Web3.0の世界について説明できますか?
提供元:JTG証券
Web3.0の世界について説明できますか?
2022年4月、平井・前デジタル大臣ら自民党のデジタル社会推進本部のメンバーが岸田総理と面会し、「Web3.0」と呼ばれる次世代のインターネットを岸田内閣の「成長戦略の中心に位置づけるべき」などとする申し入れを行いました。Web3.0担当大臣を設けるべきだという声もあがっているとのことです。
しかしこのWeb3.0という言葉自体はどれほど認知されているのでしょうか?Web3.0は、最近話題となっているメタバースを発展させるにために必要不可欠な要素ですが、どういうものか説明できない方も多いのではないでしょうか。
Web3.0という言葉からも想像できる通りWeb1.0、2.0を経て現在に至りました。まずはこのWeb1.0、2.0とは何なのか、順を追って解説したいと思います。
Web1.0
Webとは「世界中どこにいても、コンピュータなどによって情報を得られるシステム」のことを意味します。
Web1.0はWebという言葉通りの概念です。1990年代前半から2000年代前半までのWebの概念だと言われています。インターネットユーザーが作成したウェブページにアクセスし情報を取集、閲覧するということが主な機能です。YahooやGoogleが登場し始めた時期でもあります。あとは個人のホームページなどがこの段階に該当します。
いわば一方通行のインターネットで、この頃はWeb1.0という言葉は存在せず、Web2.0という言葉が誕生してからつくられた概念だと言えます。
Web2.0
Web2.0は、2000年代半ばから現在までのインターネットの長所が最大限に活用されたWebの概念と言われています。インターネットユーザーが作成したコンテンツをSNS、ブログ、YouTubeなどにアップロードし、ほかのネットユーザーがアクセスしリアクションする。動的で双方向のインターネットと言えます。
そのコミュニケーションの場を提供するのが、フェイスブックやGoogleなどのプラットフォーマーです。これらのプラットフォーマーは魅力的なコミュニケーションの場を提供し集客、広告料収入を稼ぎ出すビジネスモデルの構築に成功しました。
インターネットユーザーが作成したコンテンツに対しても広告が付与され、その収入をプラットフォーマーとユーザーが折半するケースも多く、なりたい職業ランキング上位にユーチューバーがランクインするなど、職業のひとつとして確立する状況にまで至りました。
プラットフォーマーのリスク
Web2.0を活用しているユーザーは自身が世界に発信したり、または自身がリアクションしているので、直接的に双方向のコミュニケーションをしているように感じられるわけですが、そこには巨大なプラットフォーマーがしっかりと存在しユーザー同士を仲介しています。
例えばSNSなどで送信したメッセージは、直接相手に届くわけではなく、一度プラットフォーマーに届き、そのプラットフォーマーが送信先に届けるといったイメージになります。実はプラットフォーマーがなければ成り立たない中央集権型のモデルなのです。
巨大なプラットフォーマーが間に存在するということは、質の高いサービスを手軽に享受できる反面、実は大きなリスクもあります。
例えばネット上で電子書籍などを購入してパソコン内に保存していたり、お気に入りのレシピやレストランを登録していたり、インターネットゲームでたくさんのお金を費やしてキャラクターをパワーアップさせたりしているケースがあると思います。
突然そのサービスを提供しているプラットフォーマーが、何らかの理由でサービスを止めたり、サービス内容を改悪した場合、いままで育ててきたゲームのキャラクターや保存している電子書籍やお気に入りの情報は消失してしまうといったリスクが存在するのです。
SNSにおいても同様です。過去のコミュニケーションや保存した写真なども、もしかしたら突如消え去るというリスクがあります。自分の財産や自分でしか知りえない情報、そして趣味や嗜好、作品や思い出さえもプラットフォーマーを信用し委ねてしまっているのです。私たちは主体的にWebを活用しているようで、実は大きなリスクを抱えているのです。
Web3.0の世界
