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【岐阜県】「すべてが100円!」にこだわり続けるセリア 老舗100円ショップの効率的な仕組みと熱い思い

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年2月10日に掲載した記事の再掲載です。

株式会社セリア
経営企画室室長 河合規雄

「すべてが100円!」にこだわり続けるセリア
老舗100円ショップの効率的な仕組みと熱い思い
―岐阜県― 株式会社セリア

何でも100円で揃う100円ショップは多くの方にとっていまや不可欠な存在となっています。岐阜県を本拠とするセリアはそんな100円ショップの老舗。現在、全国に1,800を超える店舗を展開し、各地で人々の暮らしを支えてくれています。そんなセリアがどのように商品を開発し、効率的な経営を行っているのかについて、経営企画室室長の河合規雄さんへインタビュー。知られざる100円ショップの秘密について紐解いていきます。

時流に則して品揃えを新鮮に

――セリアのお店には常に膨大な商品が並べられていますね。一体、どれくらいの商品数を販売しているのでしょう? また、新商品はどれくらいの点数、ペースでリリースされるのでしょうか?

河合室長 そうですね、常時2万アイテムほど販売しています。お客様に飽きられないためにも、毎月500~700アイテムの新商品をリリースし入れ替えることで、常に新しい発見があるお店になるよう取り組んでいます。

――商品の中にはセリアでしか買えないものも多いと聞いています。こうした点もセリアの魅力となっていますよね。

河合室長 当社が扱う商品のおよそ9割はメーカーさんとの共同開発になるんです。商品の導入を進める際、仕様やデザインなど当社の要望を反映してもらえますし、メーカーさんにとっても採用率が高くなるため双方にとって効率的だと思います。また、当社からアイデアを持ち出した商品の一部や、販売力がありお客様の評価が高い商品は、当社の専用商品やプライベートブランド商品になります。これらおよそ4割が当社でしか販売していない商品になります。

――セリアでは時流に則した商品をタイミングよく買えるといった印象があります。たとえばここ1、2年、コロナ禍において売れ行きが好調な商品にはどのようなものがありますか?

河合室長 たとえばウイルス対策グッズでしょうか。マスクやアルコール除菌のウェットティッシュなどですね。そのほか、おうち時間が増えたことで清掃用品や収納用品などの需要が一時高まっているのを感じました。そのときどきでお客様のニーズに応えられるお店でありたいという思いは強く、時流を捉えた品揃えには非常に注力しているんです。

――コロナによって高まるニーズとは別に、なにか意外な商品が売れているという事実はありますか? セリアの品揃えはかゆいところに手が届くという印象が強く、ユニークな商品展開も特徴的ですよね。

河合室長 いろいろありますがユニークなところでは、ミニチュアグッズですね。ミニチュアグッズは、SNS映えするような本物志向の商品のため、思い思いの世界観がつくれることから人気が高まったと思います。そのほか、最近話題のキャンプ関連の商品も手掛けています。火起こしができる道具や焚き火台などマニアックな商品なども扱っています。私も一消費者として当社の商品を使うことがありますが、嬉しい品揃えです。

――そのような商品は事前に売れ行きを予測することがなかなか難しいと思いますが、どのようなプロセスによって販売開始に至ったのでしょう?

河合室長 確かに全く販売したことがない商品は、どれくらい売れるかは見当がつきませんね。ミニチュアグッズの場合は、単に市場で人気があるから始めたというわけではありません。当社は、顧客層拡大を狙いとした商品開発を行っており、これまでに”ヲタ活”を好むお客様層に向けて商品開発を強化してきました。認知度が高まった今なら、支持があるのではないかと考えたからです。お客様の需要があるか仮説を立て、販売によって検証するサイクルを繰り返すことを全商品に対して行っています。

業界初のPOS導入がセリアの成長エンジンに

――1985年の創業から現在まで、成長のターニングポイントになった出来事とタイミングについて教えてください。

河合室長 背景としては、1985年にプラザ合意が発表され、これにより円高が急激に進むことで中国からの仕入れが安くなりましたが、1997年のアジア通貨危機からは円安に傾き、同業他社が数百社から10数社まで淘汰されました。このような流れを受けて当社は生き残りを懸け、2004年に業界初となるPOSシステムを導入しています。2006年にはPOSのデータに独自のアルゴリズムを組み合わせた発注支援システムを稼働し、データ活用を推進したことが一番のターニングポイントだったと思います。

本来、100円の商品展開にPOSなんて必要ないというのが業界の常識でしたが、当社は真逆の発想で、POSによって商品をきちんと単品管理ができていないと、この業態は厳しくなっていくという見立てがありました。この判断は正しかったですね。

――POSの運用については社外秘の部分も多いと思いますが、基本的な商品管理におけるセリアのスタンスについて教えてください。

河合室長 販売価格が100円で固定されていますので、需要がどうなっているかを正確につかむべく、店舗ごとにどの商品がどのような売れ方をしているか、そして店舗の発注や在庫がどのような状態かを常に把握しておくことが大切だと考えています。ですからPOSが必要不可欠なんです。

全国共通で売れる商品もあれば、地域や店舗立地などの特性で売れ行きが変わる商品もあります。POSによってこうした特性を理解し、発注支援システムによって、そのお店で発注すべき商品を順位付けし、お店はその指示通りに発注していけば、売れる確率の高い品揃えがスピーディに実現できるということになります。

100円グッズで社会に貢献!

