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【埼玉県】長瀞ラインくだりにSL乗車、蜂蜜酒からラグビー観戦まで 埼玉5市3町の魅力を結ぶ鉄道会社

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年2月16日に掲載した記事の再掲載です。

秩父鉄道株式会社
代表取締役社長 大谷隆男

長瀞ラインくだりにSL乗車、
蜂蜜酒からラグビー観戦まで
埼玉5市3町の魅力を結ぶ鉄道会社
―埼玉県― 秩父鉄道株式会社

秩父や長瀞と聞いて目に浮かぶのは、美しい山や川、四季折々の草花でしょうか。そこへ私たちを運んでくれるのは、120年以上もの歴史を誇る秩父鉄道です。そのほかにも、2022年秋に開業予定の巨大なアウトレットモールやラグビー観戦など、沿線にはたくさんの魅力が詰まっています。そんな沿線の楽しみ方から、路線延伸にまつわる歴史、地域振興にかける思いなどを代表取締役社長の大谷隆男さんにお聞きします。

秩父鉄道に乗って、どこへいこう?

――観光目的で秩父鉄道を利用する人は多いですよね。沿線の観光についてその魅力を教えてもらえますか。

大谷社長 秩父鉄道は、東は羽生駅から西は三峰口駅まで37駅、埼玉県北部を東西に横断する総延長71.7キロの鉄道ですから、たくさんの魅力がありますが、一番の魅力は自然の豊かさですね。沿線には森林地帯も多く季節ごとに異なる発見があるはずです。春は梅から桜までの期間、紅葉が美しい秋ももちろん華やかです。何度訪れても、四季折々の草花を鑑賞するのは楽しいものですよね。

――自然鑑賞のほか、まだ広く知られていない沿線の魅力は何かありますか。

大谷社長 個人的な嗜好もありますが、秩父地域では近年、お酒に注目が集まっているんです。日本酒だけでなくワインの酒蔵もありますし、地ビールの醸造所も人気です。たくさんの種類のお酒が沿線一帯で楽しめるのは大きな魅力ですよね。珍しいところでは、数年前にロシア出身の女性が蜂蜜酒を商品化されていて、今、人気を集めているんです。美味しいお酒がたくさんつくられるのも、水の豊かな沿線の特徴を効果的に活かした結果なんです。秩父市内ではこうした美味しいお酒が飲める多様なお店の開設がたくさん予定されています。秩父エリアには「ちちぶ乾杯共和国」という別名もあるんですよ。

――観光目線で見れば、秩父鉄道の沿線にはまだまだ見どころがありますか?
たとえば熊谷市ではラグビーが盛り上がっているようですね。

大谷社長 そうなんです。熊谷は2019年のラグビーワールドカップでも試合が開催され、地域をあげてラグビーを盛り上げてきました。2021年からはラグビーチーム「埼玉パナソニックワイルドナイツ」が熊谷をホームタウンとし、多くのラグビーファンが訪れるようにもなりました。これは私たちにとってもうれしいことです。

――秩父鉄道ではSLに乗車することもできますね。どのような経緯でSLを走らせることになったのですか。

大谷社長 秩父鉄道の「SLパレオエクスプレス」は2017年度に運行30周年を迎えました。ルーツは1988年に遡ります。この時、熊谷市で埼玉博覧会という催しが開催されたんです。そこで目玉となるような何かをと、地域全体で機運が盛り上がったところ、地元の小学校にSLが保存されていることに注目が集まり、これを復活させて走らせようということで、弊社にお声が掛かったという次第です。このような経緯で1988年からSLの運行が始まり、博覧会後は弊社がこのSLを譲り受け、現在まで運行を続けています。

――現在はどのような方々がSLを楽しんでいるのでしょうか。

大谷社長 鉄道ファンの方たちだけでなく、幅広い世代の方々に楽しんでいただけていますね。家族三世代でご乗車いただいているという事例も少なくありません。昭和生まれの方が、小さな頃にご乗車された経験を次の世代にも伝えたいということで、お子さんやお孫さんとともに乗っていただくというのはとても嬉しいことですね。

 

新駅誕生の背景にある、熱い思い

――2017年には「ソシオ流通センター駅」、2018年には「ふかや花園駅」と近年、新駅を続けて開業されました。背景にはどのような思いがあったのでしょうか。

大谷社長 ご承知のとおり、日本の地方では人口が減少傾向にあり、鉄道の経営も影響を受けています。でも、新しい企業が生まれ、新しい住宅が増え、新しい駅ができればその一帯は活性化していくものです。ですから地域や企業とともに沿線のエリアを盛り上げていこうと取り組んだ結果、2つの新駅が誕生することになりました。

「ソシオ流通センター駅」は地域開発整備計画の一環として駅をつくり、加速度的に人や企業に集まっていただけるよう、様々な取り組みが進められています。「ふかや花園駅」周辺には巨大なアウトレットモールや農業体験施設の建設計画があり、利用客の方々のため、住民の方々のために新駅をつくることになっていきました。その後、計画が順調に進み、本年2022年春には野菜の魅力を体験できる複合型施設と秋にはアウトレットモールの開業が予定されております。

どちらの駅周辺もこれから益々にぎやかに生まれ変わっていくと思います。これらの新駅の開設は、地域全体を盛り上げるために弊社は何ができるかを考えた結果であり、これからも豊かな町づくりにつながる事業を継続していきたいですね。

――鉄道会社には、単に人を運ぶということだけでなく、町をつくっていくという使命もあるわけですね。

大谷社長 その通りです。ですから鉄道事業を中心として、観光や不動産といった沿線の発展に関わる事業を弊社は長年、続けています。長瀞地区では100年以上も前から川下りを事業として運営していますし、宝登山ではロープウェイの運営も行っています。

