東証市場再編

全国上場会社の旅

【東京都】多忙な中でも、よりよい食生活を。 プレミアムな食品宅配を核に、社会課題を解決する

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年3月8日に掲載した記事の再掲載です。

オイシックス・ラ・大地株式会社
IR部部長 梅村翔也

多忙な中でも、よりよい食生活を。
プレミアムな食品宅配を核に、社会課題を解決する
―東京都― オイシックス・ラ・大地株式会社

家族の好み、体調、栄養のバランス、さらには冷蔵庫の中身とも相談して献立を決め、足りないものを買いに行き、見定めて選んだ食材を、新鮮なうちに使い切る。複雑な方程式を解くような家庭料理を毎日続ける大変さは、経験した誰もが認めるところでしょう。共働き世帯が増えている現在 、そうした負担を和らげるサービスとして伸長を続ける食材宅配の分野で、「Oisix(オイシックス)」「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」の3ブランドを展開するオイシックス・ラ・大地株式会社(東京都品川区)は、有機・低農薬野菜やミールキットなどの安全性に配慮した商品構成で支持を広げています。生産者と生活者を取り持つビジネスや、その中で目指す社会課題の解決について、同社のIR部部長を務める梅村翔也さんに伺いました。

元同業の3ブランドが、多様な「コト」ニーズに対応

――元同業の3ブランドが、多様な「コト」ニーズに対応

梅村部長 はい。当社は有機・低農薬野菜などの安全な食材やミールキットなどを主体に、ネットで注文できる定期宅配サービスを、Oisix・大地を守る会・らでぃっしゅぼーやという3つのブランドで展開しています。

販売ノウハウの共有や仕入れなどで協力する一方、商品開発や営業活動については、ブランドごとで独自に行っています。これは、もともと別会社*ということもありますが、商品としては有機・低農薬という近しい商品を扱う各ブランドですが、それぞれ異なるお客さまの「コト」へのニーズに応えているためでもあります。

*・・・2000年設立のオイシックス株式会社が、2017年10月に大地を守る会と経営統合。2018年2月、らでぃっしゅぼーやの運営会社と経営統合したのち、同年7月に現社名に変更

――各ブランドには、どういった違いがあるのですか。

梅村部長 例えば、全社の売上の過半数を占めるOisixは、20~40代の子育て世代が主なお客様です。特に「妊娠・出産を機に、安心安全な離乳食の食材を求めてご利用いただき、その後、お仕事に復帰される際には仕事にお忙しい一方、家族にはちゃんとしたものを食べてもらいたいというニーズから主菜と副菜が20分で作れるミールキット「Kit Oisix」を中心にご購入いただいています。
3ブランドで最も早い1975年に創業した大地を守る会のお客様は50代後半以降のシニア層が主体で、体調不良を感じたのをきっかけに健康的な食生活を意識された結果、大地を守る会のサービスを利用いただいている方が比較的多いのが特徴です。そのため惣菜などの加工品についても、野菜をたっぷり入れて調理できるメインおかずや、豆や海藻がしっかり取れる「あと一品」の副菜類などを充実させています。

らでぃっしゅぼーやの会員は40~50代が中心で、だしもご自身で取るなど日頃から料理に積極的な方が、より調理スキルを上げたいというニーズや、スーパーでは見ない珍しい食材をお求めになるシーンで選ばれています。また、環境問題や社会貢献に対する意識が高いお客様も多く、規格外の農産・水産品、またそれらを活用した惣菜などを提供するコース「ふぞろいRadish」が好評を得ています。

――ライフステージ・ライフスタイルに合わせて「コト」へのニーズが変わるのがよく分かります。野菜のイメージが強かったですが、それ以外の品ぞろえも充実していますね。

梅村部長 全体に占める野菜の売上は、現在3割ほどです。他の食材では肉と魚が1割ずつ、また惣菜やミールキットといった調理・加工した商品が4割に達しています。残る1割は非食品分野で、調理器具、生活雑貨のほか、衣料品や家電などもご購入いただいています。

実は、当社のお客様の9割以上は女性です。Oisixのお客様にサービス利用の背景や理由についてヒアリングすると、時短をしたいという手軽さのニーズはもちろんですが、それに加えて「家族に手抜きと思われたくない」という声が、非常に多く寄せられました。そのため、ミールキットにおいても、時短という提供価値だけではなく、罪悪感を感じず、誇らしく感じていただける「プレミアムな時短」をコンセプトにして商品開発を進めています。

