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「投資のヒント」

「人的資本経営」への変革を期待する ~ESGニュース 気になるトピック(6月)~

提供元:三井住友トラスト・アセットマネジメント

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3月決算企業の業績発表ピークを迎えた5月13日に、経済産業省から「人材版伊藤レポート2.0」が公表されました。これは、2020年9月の「人材版伊藤レポート」の後継にあたるものです。これらレポートでは「企業価値向上のためには、ビジネスモデル、経営戦略と人材戦略が連動していることが不可欠である」と指摘しています。今回は、日本企業の抱える「人材」に関する課題とその取り組みについて考えます。

◆人材戦略と男女間賃金格差(ジェンダー・ペイ・ギャップ)の開示を求める

1つ目の課題は、組織の人材構成です。1990年代後半から2000年代前半頃、産業構造の急激な変化の影響で日本企業は新卒採用の抑制と賃上げ凍結などで業績を維持させ、のちに業績回復を果たしました。しかし本来こうした短期的な施策を長期にわたって継続した企業では、現在、少子高齢化と相まって持続的な企業価値向上のための人材確保と育成が困難な状況となっています。いびつな人材構成や人材投資の抑制によって活力が失われており、危機感を抱く企業などでは中途採用の増加や人材投資の回復を進める動きが見られています。

2つ目は、個人のキャリア観の変化に人事戦略が追い付いていないという点です。中途採用が徐々に増えているとはいえ、依然として終身雇用や年功序列など「日本型雇用システム」を前提とした賃金体系や退職金制度が採用されています。優秀な人材の確保という観点からも、新卒・中途採用などそれぞれのニーズに応じた報酬体系の導入や弾力的な運用が求められます。また、賃金のみに留まらない福利厚生や働き方改革の推進も課題となっています。

3つ目は、男女間格差(ジェンダー・ギャップ)問題です。世界経済フォーラム(WEF)の世界男女格差指数ランキング(2021年)では、調査対象156カ国中、日本は120位と先進国中ではダントツの最下位、アジア諸国の中でもかなりの低位です。特に政治と経済分野が低水準で、経済分野では女性の管理職比率が低く(14.7%)、パートタイム職比率が高いこと(男性の2倍)から、女性の平均所得が男性よりも低く、賃金格差はG7(主要先進国)中で最大となっています。

2021年6月の「コーポレートガバナンス・コード」の改訂では、先のレポートが反映され、多様性の確保(女性・外国人・中途採用者)への考え方と計測可能な目標の設定、企業価値向上に向けた人材育成・社内環境整備方針の開示、人的資本への投資に関する具体的な情報の開示などが盛り込まれました。後継のレポートでは、経営戦略と人材戦略が連動することの必要性を説き、コーポレートガバナンス・コード改訂時と同様に、当レポートが変革のきっかけとなることを期待するとしています。

政府もこの考え方を後押ししており、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループでは有価証券報告書の開示項目に、人材育成方針や女性管理職比率、男女間賃金格差を追加することを決定しました。早ければ年内にも施行される予定です。男女間賃金格差が開示されることで、格差解消に取り組む企業の動きが加速するかもしれません。既にこうした女性活躍の取り組みを先取りしている企業もあります。ある大手通信会社は男女間賃金格差の社内調査結果を公表し、等級構成に起因する男女差は残るものの、女性活躍推進の取り組みを進めるとしています。

現在、日本企業には「人材」に関する課題が多くある一方で、今後は課題解消への動きが急速に進む方向にあるとも言えます。こうした課題への対応について、単なる情報開示に留めるのではなく、自社の経営戦略と整合した人材戦略の提示と、具体的な行動計画の策定を通じて、企業価値向上に向けた取り組みが進むと期待されます。

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