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【神奈川県】世界中に日本の優れたエンターテインメントを。オリエンタルな世界観で歴史と文化への興味の入り口を創発するゲームメーカー

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年3月14日に掲載した記事の再掲載です。

株式会社コーエーテクモホールディングス
経営企画部長 井上敏明

世界中に日本の優れたエンターテインメントを。
オリエンタルな世界観で歴史と文化への興味の入り口を創発するゲームメーカー
―神奈川県― 株式会社コーエーテクモホールディングス

今や世界中で愛されるゲームとなった「信長の野望」や「三國志」。こうした大ヒットシリーズを世の中に届けているのがコーエーテクモホールディングスです。壮大な歴史シミュレーションゲームを開発してきた同社は、強みである開発力・技術力・マネジメント力を活かしながらアクションゲームの開発にも挑戦し、最近では「仁王」シリーズが人気を博しています。日本の優れたゲームを世界に広げるエンターテインメント集団の戦略を、経営企画部長の井上敏明さんに伺います。

世界中で支持される人気シリーズの数々

――「コーエーテクモ」と言えばたくさんの人気タイトルがありますね。これらのタイトルはどのような開発体制で制作されているのでしょう。

井上部長 当社は40年以上、ゲーム産業に携わり、色々なIP(Intellectual Property/知的財産)を保有しています。現在はこれらのIP、タイトルを6つのブランドに分け、それぞれのブランド毎に成長戦略を考え、実施するというスタイルです。「三國志」「信長の野望」など人気歴史シミュレーションを擁する「シブサワ・コウ」ブランド、「無双」「討鬼伝」などアクションゲームが中心の「ω-Force」ブランド、「NINJA GAIDEN」「仁王」などの「Team NINJA」ブランド、RPGが軸となる「ガスト」ブランド、女性向けの「ルビーパーティー」ブランド、そしてスマートフォンゲームを開発する「midas」ブランドです。

――これらのタイトルの中で、事業の柱となる人気ゲームについて紹介していただけますか?

井上部長 当社のバックボーンと言いますか、コーポレートアイデンティティとなるのが「信長の野望」と「三國志」ですね。「信長の野望」の一作目は1983年にリリースされ現在16作目、累計1,000万本を超えるシリーズとなっています。ご存知かもしれませんが、本能寺で果てた信長が仮に生きていればどうなったか、というように、戦国時代を疑似体験できる壮大な歴史シミュレーションゲームです。「三國志」も現在14作目、累計800万本以上を販売する長寿タイトルですね。こちらは中国を舞台に君主となって統一を目指すという歴史シミュレーション。ここ2年では、IP許諾タイトル「三国志・戦略版」が中国でヒットを記録しており、当社の好調な業績の大きな要因ともなっているんです。

――中国が舞台となるゲームを日本で作り、それが中国でヒットするというのも面白い現象ですね。

井上部長 そうですよね。当社としても嬉しい現象です。始まりは、中国側からのお申し出からでした。当社のブランドに魅力を感じていただいたアリババさんが中国で展開したいと。40年近く前に劉備、張飛、関羽といった武将の顔をゲーム上で、世界で初めて表現したのが当社で、これを大切に育て続けてきました。そのようなタイトルを展開したいと中国の大企業からオファーを受けたのですから、これはやっぱり嬉しいことです。手法としてはIPライセンスという形でライセンスフィーをいただき、中国側で制作し、当社が監修するというスタイルです。

――やはり海外でも、歴史シミュレーションといえば「コーエーテクモ」というブランド認知が浸透しているんですね。

井上部長 そうですね。ただ、歴史シミュレーション以外のジャンルでも成長しているシリーズが増えてきました。「無双」シリーズは誰でも楽しめるアクションゲームとして人気で、「真・三國無双」シリーズは累計で2100万本を突破しています。累計600万本を超える「仁王」シリーズはさらに歯ごたえのある難易度の高いアクションゲームとして好評をいただいています。こちらの「仁王」シリーズは北米、欧州で非常に高い支持を得ているんですよ。また、「ライザのアトリエ」のようなJRPG(日本製のRPG)も世界中で人気です。歴史シミュレーションはもちろん、それ以外のジャンルでも多様なIPを生み出すことで、世界中で当社のタイトルが人気を得ているといった状況を作れていると実感しています。

――軸となる歴史シミュレーションの分野で、今後も「信長の野望」「三國志」のような超人気シリーズを生み出そうという動きはあるのですか?

