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【山口県】家から橋、トンネルまで リフォームで日本の安心・安全を守る

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年2月1日に掲載した記事の再掲載です。

株式会社エムビーエス
代表取締役社長 山本貴士

家から橋、トンネルまで
リフォームで日本の安心・安全を守る
―山口県― 株式会社エムビーエス

外壁がひび割れたり剥離したりする建物を見かけることがあります。「なぜ新築の家が数年でこのように劣化してしまうのか?」。そんな素朴な疑問から、美観を再生するだけでなく、建物の耐性も強化しながら長期間保護する技術を開発した株式会社エムビーエス。

その技術は、住宅やビルの修復にとどまらず、高速道路の橋脚やトンネルの補修にも使用され、わたしたちの生活を守っています。国が推進する国土強靭化計画にも一役買う、エムビーエスが描く未来を代表取締役社長の山本貴士さんに伺いました。

さまざまな建物の外壁・室内をリフォーム

――御社の主力事業である「ホームメイキャップ事業」について教えてください。

山本社長 「ホームメイキャップ事業」は、外壁のタイプと劣化の状況に合わせて対応できる4つの独自技術で成り立っています。

1つ目の「クリアコーティング施工」は、我が社が特許を取得した独自の技術です。現在、大半の木造住宅では、工場で作られた外壁を張りつける工法が用いられていますが、残念ながら、酸性雨や紫外線によって劣化し、数年後にはリフォームが必要になります。

一般的には塗料を吹き付けたり、ローラーを使ったりして再塗装しますが、この方法ではお客様がせっかく選んだタイル調や石目調のニュアンスが失われてしまいます。そこで開発したのが「クリアコーティング施工」です。これは、外壁材の表面を5ミクロンから15ミクロン削って元の塗装面を露出させた上に、無色透明のコーティング剤を塗るので、元のデザインを復元することができます。長崎のハウステンボスなど、レンガ造りの建物の風合いを大切にする場所で採用されています。

2つ目の「カラーコーティング施工」は、単調な仕上がりでもいいからしっかり補修してより強くしたい、再び割れてしまうことを防ぎたいというご要望に応えるものです。下地処理を行った上にイギリス製の特殊な樹脂にお客様のご要望の色に調色し、再塗装するものです。これが当社の売上の大半を占めています。

3つ目の「特殊応用施工」は、劣化した工場の屋根など張り替えに高額な費用がかかる場合に、塗装でその対象物を補修・強化する工法です。屋上やベランダなどの防水コーティング、スーパーマーケット等で冷凍食品からの湿気を起因としたカビの発生を防ぐ防カビコーティング、コンクリート剥き出しの住宅の基礎を強化しながら美観も保つ基礎コーティングなど、特殊な箇所に対応しています。

4つ目が橋梁や橋脚、トンネルといったコンクリート構造物の補修をする「スケルトン防災コーティング」です。

コンクリートの表面が目視できる補修工法

――「スケルトン防災コーティング」についてどのような技術か具体的に教えていただけますか。

山本社長 高速道路の高架橋やトンネルを補修する場合、補修箇所にコンクリートを上塗りしたり、カーボンや鉄板などで覆って強化したりしますが、そうした従来の工法だと、劣化箇所そのものが見えなくなってしまいます。

そこで、補修箇所のコンディションをモニタリングできる「スケルトン防災コーティング」を開発しました。「ガラス連続繊維シート」を用いて強度を高めながら、透明なコーティング剤で仕上げるので、施工後のクラックや躯体表面の変状が目視で確認することができるようになったのです。NEXCO西日本と開発し共同特許を取得したこの技術は、2021年10月に中国経済産業局長賞を受賞するなど高く評価されています。

――「スケルトン防災コーティング」は、すでに様々な場所で使われているのですか。

山本社長 2012年に起きた笹子トンネル天井板落下事故をきっかけに、5年に1度の近接目視による全数監視が法制化されました。すでに全国43都道府県での施工実績があり、関西圏であれば、京都から大阪をつなぐ第二京阪道路の剥落防止を必要とする箇所の約8割に、この工法が採用されています。道路会社22社、電力会社4社、鉄道会社10社に導入いただいています。

少子高齢化が進む日本では、インフラは新設するよりも今あるものを守っていく時代に入っています。現在、高所作業車などで定期点検を行っていますが、いずれは、ドローンなどを活用して撮影した映像をAIで解析し、劣化箇所を特定するなど、IT化、DX化が進んでいくでしょう。そのためにも、劣化した箇所の修復を透明に仕上げるということが業界としても急がれる課題だと考えています。

