
= 追納保険料 × (所得税率+住民税率)
= 40万円 ×(20% + 10%)
= 12万円
・実質的な追納保険料
= 追納保険料 - 所得控除
= 40万円 - 12万円
= 28万円
上記のケースでは所得税・住民税が12万円軽減されたため、実質的な追納保険料は28万円となりました。まとめて追納すると負担が大きいと感じるかもしれませんが、このような節税効果もあるのです。
さらに、所得が増えた年に追納すれば、節税の効果も上がります。所得が一定以上あるなら、追納保険料の所得控除によって実質的な負担額が減らせる可能性があることも知っておきましょう。
追納保険料の所得控除の手続きは会社員なら年末調整、個人事業主やフリーランスなら確定申告でおこないます。追納したら忘れずに手続きしましょう。
まとめ
追納の期限は保険料の免除・猶予を受けてから10年以内です。保険料の免除・猶予を受けている人のなかには、意外と追納の仕組みや期限を知らない人も多いので注意しましょう。期限を過ぎてしまうと、将来の年金額を増やすチャンスを逃してしまいます。追納できるようであれば早めに申請して、将来の年金額を増やしませんか?
[執筆:ファイナンシャルプランナー 鈴木靖子]
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