4月1日以降は高校生でも住宅ローンが組めるらしい!?

「成年年齢」「育休」「年金」2022年4月1日の法改正をチェック!

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新生活が始まる4月1日。人々の生活が変わるだけでなく、その生活の基盤となる法律が改正されるタイミングでもある。

そこで、2022年4月1日に改正される法律の内容を、ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子さんと一緒に見ていこう。日々の生活に関係するものもあるはずだ。

成年年齢が20歳から「18歳」に引き下げ

●民法
民法改正によって、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられる。民法で定められている成年年齢は、「一人で契約をすることができる年齢」「父母の親権に服さなくなる年齢」という意味。

「4月1日以降は、高校生であっても18歳を過ぎていれば、携帯電話やクレジットカードの契約、賃貸契約などが親の同意なしでもできるようになります。株式の売買や住宅ローンの契約もできるようになりますが、カードローンに関しては、若者が借金しすぎる事態を懸念し、三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行が対象を20歳以上に据え置く方針を発表しています。ほかの銀行も同様の方針を立てることでしょう」(川部さん・以下同)

10年有効のパスポートの取得、公認会計士や医師免許などの国家資格の取得も、18歳からできるようになる。一方、飲酒や喫煙、競馬などの公営ギャンブルに関する年齢制限は、4月以降も20歳以上のままだ。

「国民年金保険料の支払いも、これまで通り20歳以上60歳未満が対象です。『18歳から自分の意思で契約ができるようになる』という変化と捉えましょう」

契約社員が「育児・介護休業」を取得しやすくなる

●育児・介護休業法
4月1日以降は、次の2つの改正点が企業で実施されることになる。

(1)育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
(2)有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

「1つ目は、妊娠した女性だけでなく、妻が妊娠した男性に対しても会社側がきちんと育児休業の制度があることを伝え、取得する意思があるか確認することを義務付けるものです。育休取得を促進するための改正だと考えられます。2つ目は有期雇用労働者、つまり契約社員が育休や介護休業を取りやすくする改正です」

これまで有期雇用労働者は、育児・介護休業を取得する際に「引き続き雇用された期間が1年以上」「1歳6カ月までの間に契約が満了することが明らかでない」という2つの要件があった。しかし、4月以降は「引き続き雇用された期間が1年以上」の要件が除外される。

「この先1年6カ月以上その会社で働く予定があれば、それまでの雇用期間に関係なく育児・介護休業が取得できるようになるのです」

●個人情報保護法
3年ごとの個人情報保護法の見直しに基づく改正で、「個人の権利利益の保護と活用の強化」「越境データの流通増大に伴う新たなリスクへの対応」「AI・ビッグデータ時代への対応」といった視点が反映され、次のような改正が行われる。

◆改正個人情報保護法の一部(出典:個人情報保護委員会『「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」の概要等について』)
・利用停止、消去等の個人の請求権について、不正取得等の一部の法違反の場合に加えて、個人の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合にも要件を緩和する。
・個人データの授受に関する第三者提供記録について、本人が開示請求できるようにする。
・漏えい等が発生し、個人の権利利益を害するおそれがある場合(一定数以上の個人データの漏えい、一定の類型に該当する場合に限定)に、委員会への報告及び本人への通知を義務化する。
・委員会による命令違反・委員会に対する虚偽報告等の法定刑を引き上げる。命令違反:6月以下の懲役又は30万円以下の罰金→1年以下の懲役又は100万円以下の罰金/虚偽報告等:30万円以下の罰金→50万円以下の罰金
・日本国内にある者に係る個人情報等を取り扱う外国事業者を、罰則によって担保された報告徴収・命令の対象とする。

「簡単に説明すると、個人が法人に対して個人情報の消去などを請求しやすくなる一方で、法人が個人情報保護法を守らなかった際の罰則は引き上げられます。また、海外の通販サイトを利用した際に入力した個人情報も、海外の企業は国内企業と同様に扱うべきだと明示されました。法人側はペナルティが増すだけではなく、データ活用しやすくなるという利点もあるようです」