私たちは自社開発の強みを生かし、「ご自宅できちんと料理した実感」を得られるのはもちろん、野菜がしっかり取れるメニュー、また多彩なブランドとのコラボ企画や、”映える”彩りといった趣向も交え、日々の食卓に変化や楽しさをお届けすることにも力を入れています。

便利で安心、フードロスも少ないサブスク型の強み

――生活者の声にきめ細かく応える食の宅配事業ですが、近年注目されている持続可能性の観点からも、合理的なビジネスモデルと伺いました。

梅村部長 はい。私たちは、上流から下流までサプライチェーン全体でフードロスを抑える「サステナブルリテール(持続可能型小売業)」を体現していきたいと考えています。


まず仕入れ段階では、当社は全国4,000軒の生産者の方々と直接契約しています。私たちの主な販売先は定期契約しているお客さまなので先々の需要 について大まかに予測できるため、実際に仕入れる3~6カ月前には量と金額をお約束して、その後も随時連絡をいただけるようにしています。想定外の豊作などで、品質に問題ない作物が産地で廃棄されそうな場合はすぐ情報が入るため、お客様にお勧めしたり、加工品に活用したりといった方法で、商品として生かす工夫をしています。

また流通段階については、当社で現在生じているフードロスの割合が約0.2%と、店舗型の食品小売業の一般的な水準(5~10%)を大幅に下回る水準を達成しています。これは前述の通り、”サブスクモデル”の事業であるため、需給の見通しが立ちやすく余分な仕入れが発生しづらいこと、またお客さまへの商品レコメンドやECサイトでの販促などによって、仕入れた商品を「売り切る」力を磨いてきた成果でもあります。今後、さらに生産者と食卓の間に立ち、需給のマッチング精度を高めていくことが重要と考えております。そのためには、当社のお客さまの購買動向データを活かして、よりお客様一人ひとりにあった商品提案をしていくこと、生産者とは、より高いニーズが見込める新しい商品開発に一緒に取り組むこともしていきます。

さらに消費段階については、Kit Oisixなどの使い切り商品を積極的にご活用いただくことで、家庭の食材廃棄量を最大3分の1まで削減できます。このほか、食材の非食用とされてきた部分を商品化する「Upcycle by Oisix」というブランドも進めています。加工を工夫しておいしく食べられる部分は意外に多く、「バナナ を皮ごと使ったジャム」「梅酒を漬けた後の果肉入りシュトレン(焼き菓子) 」「ナスのへたのスナック」など、想定以上の好評をいただいています。
――食品スーパーをはじめとする小売業界とも協業されているそうですね。

梅村部長 Oisixで販売する旬の野菜などを、食品スーパーの専用コーナーでお取り扱いいただく「Shop in Shop」はスタートから間もなく10年となり、全国の都市部を中心に300店舗超、年商10億円規模となっています。

食品スーパーにとって有機・低農薬野菜などの高付加価値な食材は、一定の需要が見込める半面、自前で十分な品数を確保して採算を取るハードルが高い商品でもあります。そこで、売場の一部を私たちにお任せいただき、ミールキットをはじめ、食品宅配サービスのお客様と共通のものを数十アイテム取りそろえています。お取り扱い店舗や来店された方には選択肢が増えるメリットがあり、私たちにとっても、食品宅配サービスを使ったことがない方々に当社ブランドを知っていただく重要な接点になっています。

そのほか、移動スーパー事業の「とくし丸」(2016年に株式会社とくし丸を子会社化)も、移動販売車に商品供給する各地の食品スーパー と提携し、拡大を続けています。買い物難民と聞くと、ご自宅近くに店がなく、遠出もしづらい山間部や過疎地のご高齢の方々をイメージされますが、実は都市部にも買い物に困っていらっしゃる方が多く、サービスは47都道府県全てで行っています。一方で現状のとくし丸の規模においても買い物難民の方の全てをカバーするにはまだまだ至っていませんので、今後も伸ばす余地の大きい事業とみています。

福島工場と富久山事業センターでは、子ども科学教室を開催しています。小中学生に環境問題や科学への関心を持ってもらいたいという思いから、それぞれの事業所が自発的に始めたものです。

