マネ部的トレンドワード

相次ぐ実証実験で注目の的に

測量ソフトウェアの企業が自動運転に参入。アイサンテクノロジーが描くモビリティの未来地図

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世の中のトレンドを深掘りする連載「マネ部的トレンドワード」。自動運転編の第2回となる本記事では、アイサンテクノロジーを取り上げる。

アイサンテクノロジーは、自動運転の実証実験でよく見かける企業名のひとつ。そう聞くと、自動車関連メーカーやIT企業をイメージする人もいるかもしれない。

しかし同社の“正体”は違う。測量の分野で52年の実績を築いてきた名古屋の企業だ。それがいまや自動運転車両の開発や各地の実証実験の先導役になるなど、この領域で存在感を強めている。

一体なぜ、同社は自動運転の分野に進出したのだろうか。アイサンテクノロジーの取締役であり、モビリティ事業本部本部長を務める佐藤直人氏に聞いた。

きっかけは2009年。さまざまな企業の言葉によって挑戦を開始

まずはアイサンテクノロジーがどんな経緯で自動運転事業を始めたのか、佐藤氏に聞いていきたい。

「きっかけとなったのは、弊社の測量技術によって2009年に開発した高精度三次元地図です。普段よく目にする地図の多くは二次元だと思いますが、三次元地図は建物などの高さも反映した立体地図。この三次元地図を世に出すと、さまざまな企業から『自動運転に活用できるのでは』とお話しいただくことが多くなったのです。そこで研究開発を開始。事業になりうると判断して、自動運転分野に進出しました」

同社の三次元地図は、どのようにして自動運転に活用されるのだろうか。まず、自動運転車には周囲の状況を把握するセンサーが多数ついている。これで周りの障害物や歩行者などを認識するのだが、センサーだけではその障害物が“何か”はわからない。たとえば目の前の棒が信号機なのか電柱なのかは判断が難しい。

「そこでセンサー情報に三次元地図を組み合わせます。すると、道路空間がどう存在し、周りにどんな建物があるのか詳細に再現できます。つまり、目の前の立体物が何なのか、車両が判断できるのです。もちろんこの地図は、自動運転におけるルート決めなどにも活用されます」

ちなみに、自動運転に使われる同社の三次元地図は「最大誤差25cm」とのこと。一般的なカーナビの誤差はおおむね10mほどあり、高精度であることがわかる。それほど誤差を小さくしなければ、自動運転に使うには危険が生じる。

このような形で自動運転事業はスタートしたのだが、注目すべきは同社が三次元地図の提供だけにとどまらず、自動運転の車両開発にまで関わっていること。この背景も教えてもらった。

「自動運転に三次元地図を活用していこうと決めたものの、肝心の自動運転車両が世の中に普及するには相当時間がかかる状況でした。自動車メーカー各社が量産体制に入るには、確かな安全性が確立され、利益が見込めるまでにならないといけませんから。それを待つのであれば、私たちがパートナー企業と提携して、車両開発にも取り組もうと考えたのです」

とはいえ1社での車両開発は難しいため、パートナーシップを組んで車両開発を行うことに。そして、その方針で動き出したとき、ポイントとなる企業との出会いがあった。同じく名古屋で自動運転ソフトウェアを開発するスタートアップ「ティアフォー」との資本業務提携だ。そのほかにもさまざまな企業と手を組み、車両開発を開始。すでに複数の自動運転車両を作り上げている。

代表的なものを挙げると、2019年にはJapanTaxiの既存タクシー車両に自動運転システムを導入。ティアフォーや損害保険ジャパン、KDDIとの共同事業だった。また、ティアフォーが開発した完全自動運転EV「Milee(マイリー)」にも携わっている。

「全国1700の自治体の中で、自動運転をやりたくない自治体はゼロ」

アイサンテクノロジーの自動運転事業はこれだけにとどまらない。実際に自動運転を使ったサービスの社会実装もサポートしている。具体的には、おもに地方自治体が自動運転サービスを導入する際の支援や計画策定、コンサルティングなどを行っているのだ。

「自動運転サービスを導入したい自治体は多数ありますが、地元の交通事業者との話し合いや適切な移動サービスの設計など、難しい作業はたくさんあります。私たちは地図の納入先として地方自治体と多くの取引があり、そのパイプを生かして社会実装のお手伝いをしています」

全国には約1700の自治体があるが、自動運転をやりたくない自治体は「おそらくゼロではないか」と佐藤氏。とはいえ、どういった形で自動運転を導入するのか、どんなロードマップで計画を立てるのか、専門知識がなければ答えを出すのは難しい。そこでアイサンテクノロジーが支援役となり、現地調査やサービスの計画、交通事業者との話し合いなどをサポートするという。

これらがアイサンテクノロジーの自動運転事業の全貌だ。まとめると「三次元地図開発」「自動運転車両開発」「自動運転サービスの導入支援」という大きな3つの柱ができている。

これほど手厚く事業を行っているからこそ、冒頭で述べたように同社は多数の実証実験に関わっている。たとえば西新宿では、過去2回にわたり無人タクシーの公道走行を実施。アイサンテクノロジーほか8社合同で行った。

交通量の多い新宿エリアでの無人走行は、もちろん難易度が高い。自動運転は、国土交通省が定める基準によりレベル1~5の5段階で表現するが、この実験では、現時点では充分難易度の高い、運転席を無人として遠隔においた「レベル2:遠隔型自動運転」にあたる性能を備えた車両を運行させたのだ。

ほかにはこんな実験もあった。2022年1月22日~25日には、丸の内仲通りアーバンテラスに設置された指定のテーブルからスターバックスコーヒー丸の内三菱ビル店に遠隔注文すると、ロボットが注文商品をテーブルに配送する実証実験も行われた(※)。
※一般社団法人 大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会が企画し、アイサンテクノロジー株式会社、三菱地所株式会社、株式会社三菱地所設計との連携で実施


このように自動運転事業を進めるアイサンテクノロジー。それを踏まえた上で最後に聞きたいのは、自動運転がいつ頃世の中に普及するのか、その目処についてだ。佐藤氏はこの疑問への回答として、経済産業省が国土交通省と連携して立ち上げたプロジェクトを引き合いに出して説明した。

プロジェクトとは「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」というもの。レベル4実現に向けたロードマップを定めており、ひとつの目標として「2025年度までにレベル4のサービスを40箇所以上に展開」としている。佐藤氏も、この目標がひとつの目安になると考えており、またアイサンテクノロジーとしても同じタイミングでの利益化を望んでいるという。

「いまはまだ投資フェーズにある自動運転事業ですが、2025年には利益化していきたいと思っています。自動運転が可能になるということは、街のデータが連携してスマートシティが実現するなど、暮らしやすさにも近づきます。だからこそ、この技術を世の中のプラットフォームとして広めていきたいですね」

測量の技術を生かして、自動運転の領域に進出したアイサンテクノロジー。これからもさまざまな企業と手を組みながら、この新しい技術が普及するための未来地図を描いていく。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2022年3月現在の情報です

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