東証市場再編

市場関係者メッセージ

底上げから始まる日本市場の未来(市場区分見直しに期待すること)

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2021年12月7日に掲載した記事の再掲載です。

日髙真一郎
三菱UFJ国際投信株式会社 株式運用部国内株式グループ スモールチーム チーフファンドマネジャー

流動性向上につながる「共感」を

東証2部やJASDAQ、マザーズとの位置づけやコンセプトがあいまいだった複数の小型株市場が整理され、上場基準も含め分かりやすくなりました。

マザーズ市場はベンチャー企業にとっては上場しやすい市場ではありました。開設から20年以上の間、多くの成長企業を輩出する役割を果たしてきた一方、大企業を凌駕するまで成長した企業はなかなか生まれなかったとの印象もあります。また、いわゆる「上場ゴール」と例えられる企業も多数存在していることも事実で、投資資金が特定の企業に限られ、市場全体まで視野が広がらない現実も感じています。

新市場区分では流動性がより重要視されています。流動性向上のための第一歩は企業の成長がよりよい生活や社会につながり、それを個人投資家、機関投資家に関わらず投資家が共感できることから始まると思います。そのためには企業はどの市場に区分されたとしても情報を発信し続けることが重要です。

プライム市場だけではなくスタンダード、グロース市場からの底上げが日本株式市場全体の活性化につながると考えます。特にグロース市場においては新しい技術や独自のビジネスモデルを展開する企業が多数存在する新市場というイメージが定着するよう期待しています。

実は大きな変化を期待している「スタンダード市場」

事前のマスコミ報道等でスタンダード市場はプライム市場に行けなかった企業の市場という悪いイメージがついてしまったようです。ただ、新市場移行後は最も大きな変化が期待できる市場と感じています。プライム市場への再チャレンジというモチベーションだけにとどまりません。

スタンダード市場には旧JASDAQ上場企業がある程度移行することが予想されますが、この企業群はこれまでコーポレートガバナンスコードの基本原則のみが適用されてきました。それがスタンダード市場では全原則の適用が求められることになるからです。

かつて東証にコーポレートガバナンスコードの考え方が導入されたことを契機に上場企業全体のROEがその後改善した経緯があります。ガバナンス改善による企業価値向上が期待されるスタンダード市場ではこの時と同様の効果、また変化率の大きい小型株ではそれ以上の改善効果を実は期待しています。

各企業の新市場区分に対する準備は奇しくも新型コロナウイルス感染下で進められました。感染の収束とともに、ここまでお話ししてきたような小型株の底上げから始まる日本市場の明るい未来を期待しています。

 

日髙真一郎 三菱UFJ国際投信株式会社 株式運用部国内株式グループ スモールチーム チーフファンドマネジャー
新日本証券(現 みずほ証券)にてアナリスト等を経て2005年よりUFJパートナーズ投信(現 当社)ファンドマネジャー。
証券会社アナリスト時代から長年にわたり小型株セクターに携わり、現在はファンドマネージャーとして企業との対話を重ね、小型株ファンドの運用を行う。
九州大学理学部卒。経済産業省「バイオベンチャーと投資家の対話促進研究会」委員。

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