こうしたスポットでは多くの観光客、地元住民に喜んでいただきたいですし、沿線の観光資源に注目していただくことで、新たな事業者さんが共同事業ほか様々なアイデアをご提案してくださることにも期待しています。今後はアウトドアブームの流れに沿って、グランピング施設の展開も視野に入れているんですよ。

――バス事業も展開されていますが、観光バスの業界はコロナ禍で大きなダメージを受けていますね。これからの時代、バス事業をどのように展開していこうと考えていますか。

大谷社長 コロナ禍ももちろんですし、現状のままでは沿線の人口減少によって難しい局面を迎えることにもなっていくでしょう。ですから新しい方向性が必要です。

これまでは沿線住民の方に向けて、観光バスを使って他の地域へお連れするということが基本でしたが、これからは、観光やショッピングで沿線付近にいらしたお客様を、沿線の他地域へお連れするといったことで市場を開拓していかなければならないと思っています。沿線周辺に来ていただいた方を他の観光スポットや商業施設などへも回遊していただくようなイメージです。このようにバスをどう活用していただくかというところから考え直して、新たなニーズを発掘していきたいですね。

 

渋沢栄一が深く関わる、秩父鉄道の路線拡充の歴史

――御社の鉄道は明治時代の創業時、熊谷駅から寄居駅までの営業でした。これと比較して、現在は羽生から三峰口と延伸しています。現在のような路線が確立するまでの歴史において、大きなターニングポイントはいつだったのでしょうか。

大谷社長 創設者である柿原萬蔵は当初、秩父の織物業に着目し、織物を鉄道によって輸送することで、産業を発展させようと考えました。ただ織物の輸送だけではなかなか出資者も見当たらず、熊谷から寄居までしか開通できませんでした。そこで二代目社長である柿原定吉の時代に、資金援助をお願いしたのが渋沢栄一さんでした。

そして新たな産業の軸となったのが、石灰石です。セメントの材料となる石灰石は東京を中心とした都市部で広くニーズがあるし、これを秩父から全国へ輸送することで関東圏だけではなく、日本全体への貢献ができるだろうと考えられたのです。結果として石灰石を運ぶという大きな目的ができたことで資金が集まり、羽生から秩父までの路線が開通することになりました。渋沢栄一さんとの関わり、そして石灰石に着眼したことが歴史上、大きなターニングポイントだったと思います。

――長い路線が開通したことで、沿線周辺の発展に貢献できたという実感はありますか。

大谷社長 石灰岩の輸送は現在でももちろん続いていて、産業路線として機能することで地域の経済を支えているという実感があります。また、長瀞まで鉄道が伸びたことで、川下りなどの観光目的で都市部から人々が訪れてくれるようにもなりました。こうした観光路線としての側面は大正時代から現在まで変わっておりませんし、観光、産業の発展とともに沿線住民も増え、生活路線としても機能するようになっていきました。観光、産業、生活の3つの側面で、今後も利用してくださる方のために力を注いでいきたいですね。

――企業を運営していく上で、最も大切なことは何だと感じていますか。

大谷社長 そうですね。コロナ禍は弊社にとっても大きな向かい風で、本当にいろいろなことを考えさせられました。エッセンシャルワークのひとつである鉄道は何があっても動かし続けなければなりませんが、この2年間、大変な時期でも鉄道を継続して動かし続けてこられたのはひとえに従業員の皆さんのおかげです。痛切に感じるのは、人は財産であるということですね。ですからあらためて人への投資には注力していきたい。働き方改革という観点でも、従業員の皆さんが安心して、意欲をもって働けるような環境をしっかりつくっていかなければならないと考えています。弊社で働いてくれている人に投資をすることが、お客様への満足、社会への貢献につながっていきますからね。

 

いつまでも愛される鉄道会社であるために

――創業から120年以上、事業を継続させてきた秩父鉄道ですが、これだけの歴史を築くことができた最大の要因、原動力はどこにあったと考えていますか。

大谷社長 やはり、地域の発展に貢献すること。これをしっかりやり続けるということが私たち、秩父鉄道の基礎の部分だと思います。そして関係各社、周囲の皆さんとの協調ですね。また、長い歴史の中で守り続けたものもあれば、時代に応じて変化させてきたものもあります。これからの時代は変化する時代にどう対応していくかを強く意識し、弊社の歴史を紡いでいきたいですね。

――これからの時代、鉄道が担う役割についてどう考えていますか。

大谷社長 これまでも、これからも、安全に人を運ぶということをどんな時でも続けていくこと。また交通渋滞の緩和という意味でも、脱炭素の観点からも価値のある乗り物として、皆さんから認められる存在であるよう私たちも努力を続けていきます。

――沿線周辺の人口が増えれば、地域の発展、鉄道の発展につながっていくと思います。最後に、沿線に住む価値、魅力についてアピールしていただけますか。

大谷社長 熊谷からは新幹線も利用できるので東京都内に勤めている方にとっては十分、通勤圏内です。自然豊かな地域に暮らしたいという方にとってはとても住みやすく、注目していただけるような場所だなとつくづく感じています。

秩父ももちろん暮らすには素晴らしい地域ですね。あまり知られていませんが秩父ではお祭りが多く、365日、どこかでお祭りが開催されていると言われるほど賑やかな土地です。お祭りが多いということはその地域の皆さんで連携が取れているということ。地域住民同士のお付き合いも円滑でとても暮らしやすい土地です。住む場所としてはもちろん、ワーケーションのようなスタイルで利用していただくにもうってつけですよね。もしこの地域の魅力に触れたことがないという方がいましたら、ぜひ、一度、足を運んでほしいと願っています。

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