東証市場再編

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【鳥取県】”いいセンサ”で鳥取から世界へ。 ここにも、そこにも、便利製品の中で大活躍!

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年1月26日に掲載した記事の再掲載です。

日本セラミック株式会社
経営企画室IR担当者

“いいセンサ”で鳥取から世界へ。
ここにも、そこにも、便利製品の中で大活躍!
―鳥取県― 日本セラミック株式会社

日本セラミック株式会社の創業は、リモコン創世記の1975年。当初から各種センサを開発・製造、その確かな技術力で生み出された超音波センサが、大手電機メーカーの新型テレビのリモコンに採用されました。それから40余年を経て、海外売上がほぼ5割と、世界から製品を求められるグローバル企業に成長しました。センサ一筋の道のりと未来について、経営企画室IR担当者の皆様に伺いました。

もはやセンサなくして日常生活は成り立たない

――センサは、私たちの生活に欠かせないと言われていますが、実際に、どんなところで使われているのでしょうか。

当社では、赤外線センサ、超音波センサ、電流センサといったセンサ単品に加え、お客様が使いやすいように回路などを取りつけたモジュールセンサ製品を製造しています。

まず、赤外線センサは家電や防犯に多く使われています。例えば、電子レンジは常温のものと冷凍のものを同時に入れても、均等に温めることができます。これは、赤外線センサによって非接触で食品の表面温度を判別しながら温めているからです。ターンテーブルで食品を回すと温度むらが発生するので、高性能の電子レンジはターンテーブルをなくし、こうした赤外線センサ技術を活用しています。

さらに検知エリアが拡大しエアコンにも実用化されています。赤外線センサで人の居場所や床温度を検知して、風向きや温度を制御しています。

防犯には人感センサとして、侵入者を検知し警報や照明の点灯などにも使われています。最近は家族やペットの見守り用に、室内に設置するIPカメラ向けも普及してきました。

超音波センサは主に自動車向けの需要が増加しています。自動車の前後バンパーに6~12個/台のセンサが装着されており、障害物や人までの距離を検知しています。以前はドライバーに障害物などの有無を警告音で知らせていましたが、最近ではブレーキ連動が主流になっています。車内にも防犯装置に使われ、ドアをこじ開けられたり、 窓ガラスを割られたりする振動を、超音波センサが異常として検知します。

――電流センサも自動車で使われているんですよね?

当社の電流センサは、主にEV車(電気自動車)・PHV(プラグインハイブリッド自動車)で使われています。EV車だと1台につき電流センサを3カ所に設置するのが標準とされています。

1つ目は、モーターをインバーター制御する際に電流値を監視するセンサで、2つ目はバッテリーから出力される電流値を計測するセンサ。3つ目は、充電量を監視する役割を担っているセンサです。

電気自動車の課題は1回の充電に伴う走行距離ですが、高精度なセンサを利用することによりバッテリーの残量マージンを軽減し、走行距離を延ばす役割もあります。

今後の自動車業界は電動化が増えていくため、電流センサの生産体制増強などの投資を行っており、シェアを伸ばしていきたいと考えています。

――競合他社と比較すると、御社の強みは何でしょうか?

当社はセンサの材料開発から生産ライン構築、生産まで一貫で行っております。お客様と製品仕様の打ち合わせをする段階から、生産ラインの構築をスタートさせることによって、お客様の要望通りのカスタマイズ製品を生産する体制を速やかに整えられるよう心がけています。

鳥取県のグローバル企業として

――創業者である谷口義晴氏の故郷は兵庫ですが、なぜ、鳥取県で創業したのでしょうか。
先代は、技術者として鳥取市内にあった電子部品メーカーに勤務していました。当時働いていた会社のオーナーチェンジなどがあり、「よい技術者であるなら、会社を辞めても飯が食えるだろう」と上司に言われ、元部下だった技術者4人とともに自宅のガレージで起業しました。