生まれ故郷で起業、さまざまなカタチで地元を応援

――このような技術を開発するきっかけは何だったのでしょうか。

山本社長 横浜の外車ディーラーで品質管理の仕事をしていましたが、生まれ故郷の山口県宇部市に戻ってきてから5年間ほど建設現場の足場組みに携わりました。そのとき、新築からわずか3~4年の家の外壁が変色してリフォームが必要になっていたことに驚きました。なぜそうなってしまうのかと塗装業界の方に聞いたところ、完成後の外壁のメンテナンスのことはあまり考えられていないからじゃないかと聞いたのです。

調べてみると、建物の寿命はアメリカでは50年、イギリスでは90年とのことでした。それにもかかわらず、日本はたった26年です。これはおかしいと思い、27歳でイギリスに渡って住宅事情や建築構造物について独自で学び、そこで、住宅をメンテナンスするための接着剤を扱う会社と出会いました。その後、ビジネスコンテストで入賞したことがきっかけで、その会社と取り引きができるようになり、技術開発や現在の事業を進めていくことができました。

――1997年に創業されるとき、なぜ故郷の山口県を選んだのですか。

山本社長 幼少時に、父親が経営していた会社が連鎖倒産に遭い、家族で関東に移り住んだのですが、山口県での裕福だった生活全てが取り上げられたという感覚に陥りました。そのため、自分が社会に出たときには失ったもの全てを取り戻したいという思いがあり、どうせやるなら山口県でと単身、山口県に戻って事業を興しました。

――会社が成長し、地元でさまざまなサポート活動をされていますね。

山本社長 事業を立ち上げたとき、真っ先に当社を採用してくださったのは、山口県のお客様でした。会社が成長した今、山口県に対する思いとしては、感謝の気持ちしかありません。その感謝を山口県にお返ししていきたいと思っています。創業メンバーもほとんどが山口県出身ということもあり、山口県への思いはとても強く持っています。

現在、地域を盛り上げるために、女子フットサルのチームやバトントワリングなどのスポンサーをしています。バトントワリングでは世界で3位になったり、国内でも毎年のように上位入賞したりする選手がでるようになりましたから、応援し甲斐があります。

また、2年ほど前に中心市街地に唯一あったスーパーマーケットが撤退してしまったときには、そのビルを買い取り、スーパーマーケットを誘致しました。そのときも、喜びの手紙をいただいたり、会社にもお礼の連絡を多数いただいたりしました。これからも、雇用の確保やイベントの協賛などで支援していこうと考えています。

会社が大きくなると、本社を東京に移す企業も多くありますが、創業した地をその創業者が大事にすることによって、地域がその企業を応援してくれるようになります。それがいい循環となって、起業しようとする人も増え、その結果、地方創生になるのであれば、創業者の創業の地に対する責任はとても大きいのではないでしょうか。

全国展開し、全国の橋のカルテを作りたい

――全国に拠点を置いて事業地域の拡大を目指されていますね。

山本社長 はい。コロナ禍で足踏みしましたが、「列島リフォーム🄬」というテーマを掲げ、2024年6月までに、全国47都道府県でホームメーキャップを展開できるように50拠点の実現を目指しています。

我々がメインターゲットにしているトンネルを含めた道路橋は、人口の有無に関わらず、日本全国につながっています。どこかに出かけようとすれば道路や鉄道を必ず使いますから、全国津々浦々に支店を設け、日本全国の道路橋すべてをカバーすることで、多くの方々に安心・安全を提供していきたいと考えています。

全国に支店を展開するのであれば、経営者の意識と知識を持った社員の存在は欠かせません。そこで、当社では「社長選挙」を行っています。推薦人4名を立てると立候補できるのですが、今後、会社をどうしていきたいか、どうすべきかをプレゼンテーションし、全社員に投票してもらいます。

四半期ごとに選挙を行い、立候補する人数が増えれば、切磋琢磨するライバルも増えますから、選挙を通じて会社の様々な課題を知り、成長する方法も道筋も明らかになっていくでしょう。その結果、とてもいい2代目社長が誕生するはずです。2代目社長が誕生するのは、まだ数年先ですが(笑)。

――ユニークな人材教育ですね。採用にも波及効果がありそうです。

山本社長 それもねらいです。我々の業界は多分AIやロボットにとって代わる最後の産業だと思います。きつくて大変な仕事ですが、社会に必要とされる重要なこの業界で社長になるチャンスがあることをしっかり示し、気概を持った人が入社してくれることを大いに期待しています。

今後はリフォームにとどまらず、新しいことにも積極的に挑戦していくつもりです。実は、日本にある道路橋の半分には名前がありません。そのすべてを管理するのはとても大変なことですが、QRコードなどを活用すれば、どんな点検を誰がいつどのように行ったのかという過程とその状況写真を、現地で確認することも可能になります。名もない橋すべてにQRコードが付き、しっかりと点検・メンテナンスした履歴を一つのカルテにまとめていく。多くの人の安心・安全な生活のために、日本全国で広めていきたいと思っています。

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