“退職して起業した人”は受給期間延長の可能性あり

そもそも「失業手当」ってどうしたら受け取れるの?

TAGS.


退職してから次の就職先が決まるまでの間、受給できる「基本手当(通称、失業手当)」。その受給期間が、現状の1年間から4年間に延長される可能性が出てきた。とはいっても、誰もが対象になるわけではなく、条件があるようだ。

そこで、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さんに受給期間延長の概要とともに、失業手当の基礎知識を教えてもらった。

受給期間延長の対象は“会社を辞めて起業した人”

「2022年1月、厚生労働省が失業手当の受給期間を原則1年間から最大4年間に延長する方針を決めました。その対象となるのは“会社員を辞めて起業した人”です。制度のルール上、失業手当を受給している最中に起業すると、受給打ち切りとなります。しかし、退職から4年以内に廃業した場合、失業手当の受給を再開できるようにするという内容です」

例えば、失業手当の給付日数が90日の人が、給付30日の時点で起業したとする。その2年後に廃業した場合、その時点から残り60日分を受給できるのだ。

「もともと妊娠や病気、ケガによる入院などで働けない場合に、原則1年間の受給期間を3年間延長して最大4年間にする措置がありました。今回の厚生労働省の発表が正式に決まれば、その措置に会社を辞めて起業した人も加わることになります」

ただし、起業した際に、一定の要件を満たすと支給される「再就職手当」を受け取った場合は、受給期間延長の対象外となる可能性がある。

「失業手当」を受給できる人の条件

受給期間延長の対象は“会社を辞めて起業した人”。そもそも失業手当は雇用保険の制度のため、会社に勤めて雇用保険に加入していた人でないと受給できない。

「失業手当を受給するには、“就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、就職活動をしても職業に就くことができない”状態にあることが条件となります。つまり、すぐに働けない状態にある人や就職する気のない人は受給できません。また、退職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12カ月以上あることという条件もあります」

ただし、特定受給資格者や特定理由離職者の場合、失業手当の受給条件は、「退職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6カ月以上あること」に緩和される。

特定受給資格者
会社の倒産や解雇など、会社都合の理由で退職を余儀なくされた人が該当する。

特定理由離職者
「有期労働契約の更新が認められなかった」「配偶者の転勤についていくため通勤が困難になる」など、やむを得ない理由で退職する場合に認定される。2020年2月25日以降、新型コロナウイルス感染症の影響で自己都合退職した場合も、特定理由離職者に認定される。

「『雇用保険に加入していた』人が『職業に就くことができない』といった条件を満たすと、失業手当を受給できますが、何もしなくても受け取れるわけではありません。勤めていた会社に離職票を発行してもらい、それを持ってハローワークで手続きを行いましょう」

失業手当受給のステップ

(1)必要書類を持ってハローワークに行く
以下の必要書類を持参して、ハローワークで失業手当の支給と再就職のための手続きを行う。

必要書類
・雇用保険被保険者離職票
・マイナンバーカード(または通知カード)
・身元確認書類
・証明写真2枚
・印鑑
・本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

(2)雇用保険説明会に参加する
離職票の提出をして求職の申込みを行ってから7日間の待機期間の後、ハローワークの担当者から指定された日時に雇用保険説明会に参加する。その際、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が渡される。

(3)失業認定日にハローワークに行く
説明会参加後、失業認定日にハローワークに行き、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」を提出して失業の認定を受ける。失業認定には、月2回以上の求職活動が必要。

(4)失業手当を受給する
通常、失業認定日の5営業日後に、失業手当が指定の口座に振り込まれる。1回目の失業認定日以降は4週間ごとに認定日が設定され、その都度失業認定を受ける必要がある。

「手続きの期限などはありませんが、受給期間は原則1年間なので、早めに手続きした方がいいでしょう。特に、自己都合で会社を辞め、特定受給資格者にも特定理由離職者にも当てはまらない人は、最初の失業認定日から2カ月間は『給付制限』が設けられ、失業手当を受給できません。手続きが遅れると、その分受給のタイミングも遅くなります」

人によって異なる「給付日数」と「支給額」

失業手当は、全員が同じ期間受給できるわけではないという。

「退職理由や年齢、雇用保険の被保険者期間といった条件によって、給付日数は決まるのです。自己都合よりも会社都合、若い人よりも中高齢の人の方が日数は長い傾向にあります」

特定受給資格者の給付日数
(特定理由離職者の一部もこの日数になる場合がある)

特定受給資格者以外の給付日数

「2020年6月以降、新型コロナウイルス感染症の影響による倒産や解雇で離職を余儀なくされた場合は、同業他社への転職が難しいこともあり、給付日数が60日延長されます(※)。当てはまる人は、ハローワークで確認しましょう」

※35歳以上45歳未満で所定給付日数270日の人、45歳以上60歳未満で所定給付日数330日の人に限っては30日延長

失業手当の支給額は、退職前の給与が関係してくる。

「退職する直前の6カ月の給与の合計を180で割った金額の50~80%(60~64歳については45~80%)が、1日当たりの支給額になります。賃金の低い人ほど高い率となるようで、年齢ごとに上限額も設定されています」

失業手当日額の上限(2021年8月1日現在)
30歳未満 6760円
30歳以上45歳未満 7510円
45歳以上60歳未満 8265円
60歳以上65歳未満 7096円

失業中の大きな支えになる失業手当。金銭的な余裕をもつことができれば、求職活動に専念できるだろう。そのためにも、失業認定日の手続きは忘れずに。
(有竹亮介/verb)

"※必須" indicates required fields

設問1※必須
現在、株式等(投信、ETF、REIT等も含む)に投資経験はありますか?
設問2※必須
この記事は参考になりましたか?
記事のご感想や今後読みたい記事のご要望などをお寄せください。
(200文字以内)

This site is protected by reCAPTCHA and the GooglePrivacy Policy and Terms of Service apply.

注目キーワード