東証市場再編

市場関係者メッセージ

新市場区分が地方のファイナンス環境に及ぼす影響

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2021年12月10日に掲載した記事の再掲載です。

林龍平
株式会社ドーガン・ベータ 代表取締役パートナー

今回の市場区分変更について、2018年の「市場構造の在り方等に関する懇談会」から興味深く拝見させていただいておりました。地方のスタートアップから上場企業までのご支援をさせていただいている弊社グループとしては、特に地方のファイナンス環境に及ぼす影響についてのコメントをさせていただきたく存じます。

結論から申し上げると、上場企業・スタートアップそれぞれに2つの副次効果を期待しています。

ひとつは、プライム市場という定量的なハードルが設けられることによって、地方の上場企業の視座が上がっていくという部分です。

資本市場においても地方企業というハンディキャップが多少なりともあるようにつねづね感じているのですが、より狭き門であるプライム市場に上場することで、国内外の投資家からの注目度が一層高まり、地方のハンディを克服する足がかりになるのではないかと感じています。またこれに挑戦することによって、地方企業のコーポレートガバナンスや株主を意識した経営へのシフトに拍車がかかるものと期待しています。

ふたつめは、上場を目指すスタートアップへの影響です。

グロース市場において時価総額40億円という撤退基準が示されるため、おそらく上場時にもそれを意識した審査が行われるものと推察されますが、こちらも前述の「定量的な目標ができた」という論法ではスタートアップにとってポジティブなものになると考えています。地方のスタートアップに創業から短期間で上場を果たす事例というのはまだまだ少ないのですが、これを契機にそういった企業が増えることも期待しています。

また、40億円のハードルを超えるということだけでなく、上場後も市場に評価され続けるようなエクイティストーリーをどう描くか、という観点がより重要になり、我々ベンチャーキャピタルにもその役割が課されるものと考えています。

2021年の新規上場件数の見込みも、市場全体で123件、うちマザーズ93件と昨年までと比べ大きく件数が増加しており、区分変更後もより多くの新規上場を受け入れるというJPXさんからのシグナルのようにも受け止められ、非常に頼もしく感じています。

最後になりますが、これをきっかけによりグローバルな基準に準じた健全な市場に成長していくことを期待しています。もちろん、弊社としてはその市場に相応しい企業を地方からより多く輩出すべく、努力を怠らぬ所存です。

林龍平 株式会社ドーガン・ベータ 代表取締役パートナー
福岡県出身・九州大学法学部卒。1999年住友銀行、2001年シティバンク、エヌ・エイを経て、株式会社ドーガンに2005年より参画。主にベンチャー支援業務に取り組む。4本総額50億円のベンチャーファンド立ち上げを行い、これまでに約35件の投資を行ったほか、2012年には起業家支援のためのシリコンバレー型コワーキングスペース「OnRAMP」を福岡市に開設し、地元起業家のコミュニティ形成支援を行っている。また、2014年には福岡市がカルチュア・コンビニエンス・クラブと共同で中央区天神に開設した「スタートアップカフェ」の設立プロジェクトにも参画。2017年株式会社ドーガン・ベータ設立。一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会 理事・地方創生部会長。

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