東証市場再編

全国上場会社の旅

【新潟県】「あられ、おせんべいの製菓業」から、お米の知見や加工技術を活かした「Better For Youの食品業」に変革を

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年3月28日に掲載した記事の再掲載です。

亀田製菓株式会社
経営企画部 経営戦略チーム シニアマネージャー 安中俊彦

「あられ、おせんべいの製菓業」から、
お米の知見や加工技術を活かした
「Better For Youの食品業」に変革を
―新潟県― 亀田製菓株式会社

第二次世界大戦直後の1946年に、新潟県新潟市(旧:亀田町)で水あめの委託加工からスタートした亀田製菓株式会社(創業当時は亀田郷農民組合委託加工所)。1966年発売の「ピーナッツ入り柿の種」を主力商品の筆頭に、1975年に国内米菓市場で売上高日本一になって以来、業界トップを走り続けています。日本の伝統的な食である米菓を広く普及させるべく海外進出も積極的に推進している現状について、経営企画部 経営戦略チームのシニアマネージャー(以下SMG)である安中俊彦さんにお話を伺いました。

ロングセラーの「亀田の柿の種」「ハッピーターン」が二本柱、国内米菓トップシェア企業

――亀田製菓といえば、「あられ・おせんべいの会社」として全国に名が知られています。

安中SMG 戦後の食糧難の時代に、「男性はどぶろくで気晴らしができるが、女性や子供には楽しみといえるものがないから」と、未体験の水あめづくりに取り組んだのが、亀田製菓の始まりです。そこから、次第に米菓も手がけるようになり今日に至りました。

米菓は、日本の伝統的な食であり日本中にある一方、地域性が高いという側面もあります。地域に根付いた家内制手工業がほとんどであった米菓を、量産化していち早く全国規模で展開したのが亀田製菓です。現在は、国内米菓市場のシェア約35%(※)を占めるリーディングカンパニーに成長しました。
(※出所:株式会社インテージSRI+)

――米菓の生産ならではの特徴や工夫があるのでしょうか。

安中SMG 米菓の製造は、原料となるお米の粉を機械に投入してから完成までに、早くて2日、長いと1週間程度の時間を要します。時間だけでなく、工程自体も他のお菓子に比べて複雑なので、そこをどう効率化・均一化するかというのが、量産のカギとなります。当社では、1950年代には量産化に向けた機械化が進められ、その後も効率化に向けた様々な開発を続けてきました。食品設備の活用に留まらず、他の産業設備をカスタマイズして製造工程に組み込むなど独自の製造技術を開発してきました。近年では、2012年にグループ会社化した、アメリカのプレミアム・グルテンフリークラッカー「Mary’s Gone Crackers, Inc.」の製造方法や他の食品の製造方法を米菓製造に転用することで製造時間の短縮を図ろうとする取り組みを進めています。一筋縄ではいきませんが、ようやく量産化に向けた目途が立ったところです。

――「亀田の柿の種」など12ブランドを中心に展開されている国内事業について、概要や最新の動向をお聞かせください。

安中SMG これまでの米菓はお客様に手に取ってもらい、食べてもらって、リピートしてもらって、じわじわと認知度やシェアを伸ばすのが米菓業界における販売セオリーであり、当社も主力ブランドに経営資源を集中する販売戦略を取ってきました。売り上げとしては、「亀田の柿の種」と「ハッピーターン」で国内米菓事業の売り上げの約40%を占めています。主力ブランドの多くがロングセラー商品ですが、時代の変化に合わせて進化し、「おやつ」と「おつまみ」という米菓に対する2大需要のうち、ここ数年は家飲み需要の高まりから「おつまみ」系の商品が伸びています。

最近では、2021年2月に発売した「無限エビ」が、発売1週間で100万袋という米菓業界ひさびさの大ヒット新商品となりました。エビを殻ごと練り込むことによる濃厚な味わいにしたことと、さくさく食感などの軽さが人気となりました。加えて、商品パッケージに印刷した「エビ神様」というキャラクターにも注目が集まりました。
この商品は、若手従業員が中心となり従来の米菓の発想にとらわれない商品を目指して作りました。
商品開発に限らず、風土改革や地域貢献等当社では積極的に若手有志がプロジェクトを立ち上げ、様々な取り組みを進めています。亀田製菓は、米菓のリーディングカンパニーとして、新しい商品を開発し米菓市場を活性化させていく責任がある一方で、ここで働く従業員が生き生きと活躍するために会社としても新たな取り組みを後押し続けています。

