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【栃木県】長期的な成長を目指し、4つの「やらないこと」を徹底 手術用縫合針などの医療機器分野で「世界一の品質」に注力

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年1月20日に掲載した記事の再掲載です。

マニー株式会社
代表執行役社長 齊藤雅彦

長期的な成長を目指し、
4つの「やらないこと」を徹底
手術用縫合針などの医療機器分野で
「世界一の品質」に注力
―栃木県― マニー株式会社

マニー株式会社(栃木県宇都宮市)は、1956年に手術用縫合針の製造販売で事業を開始した医療機器メーカーです。長年にわたり製造してきた手術用縫合針のほか、眼科用のナイフ、虫歯を削るダイヤバーなど、素材技術と微細加工技術を活用した製品でビジネスを拡大してきました。ものづくりを行うメーカーとして「世界一の品質」にこだわり続けてきた同社が、今後どのように成長していくことを目指しているのか、代表執行役社長の齊藤雅彦さんにお話を伺いました。

ニーズに応え続けて縫合針は1万種以上のラインナップ

――創業から現在まで、分野は広がっても医療機器一筋でビジネスをされていると伺いました。

齊藤社長 マニーは1956年にアイド縫合針(※1)の製造販売で、創業者の松谷正雄が個人起業したのが始まりです。同氏は戦後家族の疎開先であった栃木県高根沢町に移転し、平和と人々に貢献するために医療機器事業を始めることにしました。

創業から3年後に株式会社松谷製作所として、今までの鉄製縫合針の欠点を克服した独自開発のステンレス製縫合針の開発に乗り出しました。1961年に世界で初めて18-8ステンレス縫合針の製造に成功し、1967年にはアイレス縫合針の製造を開始しました(※2)

創業の背景にも通じますが、企業理念は「患者のためになり、医師の役に立つ製品の開発・生産・提供を通して世界の人々の幸福に貢献する」を掲げています。

(※1)アイド縫合針:木綿針のように糸を通す孔があって、孔に糸を通して使う縫合針。
(※2)アイレス縫合針:針の末端に縦の止り穴があいていて、その中に糸を入れてカシメて使う縫合針。

現在の製品セグメントは「アイレス針」「サージカル」「デンタル」の3つです。

アイレス針は、外科手術に使用される針付縫合糸の針を扱う製品セグメントで、当社の製品は針形状に加えて、シリコーンコーティングの技術による切れ味の良さ、折れにくさといった特徴を備えています。身体部位や術式に応じて手術用の縫合針は1万種類以上あり、これまで世界の医師のニーズに細やかに応えてきました。

サージカルは、白内障の手術で使用される眼科ナイフ、ステイプルで皮膚表面の切開面を縫合するスキンステイプラー等の外科治療機器を中心とした製品セグメントです。切れ味といった物理的特性の追求のみならず、医師の使いやすさといった感覚要求にも応えられる製品開発を目指しています。

デンタルは、根管治療に使用されるリーマ・ファイルや虫歯の切削に用いるダイヤバーを主力とした製品セグメントになります。

成長のためには「トレードオフ=やらないこと」の基準を守る

――長年培った材料や微細加工の独自技術が強みですね。

縫合針に使用しているステンレスは、当社が独自に医療機器用に開発改良しました。一般的に18-8ステンレスは、柔らかい素材なので針やメスには向かない材料です。当社では材料成分の調整や加工法を改良することで耐久性や硬くても折れにくい材料としました。その材料を使ったうえで、非常に高精度・高品質の微細加工技術を駆使して製品を提供しています。

微細加工技術の一例ですが、アイレス縫合針には糸を通す円の穴を縦にあける必要がありますが、通常のドリルでは穴があきません。新たな加工技術を模索する中で、1971年よりレーザー加工の研究を本格的に開始しました。当時はレーザーに馴染みがなかった時代で、微細な穴あけ加工に使用したのは当社が世界初でした。

さらには、微細加工するための機械も当社で独自に設計・開発しています。これにより医師の求める高い品質に対応することができているのです。

縫合針の生産から事業を始めた当社は、素材技術と微細加工技術を応用して、現在までに歯科用治療機器や眼科手術用機器にも事業領域を広げてきました。しかし、闇雲に事業領域の拡大を狙うことはありません。当社では戦略立案の基準として「トレードオフ=やらないこと」を守ってきました。