個人情報保護委員会の発表によると、次のような改正もある。

・イノベーションを促進する観点から、氏名等を削除した「仮名加工情報」を創設し、内部分析に限定する等を条件に、開示・利用停止請求への対応等の義務を緩和する。

「つまり、氏名などを削除して個人が特定されないように加工したデータであれば、厳しい規制の対象にはならないということです。この改正によって、ビッグデータの活用などがさらに進んでいくでしょう」

●女性活躍推進法
自社の女性の活躍に関する状況把握と課題分析を行い、その課題の解決に向けた行動計画の策定・届出・周知・公表をすること、また自社の女性の活躍に関する情報を公表することを企業に義務付ける法律。その対象が常時雇用労働者301人以上の企業から、101人以上の企業へと拡大される。

「労働者の女性比率、勤続年数の男女比、月別残業時間、管理職の女性比率などを明示した資料の公表が義務付けられます。その資料は、就職や転職を考えている人、特に女性にとって企業を知る材料になるでしょう。労働者101人以上の中小企業も対象になるので、より情報が増えるといえます」

●労働施策総合推進法
「パワハラ防止法」とも呼ばれる法律で、企業に対して次のような措置が義務付けられる。

◆職場におけるパワーハラスメントを防止するために講ずべき措置
(1)事業主の方針等の明確化および周知・啓発
(2)相談に応じ、適切に対応するための必要な体制の整備
(3)職場におけるパワハラに関する事後の迅速かつ適切な対応
(4)併せて講ずべき措置(相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること/相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること)

「パワハラが起きない環境、パワハラが起きた場合に対応できる環境の整備を、企業に求める法律です。既に大企業では義務化されていますが、4月以降は中小企業も義務化の対象になるため、すべての企業で措置が講じられるということです」

75歳まで年金受給繰下げで「84%」増額

年金制度の改正によって、年金の受け取り方や制度の一部も4月1日から変化するようだ。

●繰下げ受給の上限年齢の引き上げ
繰下げ受給とは、老齢年金を65歳で受け取らずに66歳以降に繰り下げて受給し始めることで、年金額がひと月あたり0.7%ずつ増額していく制度。その上限年齢が、70歳から75歳に引き上げられる。対象は、2022年3月31日時点で70歳に達していない人。

「0.7%ずつ増額することに変わりはないため、75歳まで繰り下げると年金受給額が84%増額することになります。繰下げ受給を選んだからといって、必ず75歳まで待たなければいけないわけではありません。66歳を超えた後はいつでも受給に切り替えられるので、65歳以降も収入がある人や十分な貯金がある人は、繰下げ受給を選択してもいいかもしれません」

●繰上げ受給の減額率の見直し
繰下げ受給とは逆に、60歳から65歳の間に受給を開始する制度が繰上げ受給。繰り上げると、ひと月あたり0.5%ずつ減額していたが、4月以降は減額率が0.4%に変更される。対象は、2022年3月31日時点で60歳に達していない人。

●在職老齢年金制度の見直し
60歳から65歳の間に年金受給開始年齢を迎える人が、60歳から65歳の間に会社員として働いている(厚生年金の被保険者となっている)場合、一定金額を超えた年金額が支給停止となる制度。これまでは基本月額(加給年金額を除いた特別支給の老齢厚生年金の月額)によって支給停止の基準が変わったが、4月以降はその基準が改正される。

「4月以降は基本月額に関係なく、基本月額と月々の給料(正確には総報酬月額相当額)の合計が47万円を超えた人が制度の対象になり、47万円を超えた部分の年金の全部または一部が支給停止になります。この基準は、65歳以上の基準と同じです。65歳未満は基準が緩和されるうえに一本化され、わかりやすくなるといえます」

さまざまな法改正があるが、年代や性別、働き方などによって影響のある改正内容は異なるだろう。当てはまるものに関してはしっかり把握しておいた方が、自分のためになりそうだ。
(有竹亮介/verb)

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