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【島根県】農業機械の販売・修理もするホームセンターは地域に根ざす「生活と仕事のインフラ」

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年3月31日に掲載した記事の再掲載です。

株式会社ジュンテンドー
代表取締役社長 飯塚正

農業機械の販売・修理もするホームセンターは
地域に根ざす「生活と仕事のインフラ」
―島根県― 株式会社ジュンテンドー

DIYに用いる工具や資材など、衣食住の「住」に関わる商品を中心に扱うホームセンターは、品ぞろえに地域性やチェーンごとの個性が反映する事業でもあります。このうち、中国地方と近畿圏で126店舗を展開する株式会社ジュンテンドー(島根県益田市)は、プロユースにも応えられる園芸・農業用品や資材・工具類を充実させ、店頭での農業機械修理といったサービスにも力を入れています。地方都市や中山間地、離島に積極出店し、地域にとって「なくてはならないインフラ」を目指す同社の成り立ちや現在の事業展開、これから実現していく店づくりのビジョンについて、代表取締役社長の飯塚正さんに伺いました。

「資材・工具」と「園芸・農業用品」が売上の2本柱

――主力のホームセンター事業を「農業、園芸、資材、金物、工具、ワーキングの専門店」と位置づけられている理由について、まずお聞かせください。

飯塚社長 農業と園芸を最初に挙げているのは、当社ならではの特徴がこの分野にあるためです。確かに私たちも他社と同様、ホームセンターと聞いて多くの方が思い浮かべそうな資材や工具が、売上の最も大きい割合を占めています。ただ同時に、3割弱のそれらにほぼ並ぶほど園芸用品・農業用品の割合が高く、1割強にとどまる業界平均を大きく上回っています。

これは、店舗の立地が主な理由です。私たちは中国地方の全5県とお隣の近畿地方に現在126店舗を展開していますが、特に中山間地や離島を含む、商圏人口1~2万人のまちを重点的にカバーしています。そうしたエリアでは自宅周辺で小規模に営まれている兼業農家が多いので、作物の種苗をはじめ、肥料・農薬などの資材や農機具に対し、常に一定の需要があるのです。

従来、こうした比較的小口の需要に応えてきたのは地元のJA(農業協同組合)や、個人経営の農機具店でした。ところが近年は、少子高齢化などの影響で購買部門を縮小するJAや、後継者難で廃業する農機具店が相次いでいます。そこで私たちが、最寄りの販売店としての役割を引き継ぐケースが増えていて、例えば草刈り機は、全店で国内出荷台数の2%弱にあたる年間1万台を販売しています。

――1969(昭和44)年に、現在も本社がある島根県益田市で、ホームセンターの”元祖”といえるお店を開かれたと伺いました。

飯塚社長 はい。地元で薬局を営んでいた私の父が始めた「ハウジングランド順天堂駅前店」です。たわし、桶、ほうきなどの道具類を昔は「荒物」と言いましたが、そうした家庭用品や雑貨類を店員に気兼ねなく自由に見て選べるという、当時ほとんど例のなかったスタイルで事業拡大を図る試みでした。

父は大型店を大規模展開するアメリカ式のチェーンストアへの憧れがあり、食品スーパーに参入して10年足らずで撤退するなど、試行錯誤を続けていた時期でした。同じ薬局として神戸で創業し、後に小売業日本一の売上を達成された中内㓛氏が父の目標だったようで、同氏も参加するチェーンストア経営研究団体を率いていた渥美俊一氏に学び、ハウジングランド開店の前年には、実際に米国のショッピングセンターを視察しています。

日用品のほか園芸用品やDIY関連なども取りそろえ、今日に至る店づくりの基本が確立したのは、店名を「ホームセンター順天堂」に改め、中国地方で年間10店以上の大量出店に入った1980年代からです。チェーン展開が軌道に乗った80年代後半には、近畿地方への進出や現社名への変更、株式上場といった節目があり、その後も品ぞろえや店舗面積を拡大してきました。店舗数や売上規模では現在、全国のホームセンター運営企業で15位前後のポジションに位置しています。

移り変わる「店舗面積」のトレンドに合わせた店づくり

――ホームセンターの店づくりは、今日までどのように変化してきましたか。

飯塚社長 変化の大きなカギとなったのが「店舗面積」でした。日用品中心の品ぞろえで、大型化と多店舗化を進めていた1970年代までは、法規制の対象外だった店舗面積1,000~1,500平方メートル、テニスコートでいえば4~6面分くらいの店舗を島根県内中心に増やし、およそ20店舗まで成長しました。

ところが、1979(昭和54)年に改正法が施行された大店法(大規模小売店舗法)では規制が強化され、500平方メートル以上の新規出店には地元商工会などを交えた調整が必要となったのです。大型店出店のハードルが高くなり、実現までの長期化も見込まれたことから、父をはじめとする当時の経営陣は一計を案じ、そうした規制にかからない500平方メートル未満、つまり150坪ほどの小型店舗で、なんとか一通りの日用品がそろうホームセンターのモデルを作り上げました。

――大型のチェーンストアを目標としていたビジネスに、規制強化は逆風でしたね。

飯塚社長 結果としては、むしろ良かったのかもしれません。というのは、幸い当時は小型ホームセンターの限られた品ぞろえでも受け入れられる出店先が多かった上、面積が小さいため1店舗あたりの出店費用も抑えられたからです。実際、法改正後の1980年代は出店ラッシュとなり、当社は一気に100店舗の大台を達成。「150坪のホームセンター」という分野で、しっかり業態を確立できました。

