新しい金融のカタチ

社債の購入を身近にし、分散投資を叶える

私募社債に特化した日本初のネット証券。「Siiibo証券」は債券市場の民主化を目指す

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企業が資金調達のために発行する「社債」。個人投資家にとっては、ソフトバンクの社債などがおなじみかもしれない。これらは「公募債」と呼ばれ、広く一般の個人投資家が 申し込みできる代わりに、さまざまな規制があり、発行できる企業も限られていた。

一方、社債の中には古くから「少人数私募社債」というものもある。これは、限られた人しか手にできない社債で、情報も公開されず、個人投資家がアクセスする機会はほとんどなかった。

しかし、そんな少人数私募社債をオンラインで購入できるようにしたネット証券がある。「Siiibo証券」だ。

少人数私募社債に特化したネット証券としては「日本初」(※)とのこと。一体どんなサービスなのか。Siiibo証券 代表取締役CEOの小村和輝氏に取材した。
※Siiibo証券調べ2022年1月19日時点

50人未満しか買えないことから“縁故債”と呼ばれるケースも多い


まずは少人数私募社債について説明したい。企業が発行する点では公募債と変わらないが、こちらは1 債券につき50人未満しか取得勧誘を受けられない。その分、公募債に比べて少額で発行でき、金利や年限(満期までの期間)なども柔軟に設定できる。そのため、さまざまな企業が活用しやすい社債といえる。

とはいえ、わずか50人未満しか購入できないからこそ、少人数私募社債の情報はほとんど一般に公開されず、購入できるのは、企業の主要取引先や株主、あるいは自社の役員や親族などが大半だった。このことから「縁故債」とも呼ばれている。

つまり、少人数私募社債を発行している企業は存在しているものの、私たち個人投資家がその情報を知り得る、アクセスできる機会はほぼなかったといえる。それをウェブ上のプラットフォームに乗せ、広く個人投資家が購入できる仕組みを作ったのがSiiibo証券だ。

「少人数私募社債をはじめ、社債は購入後の値動きに一喜一憂することのない、シンプルで透明性の高い金融商品です。そういったメリットがあるからこそ、社債をもっと多くの方に届けたいと思い、このサービスが生まれました」

立ち上げの狙いについて、小村氏はこう説明する。彼の言う通り、社債は購入時に決められた利率と期間で運用され、日々の値動きのチェックが必要ない。その企業の倒産などがない限り、元金に利息がプラスされて返ってくる。

こういった利点があるからこそ、社債をもっと広めたいと考えたという。その中で、個人投資家の触れる機会がなかった少人数私募社債のプラットフォームを作った。「私たちが目指すのは、債券市場の民主化です。その目標を掲げる上で、少人数私募社債を広めることには意味があると思いました」という。

投資家と企業のマッチングが成立すると、社債を購入できる

では、Siiibo証券ではどのように社債を購入するのだろうか。ほかの金融商品のように「申し込むだけ」というわけにはいかない。順を追って説明しよう。

まず、Siiibo証券で口座開設すると、サイト内で社債の発行を検討している企業の情報(IR)を閲覧できるようになる。その情報を見る中で、興味のある企業が見つかれば、発行してほしい社債の希望条件を入力する。1口当たりの金額や金利、年限などだ。

そうして、これらを企業側へのリクエストとして送る。このとき、ほかの投資家が同じ企業にどんなリクエストを出しているか見ることもできる。

「企業はこういった投資家のリクエストを見て、社債を発行するかどうか、発行する場合は金額や金利、年限をどうするか、条件を決めていきます。そうしていざ発行する際は、企業が選んだ投資家に案内が行きます。つまり、投資家のニーズや意見を聞きながら企業と弊社で社債を作り、投資家にオファーして購入へと至るのです」

読者の中には、購入までの仕組みが難しいと感じる人もいるかもしれない。しかし、この仕組みこそがSiiibo証券のポイント。少人数私募社債には細かなルールがあり、それを満たしつつ 商品化するために、このスキームを作ったといえる。

