東証市場再編

市場関係者メッセージ

グロース市場を、次世代に向けた「市場のカタチ」のテストケースに

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2021年12月14日に掲載した記事の再掲載です。

市川祐子
マーケットリバー株式会社代表取締役

今般の東証市場区分変更では、各市場のコンセプトを明確にしたことに意義を感じます。プライム市場は、グローバル投資家に対峙する覚悟を持つ企業、スタンダード市場は、国内投資家と安定した関係を持ちたい企業、そしてグロース市場は高い成長を志向し、成長のために資本市場を活用する企業に向けたものと解釈しています。
私は企業側で長年投資家との対話に従事していましたが、それぞれの市場で「どんな投資家と」「どのように」対話してほしいのか、東証の意図が見えたように思います。それを踏まえ、グロース企業の立場から、さらなる改革への期待と提案を述べさせていただきます。

まずひとつめ。グロース市場において、とにかく成長を促進させるよう制度を整えることを提案します。日本取引所グループが目指す『次世代に向けた「市場のカタチ」』のテストケースとしてみてはいかがでしょう。
たとえば上場審査における予実管理。計画どおりに実績を出す能力は、製造業はともかく、IT企業やバイオベンチャーに必須でしょうか?審査に通るために、多くの企業が上場直前の1年ほど新しい取組みを手控えているのが現実です。刻一刻と変化する事業環境下では、機会を逸せず機敏に経営することが、計画を守ることより価値創造に資すると考えます。少なくとも業績の上振れは許容すべきですし、上場後も一定期間、業績予想修正のトリガーを緩和することも一案です。
さらに、(東証の規制ではありませんが)上場時の資金使途を翌2事業年度の計画内と限るのではなく、より長期の使途を許容することもリスクマネー供給の仕組みとして検討すべきと思います。
これらはあくまで一例です。中長期の株主価値向上に向け、チャレンジする企業の背中を押す環境を今後のグロース市場に期待しています。

ふたつめ、流動性について。ファンド規模によりますが、グローバル投資家からは一日あたりの売買代金で5~10億円程度を求められているのが私の感覚です。(プライム市場の基準の0.2億円はそれに比べると随分小さいと思います。)
典型的なグロース企業は、グローバル投資家の流動性基準を満たせません。そこでIPO後はまず個人投資家の売買を積み上げ、徐々に機関投資家の投資対象となることを目指します。株主価値が上がったところで資本市場を活用し成長のための一手を打ち、一層の価値向上を果たすのが理想です。
しかし、IPOから1年も経つと市場の注目が薄れ、売買高が低迷し、最初のステージでつまずいている企業のなんと多いことか。志ある企業がせっかく上場したのに、次の一手が打てていないのです。もちろん、これには企業努力として、業績向上と積極的な広報・IR活動が大前提です。その努力ができない企業は市場から退場させるべきです。

難題と承知で問いかけます。東証は、流動性の問題に対し何かできることはないでしょうか。上場社数を増やすのではなく、日本株の売買高を増やす施策です。たとえば個人投資家にもっと日本株を売買してもらうきっかけを提供できないでしょうか。次から次へとIPO株に飛びつかせるのでもなく、配当利回りで超長期保有させるのでもありません。企業のファンダメンタルズとパーパスをよく見て活発に投資する投資家が増えてほしいのです。
取引所だけで限界はあるでしょうから、証券会社や機関投資家、あるいはアセットオーナーとタッグを組み、インベストメントチェーンを太く多様化することを考えるべきかもしれません。それが世界の投資家を呼び込み、東証がアジアでトップの取引所であり続けることにつながると私は思います。

東証の創設に関わった渋沢栄一は、資金を水の流れにたとえ、一滴一滴の水はそれ自体では何も成し得ないが、それらが集まり、大河となることで社会に大きな変化をもたらすことができると言いました。東証が、水の流れである株式の流動性を、今よりもっと大きなうねりとし、持続可能で豊かな社会の実現を可能にすると期待しています。

 

市川祐子 マーケットリバー株式会社代表取締役
『楽天IR戦記 「株を買ってもらえる会社」のつくり方』著者(元楽天IR部長)、一橋大財務リーダーシップ・プログラム(HFLP)非常勤講師、旭ダイヤモンド工業株式会社 社外取締役。

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