――ホームセンターは近年、全体的に大型化し、建材など「プロ向け」の商品を充実させている印象があります。

飯塚社長 そうですね。当社も2000年以降は、出店規制が緩和された大型店の品ぞろえを充実させる一環として、農家向けの農業用品のほか、工具や建材といったプロユースの需要が大きい商品に力を入れてきました。ただ私たちはあまりにも日用品を取り扱う「150坪の店づくり」に慣れていたせいで、いち早く大型化した都市部の競合店との競争では、厳しい局面がしばらく続きました。

1994年に緩和(2000年に廃止)された大店法では、1,000平方メートル未満の出店がほぼ自由化し、さらに大きい店舗も出店しやすくなりました。ちょうどこのころ経営に加わりだした私も(1994年取締役、2005年社長に就任)、3,000平方メートル規模に挑戦するなど、店舗面積の拡大に取り組みました。しかし、面積の広い店には、それに見合った品ぞろえと、プロに認められる接客が必要でしたが、私たちにはそのノウハウがなかったのです。規制緩和を歓迎するばかりではいられませんでした。

――そうした課題を、どのように克服されたのですか。

飯塚社長 私たちのルーツは薬局なので、もともと工具や建材に明るかったとはいえません。一方、ホームセンター業界にはそれらを扱い慣れている大手もあるので、「知恵をお借りしよう」と決めました。

転機となったのが、2011年にオープンした茶屋町店(岡山県倉敷市)です。それまでの倍の店舗面積6,000平方メートルという規模の同店を軌道に乗せるには、資材・工具の品ぞろえを格段に強化しなければならず、従来の仕入れ先では不十分なことがはっきりしました。そこで、金物卸が発祥で現在も卸部門があるアークランドサカモト株式会社(新潟県三条市)や、創業時から住宅資材に強い株式会社ジョイフル本田(茨城県土浦市)の協力を仰いで取扱商品を増やし、DIY用途だけでなく職人の方々にもご利用いただくための、さまざまなコツを学びました。

ここで得られた仕入れルートと売場づくりのノウハウを既存店にも展開するようになった現在では、資材・工具に関しても、プロユースへの対応がかなりできるようになってきたと自負しています。

機械修理も店頭で。地域の暮らしと仕事を支える

――農業機械に関しては、販売するだけでなく店頭で修理もしているそうですね。

飯塚社長 はい。草刈り機やチェーンソー、農薬散布機など、私たちが販売している比較的小型の機械を対象に、社員がその場で点検修理に応じる体制を、ほぼ全店舗で完備しています。メーカー修理への取り次ぎが多いホームセンター業界ではかなり珍しい体制ですが、これもやはり農家のプロユースに応える狙いで、20年近く地道に取り組んできた成果です。

特に喜ばれるのは週末で、平日会社に勤めている兼業農家の方が「草刈りしようとエンジンをかけたら動かない」とお持ちいただくのが、よくあるケースです。私たちの店であれば、内部清掃や燃料交換などですぐ直せることも多いので、その日をムダにしなくて済むというわけです。

――直った道具でそのまま仕事に戻ってもらえる、まさに「プロユース」です。

飯塚社長 それを実現するには、修理用の工具、修理ピットの設置といったハード面もさることながら、マニュアルを読んだだけでは身につかない技術も求められます。当社では、各店の社員に機械メーカーの講習を受けてもらったり、経験を積んだ社員に後輩を指導してもらったりといった担当者の育成に、じっくり時間をかけてきました。

一方、近頃は「新品に換えても数万円の機械に工数をかけては見合わないので、個人経営の農機具店では修理可能でも受け付けてもらえない」といった話もよく聞きます。ジュンテンドーがそうした小型機械のメンテナンスまで対応できるのは、多店舗展開で豊富な商品を取り扱う量販店としての規模があるからこそで、創業の原点であるチェーンストアとしての存在意義を発揮できている一例だと思います。

――対「地方都市、中山間地、離島のなくてはならないインフラになろう」という経営理念に込められたものがうかがえるお話です。

飯塚社長 はい。特に過疎化や少子高齢化で店舗の減少傾向が続く中山間地域や離島で事業を営む以上、そこでの「暮らし」にとどまらず、「仕事」も支える役割が、今後もいっそう増していくと考えています。

だからこそ、サービス面でも商品力でも、今よりもっとプロに頼りにされる店に成長する必要があります。かつての急拡大期に増やした1,000平方メートル未満の小型店は、そのまま現在も40店舗ほど残っていますが、大型店舗に更新し、品ぞろえの強化を加速させていくつもりです。

2本柱として育て、この20年間で売上構成比を1.5倍にした「資材・工具」「園芸・農業用品」をプロユースでさらに伸ばし、合計6割を早期に達成したい。そのためのお手本は、父も理想とした米国のチェーンストアです。例えばホームセンター大手の「ホーム・デポ(The Home Depot)」は、EC全盛の時代でも「直接見てすぐ買える」ことでリフォームのプロに支持され、その好調ぶりがニュースになるほどです。いつか「日本のホーム・デポはジュンテンドーだ」と、胸を張って言えるようになりたいですね。

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