最近の取り組みの例としては、クラウドファンディングを活用した【”砂糖ゼロ”ハッピーターン】として砂糖を使わないハッピーターンを開発するプロジェクトを推進したり、お客様の声をもとに「亀田の柿の種」の柿の種とピーナッツの比率を変更したり、変化を恐れずにチャレンジすることを推奨しています。

健康志向により米菓・米由来商品ニーズが高まる海外展開

――最近では海外への進出も活発化されています。海外展開においても、「柿の種」は重視されてきましたか。

安中SMG 亀田製菓が初めて海外に進出したのは1989年の北米ですが、アメリカにおける「柿の種」販売は、試行錯誤の連続でした。ハーバード大学経営大学院のケーススタディにも取り上げられていますが、赤字が続き、現在、販売を見合わせています。異なる食文化の土地において米菓が浸透するまで、相当な時間を要することを学びました。現在の北米は3社体制で、健康志向の高まりを背景にヘルシークラッカーを中心に商品展開を進めています。グルテンフリーでオーガニック、遺伝子組み換えでない原材料で作ったクラッカーは、北米を中心に世界的な健康志向需要に合致するものと考えています。さらに、アレルギーの観点から他の穀物に比べ米は秀でており、米や米由来商品については、今後、大きな成長が見込まれると考えています。

――近年はアジア圏での展開にも注力されています。

安中SMG アジアでは、2003年に中国・青島に日本向け製造拠点を設立し、それを皮切りに現在はタイ、カンボジア、ベトナム、インドなど全世界6カ国9社で事業を展開しています。もともと米文化のあるアジア圏では、各国における事業拡大は勿論のこと、原材料となる米の生産地でもあることから先進国に向けた製造拠点としても考えています。

世界経済の流れにおいて、今後、アジア中心の経済圏が確立される可能性が高いことから、先にアジア圏で事業基盤を作っておくことで、長期にわたり当社グループの優位性を保つことができるのではないかと考えています。

米どころ新潟発祥のブランドイメージと誇りをもって、新たな商品領域にも挑戦し続ける

――創業から80年近く、世界進出も果たしながら、地元・新潟で操業を続けられ、日本初の地域リーグでのプロサッカークラブ「アルビレックス新潟」にも、プロ化当初の1996年からユニフォームスポンサーとして支援しています。

安中SMG 「アルビレックス新潟」へは、そのクラブの理念に共感し、メインスポンサーとして約四半世紀以上支援させていただいています。プロスポーツの迫力、興奮、感動を体感してもらうことを目的に、「アルビレックス新潟」と協力しながら福祉施設や保育園の子どもたちをホームゲームに招待する地域貢献活動を実施しています。

地元、新潟に育ててもらった企業であるということは、企業として公言しているところでもあります。新潟県は、お米の名産地としてのブランドイメージもあり、米菓やお米由来の商品を提供する企業として、そのイメージを最大限活用させていただいている面もあります。

また、地域の小学生を対象とした「工場見学」や、若手有志が部門を超えて協力しあい、保育園や幼稚園、小学校を訪問してお米の良さ、米菓を通じた噛むことの大切さについて学んでもらう「出前授業」や「食育活動」を実施しています。これは将来のお客様創り、当社の従業員創りに繋がる取り組みと考えています。

事業を通じた地域社会への貢献としては、雇用を提供しているという側面もあり、親子や兄弟で亀田製菓に勤めている社員も数多くいます。

――自社内に「お米総合研究所」も設けられています。

安中SMG 亀田製菓のお米総合研究所では、おいしさ、機能性、新素材、生産技術などにおける様々な研究を行っています。研究所が設立された1950年代後半は、新潟県と協力しながらお米の特性や米菓の製造設備についての研究が進められました。職人の手作業が主であった米菓づくりの機械化・量産化に関する研究が中心でした。産業化が進んだ現在では、食の新しい価値の創造に向けた研究開発に取り組んでいます。具体的には、1994年には、米菓以外の領域へと踏み出したヘルスケア商品第1号である低たんぱく質米飯『ゆめごはん』を発売しました。また、独自開発したお米由来の植物性乳酸菌「K-1」には整腸作用とお肌の保湿効果が認められ、酒粕由来の植物性乳酸菌「K-2」にはアトピー性皮膚炎や花粉症の症状を軽減する抗アレルギー効果が認められるなど、健康を軸としたお米の「新機能性食品」の研究開発も進められています。現在は、食品事業の新たな柱として注目の集まる「米粉パン」や「プラントベースドフード(植物性代替肉)」の研究にも力を入れています。

亀田製菓は、”あられ、おせんべいの製菓業”から”Better For You の食品業”へと進化し、持続可能な社会の実現に資する企業グループを目指し日々努力しています。

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