――セリアの企業理念を見ると「心もお店もクリーンであること」という文言がありとても印象的です。ここで打ち出されている「クリーン」とはどのような意味なのでしょうか?

河合室長 当社の社名と深い関わりがありますね。当社の社名「セリア(Seria)」はイタリア語で「まじめな」という意味で、経営理念である「クリーン、感謝、共有」を集約したものです。「クリーン」には、誠実、正直、フェア、オープン、清潔であることを心がけるという意味があります。

なぜこうした社名や「クリーン」という言葉が生まれたかというと背景のひとつに、100円の商品に対するお客様のイメージが関係しています。当時は100円の商品なんて安かろう、悪かろうという考えをお持ちのお客様も多かったのですが、当社はこうした状況を何とか払拭したいという強い思いがありました。

そのため、ブランドプロミス「Color the days 日常を彩る。」を掲げ、明るく清潔でゆとりある空間で、心地よく買い物ができる店舗づくりにこだわり、まじめに価値ある商品を提供し続けられるよう取り組んでいます。

――創業から現在まで、変わらず岐阜県大垣市を本拠地としていますね。東海地区の店舗数が多く、この地域に根ざした企業という印象も強いです。岐阜県とのつながりを示すユニークな活動があれば教えてください。

河合室長 規模としては大きくないのですが、岐阜県の大垣警察署と犯罪防犯グッズの共同開発を進めています。昨年末には同署と連携して、防犯・防災・交通事故防止をテーマに防犯ブザーや夜間歩行の反射グッズ、転倒防止グッズなどのコーナー展開を行いました。100円で手軽に買える商品によって犯罪や交通事故から身を守ることができるという意味で、当社としても良い取り組みだったと感じています。

――なるほど、ユニークな取り組みですね。そのほか、社会貢献という観点から開発された商品などはいくつもあるのでしょうか?

河合室長 学研キッズネットさんとのコラボレーションで、夏休みの自由研究をテーマとした企画「なぜなに科学工作チャレンジ」を2011年から展開しています。実験レシピを提案いただき、実験で使用する商品を店舗の特設コーナーで展開しています。子どもたちの興味関心、自発的に学ぶという気持ちを応援していきたいという思いからスタートしたプロジェクトなんです。

100円であることにこだわる

――同業他社の中には100円にこだわらず、200円、300円と価格帯の異なるラインアップを積極的に展開する企業も出てきています。セリアは100円という価格にどれだけこだわっているのでしょうか?

河合室長 やはりこれまで当社の成長を支えてきたのは、すべてが100円というわかりやすさと安心感が大きいと感じています。ですから100円という価格には当然、強いこだわりを持っています。もし、100円以外の商品があったとしても価格に見合う価値があればお客様は喜ばれると思います。一方では、一品一品の価格を確認することになりますし、100円だと思ってレジに行くと実は200円であったということがでてくるのは、本意ではありません。

当社が行うべきは、お客様にわかりやすい価格で価値ある商品を提供し続けること。また、他社さんが100円以外の商品を販売している中で、当社はあくまですべて100円で販売するということが、お客様にとっても使い分ける機会になると思います。

――そもそも100円で商品を提供し続けることは非常に難しいことでもあると思うのですが、なぜ100円で商品を販売できるのでしょうか?

河合室長 ひとつは商品の仕入れが全て買い取りであることです。売れ残った在庫を返品すれば、そのリスクに備える分、仕入価格は高くなってしまいますが、買い取りであればこのリスクがないため、価格が抑えられます。あとは、広告宣伝費がかからないことです。価格訴求のため、チラシなど利用する企業は多いと思いますが、当社は価格に関する広告宣伝をする必要がありません。店頭で価格表示をすることも差し替えることも不要なところもコストが抑えられる理由のひとつですね。

100円からできるサステナビリティ

――2022年は新市場区分によって証券市場が大きく変わる一年でもあります。最後に、新市場区分を土台にどのような成長を目指しているかについて教えてください。

河合室長 新市場区分になるということで、あらためてコーポレート・ガバナンスについて深く考察したうえで強く感じているのは、サステナビリティの分野でどう社会に貢献していくかということです。

お客様、取引先、株主、社員、そして社会とすべてのステークホルダーに対して、持続可能な社会の実現のために有効な取り組みを明文化し、行動していくことが非常に重要だと感じています。具体的な施策はこれからになりますが、当社らしく、まじめに持続可能な社会にコミットし続けていきたいと思います。

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