このようなWeb2.0のリスクに対する不信感からWeb3.0は生じたと言っても良いでしょう。トラストレス、つまり依存しないということですが、特定のプラットフォーマーに依存する必要のない世界を実現させることを可能にさせたのが、このWeb3.0の世界だと言われています。
この世界は中央集権的なモデルから非中央集権的なモデルへの大転換を巻き起こそうとしています。かつて民主主義の国々が台頭した時のような、デジタルの民主化が今まさに実現しようとしているのです。プラットフォーマーのような巨大な存在がいなくなり、ブロックチェーンという技術を使用することで、各ユーザー自身が保有するデータを管理するというシステムに変化します。Web3.0を理解するにはこのブロックチェーンを知る必要があります。
ブロックチェーンとは
前述の通り、Web2.0の世界ではプラットフォーマーが管理するサーバーに、ユーザーがアクセスすることによって、ユーザー同士が繋がってコミュニケーションを図ったり、情報やお金などもやり取りしていました。友人にSNSで動画を送信するにしても、直接やりとりしているように感じますが、いったんプラットフォーマーが管理するサーバーを介しているという仕組みです。
一方、ブロックチェーンは中央で管理するサーバーに繋がるわけではなく、ユーザーどうしが繋がっていて、すべてのユーザーが正しい取引データを記録した全く同じ台帳を持っています。その台帳をみんなでチェックしていく仕組みなのです。
その取引が記載された台帳が一定量蓄積されたら、一つのブロックを作り過去からの情報を並列につなげていく、そのブロックをユーザー全てが把握している状態をいいます。
ブロックチェーンイメージ図
先ほど述べた通り従来のWEB2.0のモデルはプラットフォーマーに依存していて、そこにリスクがありユーザーはそのリスクを防ぐ術はありません。
中央集権型の場合、プラットフォーマーのサーバーが消失してしまえば、各ユーザーはアクセス不能となり、このプラットフォームは機能しなくなります。しかしブロックチェーンはひとつのサーバーに依存することなくデータを管理していますので、プラットフォーマーに対するリスクはなくなります。
ブロックチェーンのメリット
このプラットフォーマーがなくなるということはユーザーに様々なメリットをもたらします。
1.サーバーにアクセスが集中してダウンしたり、なんらかの攻撃がされてアクセス不能に陥ったり、情報流出などのトラブルがなくなります。
2.サーバーを管理するプラットフォーマーへのマージンが不要になります
3.アカウントの一方的な停止などの、特定の企業が言論統制を行うような危険性がなくなります。
4.特定の企業に個人情報が集中することがなくなります
5.データ改ざんが事実上不可能になります
1に通じるところではありますが従来のデータ管理システムでは中央のサーバーに全てのデータを記録して管理している状態ですので、そのサーバーが攻撃や改ざんをされてしまうと全体のシステムに支障がでてしまいます。
一方、ブロックチェーン(分散型台帳)はデータを改ざんしようとすると以降のブロック全てにマイニングと呼ばれる修正をする必要が生じます。
マイニングは非常に高性能のコンピュータが時間をかけて行う処理です。新たなブロックは絶えず生成されつづけるので、修正が追い付かないという状態になります。さらにみんなが同様の台帳をもっているので、どこかのブロックでデータの改ざんが発生した場合、複数のユーザーで共有されている取引情報との差異が生じます、従って改ざんを行っていることがすぐに発見されてしまう仕組みなのです。
NFT(Non-Fungible Token)
デジタルデータは際限なくコピーすることが可能なので、データ上のグッズやアイテムに希少価値が発生することはありません。そのため、Web2.0の世界では、あるデータが唯一無二のものである証明をすることや所有権を主張することは非常に困難でした。デジタルデータに電子透かしを入れるなどの方法はありましたが、コピーや改ざんを直接防ぐ技術はありませんでした。
しかし、Web3.0の世界では、ブロックチェーン技術はデータの改ざんが事実上不可能であるという特性を生かし、デジタルデータに対して唯一無二であるという証明を与え、所有権や希少性などを再現することが可能となりました。その技術がNFT(非代替性トークン)と言われるものです。
