東証市場再編

市場関係者メッセージ

価値創造の実現に向けた変化を期待

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年1月5日に掲載した記事の再掲載です。

菊池勝也
東京海上アセットマネジメント株式会社 理事 責任投資部長 兼 オルタナティブ責任投資部

東京証券取引所の市場区分見直しにあたり、期待することを申し上げたいと思います。ポイントとなる論点は、①価値創造の場であること、②情報開示を充実すること、③変化を続けることの3点であると考えています。

①価値創造の場であること
株式市場は流動性を提供する場です。しかし、そこに上場している企業が価値創造を実現してこそ、資金の流入が起こるのではないでしょうか。コーポレートガバナンス・コードが見直されたことを受け、コーポレートガバナンスの改善やサステナビリティへの取り組み強化などが見込まれます。しかし、このような絶好の機会を外形的な変化に限定してしまっては、市場区分見直しの意義が薄れます。事業ポートフォリオや資本構成といった企業経営の根幹となる部分を含めた進化を期待しています。

②情報開示を充実すること
プライム市場は、「グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場」と定義されています。建設的な対話を実現するためには、起点となる情報開示の重要性が増すことが明らかです。上場企業に求められる開示の対象は急速に広がっていますが、グローバルで議論が進むサステナビリティ情報の開示でも存在感を示してほしいと思います。もちろん、充実した情報開示の前提として、徹底した透明性の確保が望まれることはいうまでもありません。

③変化を続けること
グローバル経済は予測不可能ともいえる状況になっており、硬直的な制度設計では対応できないリスクがあると思います。また、上場企業だけでなく株式市場そのものもグローバル競争に打ち勝つ魅力が求められます。このような状況を勘案すると、今回の市場区分の見直しで立ち止まるべきではないと考えています。あるべき市場の姿について議論を続け、世界から資金を呼びこむためにも戦略的に変化を続けることが必要ではないでしょうか。
株式市場の魅力は、一義的には上場している企業の価値創造力にかかっていると思います。もっとも、価値創造を促す市場のあり方も重要であると考えます。外形的な要素は整備されてきました。今回の市場区分の見直しをきっかけに、変化を続ける市場への変貌を期待します。

 

菊池勝也 東京海上アセットマネジメント株式会社 理事 責任投資部長 兼 オルタナティブ責任投資部長
早稲田大学政治経済学部卒。1989年証券系資産運用会社に入社。約20年株式運用部門に所属しファンドマネージャーを務める。調査部長を経てスチュワードシップ活動を担当。2019年に東京海上アセットマネジメントへ入社。ESGリサーチ、議決権行使、企業との対話などを担当し現在に至る。

委員等
経済産業省「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~(伊藤レポート)」メンバー
経済産業省「サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会(SX研究会)」メンバー
東京証券取引所「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」メンバー

著書
「環境と金融・投資の潮流(環境経営イノベーション)」(共著:中央経済社)
「「対話」による価値創造 ESG・統合報告・資本コストをめぐる企業と投資家の協創」(編著:日本経済新聞出版)

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