井上部長 もちろんあります。創業当初は「信長の野望」「三國志」から始まり、チンギス・ハーンをテーマとした「蒼き狼と白き牡鹿」や16世紀を舞台とする「大航海時代」などが続き、これからも歴史という切り口で様々な人気タイトルが登場する可能性は大きいですね。

背景にはやはり、当社の創業者でありクリエイターでもあるシブサワ・コウ(代表取締役社長の襟川陽一)の存在が大きいという事実があるでしょう。シブサワ・コウに憧れた歴史好きのスタッフが当社には集まってきますし、まだまだ世界中にはゲームのテーマとなりうる史実や舞台がたくさんあります。歴史を土台とした新たなシミュレーションゲームの登場をお待ちいただいてるファンの方も大勢いますからね。

なぜ人気シリーズを続々とリリースできるのか?

――開発力においてコーエーテクモの特徴、強みを教えてください。

井上部長 開発力においては、人の要素、仕組みの要素があるでしょう。クリエイティビティだけでなく、ビジネスの力もスタッフには求めていて、エンターテインメント性が高いことはもちろん、ビジネスとしてどう成立させていくのかということについても解決できる人材が当社には揃っています。プロデューサー人材と呼んでいますが、こうした人材を多く育てることに重きを置いている点が経営においてプラスに作用しているのではないかと考えています。

そして、仕組みの要素という観点では、魅力あるIPを幅広く展開していく仕組みを構築してきたということのほか、当社では「Katana EngineTM」という言わばゲーム開発におけるミドルウェア(ゲームエンジン)を全社的に採用している点が強みとなっています。これは、社内の専任の研究開発部署「フューチャーテックベース」が開発した、ゲームの開発環境を整えるインフラのようなものであり、ハイクオリティで効率的な開発を全社で行うことを可能としています。

――技術力においての強みをどう分析されていますか?

井上部長 高い技術力で「Katana EngineTM」をブラッシュアップしてきたことで、効率的に多様なゲーム端末にコンテンツを提供することができます。このマルチプラットフォーム戦略を可能にする技術力が、当社のゲーム開発会社としての収益性の高さに繋がっています。また、開発者の育成においては等級に応じた研修を手厚く用意しながら、時代にマッチした技術の進化に対応できるよう仕組みづくりに力を入れています。ただ、やはり原動力となるのは「ゲームが好き」だという開発者それぞれのマインドですね。他社のゲームも含めて、多様なゲームを日々、プレイするなかで培われるものは絶大だと感じます。

――マネジメント力についての強みはいかがでしょうか?

井上部長 やはりスケジュール管理、クオリティ管理、コスト管理をしっかりして、ビジネスとしてきちっと捉えていく、プロジェクトを遂行していくという意識の徹底ですね。こうした意識の高さが収益性を支えている要因だと考えています。エンターテインメントとビジネスを両立し、納期、品質、コスト、これらすべてを高いレベルで実現していくことが重要なのです。

各プロジェクトはどれもスタート時の目標が営業収益率30%という非常に高い設定で、こうした環境でスタッフは知恵を絞るようになり、能力を向上させていきます。難しいタスクではありますが、「先を見通す力」を養い続けることがスタッフの育成、収益の確保、新たなプロジェクトを生み出す力につながっていくのだと信じています。

どこに向かう?壮大な世界戦略の中身

――今後の経営戦略として特筆すべきポイントを教えていただけますか?

井上部長 まずは、開発力、技術力、マネジメント力をベースとしてしっかり収益性を高めていくことです。そして、中長期的な方針としては、グローバルIPの創造と展開ということになるでしょう。当社では、プロジェクトのスタート時からグローバルで収益が出るかどうかを考えて開発をしています。2017年に生まれた「仁王」はまさにそのような方向性で生まれたもので、今後、大切に育てていきたいタイトルですね。コンソールゲーム(プレイの際に特定のハードを必要するゲーム)は欧米市場に大きなポテンシャルがあり、スマートフォンゲームはアジア市場にまだまだ可能性があります。こうした各市場において戦略的にグローバルな展開を強めていくことが重要だと考えています。また、IP許諾事業も成長させていくことはもちろんのことです。

――今後、グローバルなコラボレーションにおいて勝算はあるのでしょうか?