NFTの出現は、2017年にイーサリアムという暗号資産のブロックチェーン上で誕生した「CryptoKitties」というゲームがきっかけです。
さらに、2021年にTwitter創業者のジャック・ドーシー氏の出品した初ツイートが約3億円で落札され、テスラのイーロン・マスク氏が出品した音楽作品にも約1億円の値が付きました。さらに、日本人VRアーティストのせきぐちあいみ氏が出品した作品が約1,300万円で落札されたこともあり、NFTという概念が急速に認知されつつあります。
NFTイメージ図
このNFTが普及することで、著作物やゲーム内のアイテムやオンライン上の通貨などといったデジタル資産をNFTに紐づけ、その所有権を証明することが可能となりました。NFTに紐づけられたデジタル資産は、世界に1つだけのものなのです。
NFT化が進んでいるコンテンツとしては、先ほど述べたアートや音楽、アイテムのほか、デジタル上の自分(アバター)が身に着ける洋服や靴、デジタル上の土地など多岐にわたります。
このNFTの世界に様々な企業が参入しています。たとえばアディダスが2021年12月、NFTコレクション『Into The Metaverse(イントゥ・ザ・メタバース)』を発表し、一夜にして2300万ドル(約26億円)を売り上げました。ナイキも昨年12月、NFTを作成するスタートアップ企業を買収、デジタル上でのスニーカーを公開しています。ルイヴィトンやバンダイナムコ、スクエアエニックスなども相次いでNFTに参入しています。新しい調査では、現在の30億ドルの市場規模が2027年末までに136億ドルに達すると予測しています。
NFTの世界には、大手企業だけでなく個人も参入できます。最近では8歳の日本人の男の子が夏休みの自由研究で始めたiPadの無料アプリで書いたドット絵を販売、NFTで偽造ができないようにされ、140万円で売れたことが話題になりました。
メタバース(仮想空間)
Web3.0の世界で、現在様々な企業がチャレンジしているのがメタバースです。メタバースとは超を意味する「メタ」と宇宙を意味する「ユニバース」を組み合わせた造語で、インターネット上に作られた三次元の仮想空間です。
2007年頃からブームになったメタバースがセカンドライフです。これは、PC専用のメタバースアプリケーションで、決まったストーリーや目的があるわけではなく、そこにある町や家、車、アイテムなど、その世界にある全てのものが、ユーザーの手によって作成され、その空間内で会話したり、ライブをしたり、洋服を売ったりすることができました。
その空間内の通貨は米ドルと互換性があり、空間内での商売で実際に富を蓄積することもできたのです。ユーザー数はおよそ100万人まで増えましたが、スマホも普及していないこの時代、携帯はガラケーで電波も3G、グラフィックの不具合や接続速度の低下などの弊害もあり、いまでもセカンドライフにはユーザーは残っていますが、スマホの普及とともに衰退していきました。
フェイスブック29億人、ツイッター3億人など巨大なプラットフォーマーに駆逐されたのが1世代、いや2世代前のメタバースでした。Web3.0が普及しつつある現在の有名なメタバースのフォートナイトは、ユーザー数が3億5000万人を超えています。
Web3.0と投資の可能性
5G通信も始まり、VRデバイスも普及しやすい価格となりました。メタバースを受けいれやすい環境が整ったといえます。そして何よりも先ほど説明した、ブロックチェーンや暗号資産、NFTがメタバースと現実の世界を今まで以上にリンクさせることが可能となり、メタバースに奥行きを与えることが期待されています。
さらにメタバースは医療など様々な分野に活用されつつあり、今後の展開が期待されています。
先ほどの8歳の少年のように自分自身の技術をNFTとして売り込みお金を増やすこともできます。もしくはこのような世界に参入する企業を発掘し株式を買うのか、NFTそのものを買い付けるのか、投資のヒントがWeb3.0の世界には数多く存在しているのではないでしょうか。
(提供元:JTG証券)
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