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排出権市場が機能マヒ、今後の展開は? ~ESGニュース 気になるトピック(4月)~

提供元:三井住友トラスト・アセットマネジメント

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ウクライナ侵攻によりカーボンクレジット価格が下落

EU-ETS(欧州連合域内排出量取引制度)では、規制対象企業や施設等にCO2排出枠の上限(キャップ)が設定され、排出枠上限を超過した企業は上限以下に抑えた企業から超過分の排出枠を購入できる仕組みとなっています(キャップ&トレード)。規制対象企業等は自らCO2排出量削減の取り組みを進める一方で、削減不足分があれば排出枠を市場から調達する必要があります。

EUA(EU排出枠、カーボンクレジット)は先物市場で取引されており、排出枠が不足する企業の需要増加を背景にEUA価格は上昇が続き、2月8日には96.93ユーロ/トンと過去最高値を付けていました。しかし、ロシアのウクライナ侵攻を受けてEUA価格は下落し、3月7日に58.3ユーロ/トンと最高値から6割水準となりました。3月中旬に78ユーロ/トンまで回復した後は、横ばい推移が続いています。

これまでEUA価格は、CO2排出量の多い石炭火力発電と、排出量の少ないガス火力発電の電力価格差の影響を受けていました。脱炭素を主導する欧州では、太陽光・洋上風力など再生可能エネルギー由来の電力利用が高まる中、安定供給の追随性や環境負荷軽減の利点から、ガス火力発電の利用が進んできました。

しかし、ロシアに対する各国の経済制裁発動から石炭・ガスともに今後の化石燃料利用について見通しが立てにくい状況です。また天然ガスの輸入停止やロシアからの輸出途絶リスクなど、天然ガス利用には今後制約が生じる可能性があります。

今後、EUA価格が一時的に停滞しても、天然ガスの調達面の問題がクリアできれば、価格は再び緩やかな回復基調を取り戻すと考えられます。一方で紛争長期化や経済制裁強化となれば、エネルギーの安定確保を理由に脱炭素・カーボンニュートラル(CO2実質ゼロ)の達成時期は先送り・不透明となり、EUA価格は下落する可能性もあります。

今回、一時的に石炭など他の化石燃料利用に戻る動きも見られますが、化石燃料依存からの脱却を進める必要性を改めて認識することとなりました。EUA価格は企業がCO2削減に支払うコストを表しており、価格上昇にともなって、化石燃料利用時の環境負荷軽減技術やエネルギー転換(再生エネルギー由来水素)などの研究開発にも資金が向けられることになると言えそうです。将来の脱炭素へ向けての方向性を見ていく上でも、今後のEUA価格動向が注目されます。

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(提供元:三井住友トラスト・アセットマネジメント)

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