――海外での事業展開についてもお聞かせください。

梅村部長 全社売上の約1割に達する当社の海外事業売上の中で大きいのは、2019年に子会社化した、米国のヴィーガン(完全菜食主義者)向けミールキット販売会社「Purple Carrot(パープルキャロット)」の事業です。 もともとは、野菜の傷みなど品質管理の点で日本と比べてお客さまからのクレームが多かったのですが、当社が培ってきた日本の品質管理ノウハウを横展開し、クレーム率を大きく下げることができました。また、Oisixの販売サイト内に設けたPurple Carrotブランドのミールキットの 売れ行きも好調です。代替肉などが普及しつつある国内のヴィーガン市場は、欧米に比べまだまだ小さいですが、今後大きな成長ポテンシャルがあると考えています。Purple Carrotを通じてアメリカでのトレンドをキャッチしながら、日本におけるサステナブルな消費文化という面においても、情報発信や商品開発に力を入れていくつもりです。

定期的な食品宅配があまり一般的でなかった香港と上海では、Oisixブランドを通じて、日本からの赴任でお住まいのご家庭に加え、現地の方々にも「生食できる卵」といった日本産ならではの品質をアピールして普及を進めています。

新たな課題に答え続けることが企業成長の原動力

――お話を通じて、時代の変化が絶えず食卓に反映しているのをあらためて感じます。

梅村部長 私たちは「食に関する社会課題を、ビジネスの手法で解決」することを企業理念に掲げています。
その時々の食にまつわる問題を素早くとらえ、解決法を探ってきたことは、会社の歴史にも現れていると思います。

例えば、2011年の東日本大震災の発生後は、原発事故の風評被害を受けた地方の商品を販売強化するとともに、民間の小売事業者で初となる全品対象の流通前放射能検査をスタートさせました。食の安心・安全を求めるニーズに応えた結果、この時期に会員数と売上を大きく伸ばし、2013年のマザーズ上場にもつながりました。

――直近のコロナ禍では、どのような課題解決に取り組まれましたか。

梅村部長 コロナ禍においても、お客様の食に対するニーズは一括りにできるものではなく、それぞれに合わせた取り組みを進めました。例えば、最初の感染拡大時には、外出控えによる宅配需要の急増により、まずは安定的に出荷することを優先的に対応しました。また、米や水、調味料など長期保存できる商品などの注文急増にも対応しました。

その後は、外食が難しくなったためにご自宅での”晴れの日ニーズ”が高まったことで、人気店の味を楽しめる宅配商品「Oisixおうちレストラン」のサービスをスタートし、商品だけではなく、メニュー表や調理器具などもセットにして”ご自宅でお店気分”を盛り上げました。また、事態の長期化につれて活発になった「応援消費」の動きで、当社では一斉休校で余剰となった牛乳の割引販売や、日本酒の需要減によって生じた余剰米を材料にした「酒米リゾット」の販売など様々な応援販売を行いました。

さらに、在宅勤務が増えた影響から、ご自宅で手軽に作れる朝食・昼食の需要も高まり、冷凍食品などのラインアップを拡充しました。その結果、主に平日の夕食の食材向けにサービスを展開していましたが、私たちにとっては様々な食シーンに”守備範囲”を広げることもトライしています。
――お客様の暮らしに、いっそう欠かせない存在となったのですね。

梅村部長 はい。事業内容や企業規模の点から、私たちは「食のインフラ」として、安定的なサービス供給に対する責任が非常に大きいと考えています。

今後のさらなる成長を見据え今年1月には当初予定を前倒しして物流センターの移転を実施しましたが、移転時のトラブルにより多くのお客さまにご迷惑をおかけしました。もちろんお客さまから多くの叱責のお声もいただきました。一方で、これまでと変わらずにご注文をいただいているお客さまの存在や、激励の言葉などにも触れ、心からの感謝をするとともに、改めて「食のインフラ」としての責任の大きさというものを強く感じております。

お客さまが感じていらっしゃる食の社会課題にいち早く、臨機応変に取り組み続ける「創業者マインド」は守りながら、いっそう高まるご期待に応える組織へ成長できるよう、引き続き全社で力を合わせていくつもりです。

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