購入手順がわかったところで、具体的にどんな社債が買えるのだろうか。現在は50の企業がIRを掲載し、社債発行を検討しているという(2022年1月19日現在)。企業名は公表できないが、上場企業から未上場のスタートアップまで、顔ぶれは幅広い。

「これまでに発行した社債の金利は2〜4%の水準ですが、7%程度の商品も検討対象に入っています。年限は2~3年が主流。1口当たりの金額は50万~300万円と、こちらも幅広いですね。全体で50口未満となるため、1口あたりの金額はどうしてもある程度高くなります」

Siiibo証券は2021年3月にローンチされ、これまでにさまざまな社債が発行されてきた。公開可能な中から過去の実績を紹介すると、五常・アンド・カンパニー(1口300万円、年限3年)や、ツクルバ(1口100万円、年限3年)、琉球アスティーダ スポーツクラブ(1口50万円、年限3年)などが発行している。

Siiibo証券の利用者について聞くと、比較的利回りの高い商品であることから、大きな資産を投じて確実に運用したい人が多い様子。「50~60代の方が、決められた期間で着実に運用しようとするケースも増えています」と小村氏。

なお、口座開設をする際には、金融資産額1000万円以上、投資経験1年以上が基準となっており、それなりの資産と経験を持つ人を対象にしている。

クラウドファンディングやソーシャルレンディングとの違いとは


「個人が企業にお金を貸し出すサービス」という意味では、クラウドファンディングやソーシャルレンディングの形態も近年出ている。元金に利息がついて戻ってくるのも同じだが、これらとSiiibo証券は、正確には違う仕組みになっている。

まず、Siiibo証券では、社債という形で投資家が企業に“直接”お金を貸し出すが、クラウドファンディングやソーシャルレンディングは、間に専用のファンド等を作り、投資家はファンドを通じて“間接的”にお金を貸す。

この仕組みの差は、投資家の運用面でもいくつかの違いを生むという。まず1つ目の違いが、利益に対する「税率」の違いだ。

「私たちの場合は社債を扱うため、その利益には分離課税が適用されます。個人投資家の場合、税率は20.315%(※1)。一方、クラウドファンディングやソーシャルレンディングといったファンドを通じての貸付投資は、総合課税が適用される認識です。その場合、金額に応じて税率は高くなります。最大55%(※2)まで上がることもあり、運用資金が大きいほど差になってきます」
※1:国税:15.315%(所得税+復興特別所得税)及び地方税:5%
※2:国税:5~45%(所得税)及び地方税(住民税):10%
※いずれの場合も詳細は必ず税理士にご確認ください

もうひとつ、リスクの面でも違いがあるという。Siiibo証券は法律上の「第一種金融商品取引業者(一種業者)」であり、ソーシャルレンディング業者は「第二種金融商品取引業者(二種業者)」となる。この点から、以下のような違いが生まれるという。

「一種業者は、より厳格なルールが定められており、たとえば私たちSiiibo証券が倒産しても、投資家の資産は投資者保護基金などを通じ一定保護されます。二種業者もそうした体制を講じている企業もいらっしゃるかもしれませんが、私たちはその点を法律等で担保しているのが強みだと思います」

先ほど、Siiibo証券では「大きな資金を運用する人が多い」と書いたが、一種業者だからこそ、投資家も安心して大きな資金を預けられるという観点もあるだろう。一方で、今後は「1口50万円の社債など、より少額で購入できる商品も増やしたい」と小村氏は展望する。

「分散投資を実現する上でも、株式などと併せて、個人投資家が社債を保有できるといいですよね。そのためにも私たちのサービスが役に立つと思います」

個人投資家にとって、ほとんど触れる機会がなかった少人数私募社債。Siiibo証券は、そこにアクセスできる一本の“道”を通したといえる。この道がより広く強固になれば、そこを行き交う人は次第に増えることだろう。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2022年2月現在の情報です

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