具体的には、「医療機器以外扱わない」、「世界一の品質以外は目指さない」、「製品寿命の短い製品は扱わない」、「ニッチ市場(年間世界市場5,000億円程度以下)以外に参入しない」の4つです。これらの基準を守ることで、長期的な安定成長を目指しています。

世界のすみずみで使ってもらえる製品を目指す

――2021年4月に2026年8月期までの5カ年の中期経営計画を公表されています。その中では、グローバル市場でのシェア拡大を掲げられていますね。

齊藤社長 当社製品は120か国以上で使用され、海外売上比率は70%に達します。海外には、ベトナムに2カ所、ミャンマー・ラオス・ドイツに各1カ所で、合計5つの工場を保有しています。販売については、代理店に委託をしていますが、中国で当社のデンタル製品の模倣品が出回ったことがありました。そこで2012年に現地法人を設立し、マニーの社員が品質・安全性などの観点から、その違いを現地の歯科医師に直接説明して知ってもらうという地道な活動をする体制に改めました。

そして、現在中国では模倣品はほとんど無くなり、インドでも同様に子会社で営業活動を行うようにしています。今後はインドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピンの東南アジア4カ国を対象にした営業体制を構築する予定です。

これまで、医科機器、歯科機器の製造販売で世界最高の品質を追求してきましたが、その中では、当社の製品を使用する海外の医師の協力も仰ぎました。具体的には、当社の販売拠点のある国でKOL(キーオピニオンリーダー)となる医師を選定し、ニーズを聞いてそれに応える製品を提供してきました。

また、販売拡大という観点で、海外の医師たちに向けて実際にマニー製品を使ってもらうセミナーを開催していますが、その際にKOLの医師に対して講師のお願いをしております。医療機器分野では、実際に医師が使用して納得、信頼してもらわないと普及しないんです。ベトナム工場では工場見学なども開催し、医療関係の人たちに関心を持ってもらうなどの施策も講じてきました。

そうした活動はこれからも重要ですし、強化していかなければ世界の隅々で使ってもらえる製品にはならないでしょう。

創業の地で描く未来のものづくり

――創業の地・高根沢町で、新本社・新工場を整備することを公表されていますね。

齊藤社長 国内では、宇都宮市の清原工業団地に本社及び清原工場、高根沢町に高根沢工場の2拠点体制ですが、新たに高根沢町に土地を購入し、新本社・新工場・研究開発拠点の設置を予定しています。まだ着工準備に向けた企画段階ですが、10年先、20年先、さらに将来を見据えてどのような拠点としていくか、将来を担う若手社員とともに議論している段階です。

新拠点では、製造にAIやDXを活用して生産効率を飛躍的に高めることを目指しますが、それだけでなく、環境にも配慮したスマートファクトリーとしたいと考えています。創業以来のものづくりへの思いを引き継ぎつつ、先進的な技術を取り入れたいですね。

本社社屋と齊藤社長

「マニーサステナビリティ」が持続的成長を支える

――中期経営計画の中では、サステナビリティも重視されていますね。

齊藤社長 「マニーサステナビリティ」という方針を掲げています。製造の範囲だけではなくて、資材の調達から製品を使用する医師、関係する地域社会、サプライチェーンも含めた全体として、サステナビリティを考えていきます。

その中でも重点項目として3点を挙げており、一つは「カーボンニュートラル達成に向けた省エネルギー活動の推進」。とくに新本社設置ではこれを重視してやっていきたいと考えています。また、グループ全体の中で一番CO2 排出量が多いベトナム工場では、製造方法も再検討します。

そして、二つ目が「環境に配慮したグリーンサプライチェーン評価制度の確立」。これは当社の調達活動のすべてがESGの観点から妥当かどうかを評価します。

最後に三つ目が「多様な人材が企業理念のもとに活躍できる職場づくり」。これは性別、年齢、国籍、宗教、人種、民族を問わずに相互理解し信頼関係を築くことで、組織の活性化を図ることが目的。生産設備も顧客もグローバルに広がる当社にとって、多様な人材をうまく活用していくことは不可欠です。

これらの活動を通して、これからもマニーは進化し続けます。

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