井上部長 はい、もちろんです。当社は10年以上、国内のパートナーを主として成長を実現してきましたが、2年ほど前にはアメリカのMarvel Entertainmentさんと密接に協働しながら「MARVEL ULTIMATE ALLIANCE 3: The Black Order」というタイトルを開発しました(販売元は任天堂株式会社)。この海外コラボレーション第1号を皮切りに、グローバルな展開をさらに強めていきたいところです。開発力、技術力に加え、収益性の高いゲームをスピーディにリリースできる当社の強みが、海外のゲーム開発会社に対しての信用を高めていると考えています。

――グローバルな展開において「仁王」シリーズの大成功がゲーム業界に与えた衝撃は非常に大きかったと思います。この成功体験が今後、新たなプロジェクトの進め方にも良い影響をもたらしますか?

井上部長 「仁王」は、プロジェクトがスタートした当初の想定を大きく上回る、350万本を超える大ヒットとなりました(「仁王2」も合わせシリーズ累計では600万本を突破)。この経緯から、今までよりももっとリスクをとって大きなチャレンジをしていこうという空気は醸成されたと感じます。リスクをとるということは、大きな予算を確保するということ。つまり、「仁王」のおかげでこれまでできなかったような壮大なゲームが作れる環境になったということです。

デジタルの進化によってより増していく、ゲームの存在感

――これまで大ヒットしたタイトルはたくさんありますが、そのようなヒットの要因を分析した結果、人気を呼ぶタイトルの傾向とはどのようなものでしょうか?

井上部長 そうですね、ひとつ言えるのは日本特有の世界観が世界で支持されるようになったという事実でしょうか。10年ほど前までは日本の戦国時代をテーマとしたゲームはやはり日本の市場でのみ受け入れられるという状態でした。ところがネットやSNSによってグローバルに情報や文化の壁が低くなり、ローカルなコンテンツでもクールなものはどの国でも受け入れられるようになったと感じています。また、デジタルの進化によって世界のどこでもゲームを購入しやすくなったという背景も、当社には追い風となっています。こうした環境を背景に、「狭いが深くて濃い」歴史をテーマにしたゲームは今後益々人気を呼ぶのだろうと確信しています。当社の強みである「オリエンタルな世界観」のアイデンティティをさらに伸ばしていくことで、新たなファンを世界中で獲得することができると考えています。

なお、近年では、GPS(位置情報)を利用したゲームや、オンラインで大勢集まって楽しむバトルロイヤル的なゲームが人気を博しています。当社としては、このようなゲームの新しい在り方にもアンテナを張っているところです。

――確かに、ゲーム業界を取り巻く環境は大きく変化していますね。そのような中で、御社の価値をどのように高めていきたいですか。

井上部長 最近、強く感じるのは、人と人をつなげるという重要な役割をゲームが担い始めているという点です。オンラインでつながった人と連携して楽しみ、コミュニケーションが生まれるという状況を多くの人がすでに体感しているでしょう。当社のスマートフォンゲーム「三國志 覇道」でも、オンラインで繋がった仲間と力を合わせて戦います。ゲームを通じた仲間とのつながりが、特にコロナ禍においては、人々の心の支えにもなっていると感じます。

心豊かに楽しんでほしいということで、当社はエンターテインメントを創造してきましたが、ゲームは私たちが考える以上の存在になっていると実感します。時代の流れを見ても、今後、ゲームの存在感、役割はどんどん増していくのだろうと考えていますね。

そして、嬉しいことに、当社のゲームに触れることで、歴史や文化に興味を持ったという人は多くいらっしゃいます。当社のゲームコンテンツを入り口として、歴史や文化への関心を高めてもらう。こうした側面からも、新たなエンターテインメントの価値、そして当社の価値を広く示していきたいですね。

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