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原油価格(インフレ)と株価~相関係数が示すインフレ対応力~

提供元:SBI証券

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(1)原油価格(インフレ)と株価

株式市場が波乱の展開になっています。TOPIX(東証株価指数)の3/11(金)終値は、前年末比で約8%の下落となっています。株式市場では、インフレ進展や金利上昇に対する不安に加え、ウクライナ情勢の混迷で、投資家のリスク許容度が低下していることが下落の要因と考えられているようです。

「ウクライナ問題」の深刻化や「インフレ高進」という難しい投資環境下で、投資家はどのように動いたらよいのでしょうか。考えられる対応方法としては、以下の3つの例が挙げられます。

(1)いつもより現金を多めに保有し、余裕をもったポジションを心がける。
(2)コモディティ関連のETF・ETN等により、インフレ高進へ対応できるポジションをある程度持っておく。
(3)株式の銘柄については、原油価格や商品価格に上昇に連動しやすい銘柄を保有し、ヘッジする。

(1)について、戦乱がどこまで拡大し、主要国等のロシアに対しての経済制裁によって、世界経済がどこまで悪化するか予想することは至難の業です。

今回のロシアによる軍事侵攻は、市場参加者の経験則の範囲外の出来事になっている可能性もあります。先行きを読めない時は無理をせず、「わからない時もある」と割り切り、市場での売買に参加しないことも重要な戦略のひとつになります。

(2)については、一見すると商品市場への投資は個人投資家にとってハードルが高い面かもしれません。しかし、最近はETF・ETN市場の充実により、インフレ時に価格連動しやすいコモディティ関連商品へのアクセスが、個人投資家にとってもかなり容易になっています。

残るは(3)ということになります。ここで、原油先物相場との相関係数が高い業種としては、下表で「相関係数」が大きい「鉱業」、「卸売」、「非鉄金属」、「石油・石炭製」、「鉄鋼」等があり、原油先物相場の上昇には強いと考えられ、これらへの投資でインフレ高進をある程度ヘッジできると考えられます。

一般的に原油価格が上昇する時は、商品先物指数も全体として上昇しやすく、インフレが進行しやすいと考えられるので、これらの業種はインフレに強いと言えそうです。

ちなみに、「相関係数」は、「-1」以上「+1」以下の値をとり、「+1」に近いほど同じ方向に動きやすく、逆に「-1」に近いほど逆の方向に動きやすいことを示します。下表では、「鉱業」がもっとも「+1」に近い業種になっています。したがって、原油先物相場が上昇する時は「鉱業」も上昇しやすく、逆に原油先物相場が下落する時は「鉱業」も下落しやすいと考えられます。

なお、ここで興味深いのは、日経平均株価やTOPIXなどの主要株価指数が、東証33業種との比較でも、上位の順位にあり、正の相関となっていることです。このことは、本質的に株式そのものがインフレに弱いとは言い切れないことを示しています。

そもそも、「インフレ」か「デフレ」であれば、多くの物の価格が下がるデフレの方が株価には逆風と考えられます。バブル崩壊後の日本株が長く低迷した大きな理由は「デフレ」の存在に求められると思います。

株式が「インフレ」でも「デフレ」でも下がるのであれば、株価が上昇する機会はないことになります。株式市場が「インフレ」のみならず、景気の減速や悪化まで予想し、スタグフレーションが織り込まれ始めたことで、株価が波乱になっているのかもしれません。

さらに相関係数で最下位の「電気・ガス業」も、ほぼゼロに近い値を取っており、原油価格上昇時に下がりやすい訳ではないことには注意が必要です。

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
※業種名は「東証33業種」。
※「相関係数」は-1以上+1以下の値を取り、数字が+1に近いほど、同じ方向に動きやすいと考えられます。「鉱業」が原油先物相場(WTI先物相場)との相関係数がもっとも+1に近く、原油先物相場の上昇時には、株価が相対的に最も上昇しやすいと考えられます。なお、相関係数の計測期間は2012/2末~2022/2末の月足データです。ただ「相関係数」はあくまでも過去のデータであり、将来その通りになるとは限りませんのでご注意ください。
※株価騰落率の計測期間について、2/10(木)を起点としているのは、2/10が短期的(直近約1ヶ月)に日経平均株価が高値を付けた日で、以降「インフレ懸念による株価下落」となったと考えたためです。

(2)主要個別業種の応用問題

上記の表では、原油価格の上昇に対して「鉱業」が、最も上昇しやすいという結果でした。この図表では、2/10~3/11の約1ヵ月のパフォーマンスも示していますが、この間、TOPIXが約8%下落したにもかかわらず、「鉱業」は19.5%も上昇しました。この間、WTI先物価格は1バレル89ドル台から、109ドル台まで上昇したことや、ロシアの輸出が多い石炭の価格上昇も追い風になりました。

原油との相関係数で第2位の「卸売」は上昇幅が小幅でした。この業種の時価総額上位には総合商社があり、基本的に原油高やインフレ進展はプラス材料とみられています。ただ、ウクライナ問題をめぐる世界各国によるロシアへの経済制裁が、総合商社のロシアビジネスに逆風になると警戒されています。

原油価格とその相関係数で「銀行」が上位というのは意外かもしれません。しかし、原油価格が上昇し、インフレ高進への懸念が強まると、金利は上昇しやすくなります。これまで量的緩和・低金利を続けてきたFRB(米連邦準備御制度理事会)は今後、量的緩和の縮小・停止や、政策金利の引き上げを進めていく見通しです。

2/8までは銀行株も上昇してきました。ただ、ロシアのウクライナ侵攻が本格化すると、安全を重視する流れから株売り・債券買いとなり、米国10年国債利回りは低下に転じました。これを受け、2/10~3/11の「銀行株」は下落に転じました。

なお、「インフレ」は企業のバランスシートを膨らませるという側面があり、「デフレ」は逆にバランスシートを縮小させる効果があります。長期化する「資産デフレ」が企業の債務返済能力を減少させたのが「平成バブル」の崩壊であり、企業や株式市場にとっては「デフレ」のマイナス面の方が多いと見られます。

ただ、インフレ進行と景気鈍化・減速が重なるスタグフレーションになると、株価にも逆風が強まりやすいと考えられます。今後は、そうしたスタグフレーションの懸念が強まるか否か、注意が必要です。

(提供元:SBI証券)

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