社員が自社株を買ってもインサイダー取引にならないって本当?

「従業員持株会」が従業員にもたらすメリット

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会社が従業員のために用意する資産形成制度の1つである「従業員持株会」。毎月、給与から一定額を天引きし、勤めている会社の株式を積み立て購入するという制度だ。

ここ数年、従業員持株会の加入者数は増加傾向にある。その理由を探るため、従業員持株会の現状を追いながら、従業員にとっての利点を考えてみよう。

年々増加している「持株会加入者数」

東京証券取引所が公表している「2019年度 従業員持株会状況調査結果」によると、制度を導入する会社の増加とともに、持株会加入者数も増加している。

「従業員持株会」対象会社数
2015年 3123社
2016年 3144社
2017年 3184社
2018年 3206社
2019年 3236社

持株会加入者数
2015年 262万人
2016年 272万人
2017年 278.6万人
2018年 284.8万人
2019年 289.3万人

従業員持株会が保有する株式の時価総額(株式保有金額)は、2017年に調査開始以来初めて6兆円を超え、6兆1112億円となった。また、2015年から2019年の従業員持株会の加入者1人当たりの平均保有金額は、170万~219万円の間で推移している。

「従業員持株会」3つのメリット

従業員持株会の注目が高まっているのは、メリットが大きいからだといえる。ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さんに、従業員にとっての利点を教えてもらった。

メリットその1 株式投資を始めやすい

「通常、株式投資を行う場合は100株単位で購入しなければなりませんが、持株会の場合は千円単位から給与天引きでできるので、少額から投資ができます。始めたことを忘れていて、会社の業績が上がったときに思いがけず大きなお金が手に入ったという人もいるようです」

従業員持株会は、基本的に年数の縛りなどはないため、途中で売却することもできる。車や住宅の購入費、子どもの教育費など、大きな金額が必要になったときの備えとすることもできるのだ。

「ただし、従業員持株会は自社株を従業員同士で共同購入する仕組みなので、各自が自由に売買できるわけではありません。売却の手続きには多少の時間がかかるため、リアルタイムで取り引きできるものではないことは覚えておきましょう」

メリットその2 会社から奨励金が出る

「多くの会社では、従業員持株会の拠出金の5~10%程度の奨励金を支給しています。お金として支給されるわけではなく、拠出金に奨励金が上乗せされるため、保有する株式数が増えるイメージです。普通に株式投資をして、5~10%ものポイントなどが付与されることはほとんどないので、かなりお得といえます」

例えば、毎月1万円拠出すると、500~1000円の奨励金が上乗せされる。会社によって奨励金の割合は異なるため、あらかじめ確認しておくといいだろう。

メリットその3 インサイダー取引が適用されない

「役員や従業員などの会社関係者が、株価に影響を与える非公開情報を知った際に自社株の売買を行うなど、市場の公平性を害する取り引きをインサイダー取引と呼びます。従業員持株会に関しては、計画に基づいた定期的な買い付けであるため、インサイダー取引が適用されないという利点もあるのです」

ただし、未公表の重要事実を知りながら行う持株会拠出額の増加や新規加入は、インサイダー取引規制の対象となる。また、未公表の重要事実を知りながら持株会から引き出した株式の売付けを行うことは、インサイダー取引規制の適用除外とはされていないので注意が必要。

勤めている会社を株主目線で見るきっかけにも

メリットの多い印象の従業員持株会だが、株式投資であることを忘れてはいけない。

「株式投資なので、会社の業績が好調なときはメリットが大きいといえますが、会社の業績が悪くなったときには注意が必要です。奨励金があったとしても、株価が半分になってしまえば損してしまいます。そのため、従業員持株会だけを頼りにするのは避けましょう。いろいろな資産形成方法の1つとして、活用するといいと思います」

また、従業員持株会は個人名義ではなく持株会名義で行っているため、株主優待がもらえない。株主優待をもらいたい場合は、自分名義の証券口座をつくって投資を行う必要があるというところも注意点といえるだろう。

「従業員持株会を始めると、会社の株価をチェックしたり、株価が上がった理由、下がった理由を考えるきっかけになったりします。投資の勉強にもなりますし、株主目線で自分の会社を見ることで、事業の修正点なども見えるかもしれません。少ない額で始めてみると、いろいろな発見があるでしょう」

手軽に投資を経験できて、奨励金などのメリットもある従業員持株会だが、金利のいい貯蓄のような感覚で放置してしまうと損をする可能性もある。会社の株価をチェックしながら、上手に活用していけるといいだろう。
(有竹亮介/verb)

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