創業当初はこれまでの経験を基に、しかし前の会社の競合にならない製品の開発を目指しましたが、購入したい設備費や材料費がかかるのに銀行が融資をしてくれないので、貯金を取り崩しながら、スクラップ屋さんから材料を安く分けてもらって、セラミックを成型するプレスや焼成する電気炉などを徹夜で作成しました。

そのようにして自作した設備で超音波センサを生産したところ、テレビ用のリモコンに採用されてヒット商品となりました。しかし、それ以降は新規開拓しようにも、会社の規模が小さかったためなかなか相手にされず、どれだけいい製品を作っても製品を見てもらえない、営業すらできないという苦労が数年続きました。

そこで、海外であれば会社の規模はともかく製品を評価してくれるだろうと、超音波センサや赤外線センサなどを携えてアメリカへ渡ったところ、セキュリティ市場のお客様から「精度は2倍で価格は半分。圧倒的に誤作動が少ない」と認められ、当時、世界最大の商社と契約を結ぶことができました。起業から3年目のことです。その後、その評判を聞きつけた国内セキュリティ企業からも問い合わせがくるようになり、急速に認知度が高まりました。

――鳥取から、まず世界へ、そして、日本へ進出したということなのですね。

全ての基点である鳥取県は当社にとっては特別な場所です。現在、海外の営業拠点を欧州と米国、香港におき、防犯用の赤外線センサでは国内シェア8割、海外シェア3割、そして車載用超音波センサでは国内シェア7割、世界シェア2割を確保しています。

生産拠点は海外にシフトしようと、中国とフィリピンに自社工場を展開してきましたが、現在ではもう一度、鳥取での生産割合を増加させ、人材育成などにも力を入れていきたいと思っています。

――グローバルな活動は、事業に留まらないようですね。

鳥取県は、自治体自体が中国との結びつきが強く、国を超えた新しい技術の開発に向けてタッグを組んだ活動を行っています。「とっとり出島イノベーションプロジェクト」もそのひとつで、鳥取県の産業振興機構が中心となり、県内の企業21社と進めています。

また、グローバル企業としては、例えば、海外拠点を置くフィリピンで、海岸の清掃作業や植樹祭に、従業員が参加するといった取り組みを積極的に行っています。

人にやさしく、環境にやさしい未来のために

――今後、センサの需要はさらに拡大していくとみられています。その大きな流れを肌で感じていらっしゃいますか?

昨今の脱炭素社会の影響もあり、これまで取り引きのなかった国内外の企業から、環境にやさしいEV車向けの電流センサの引き合いを多くいただいており、実際に新しい案件も動き始め、世界のEV車・PHV車に当社の製品は多く採用されていくと思います。

また、超音波センサは自動車のバンパーに装着され、ADAS(先進運転支援システム)向けの用途も増加しています。高齢者の交通事故や、アクセルとブレーキの踏み間違い事故が増えていることもあり、国内新車への搭載率が上がっています。

今後、自動駐車システムなどの装備が増加してくると1台あたりに設置されるセンサの数も増加します。自動車関連の需要が成長のカギで、期待値が高い分野です。少子高齢化は日本独自の問題ではなく、中国など海外でも進行しているため、市場のニーズは高くなっており、海外の案件獲得にもつなげていきたいと考えています。

――2009年に先進技術研究所を設立しました。創業からの「一歩先を行く」製品開発のためなのでしょうか。

もともと別の研究所がありましたが、設立から20年ほど経過する中で、IoTやEV車、自動運転と、当社を取り巻く経営環境が大きく変化してきました。今後も国際的な競争力を維持していくためには、既存事業を強化するだけでなく、新しい技術や新しいセンサの開発が不可欠であることから、先進技術開発研究所を設立しました。

現在、1つのウエハーや基盤の上に回路やセンサなど色々な機器を集積化させた「MEMS技術」などの研究を行い、それを応用したセンサや小型で高性能なデバイスの技術開発を進めています。また、当社は、技術開発型の会社なので、新しい先進技術開発研究所に最新の設備を導入することは、社員のモチベーション向上につながっています。

――今後、さらなる企業価値向上のために取り組もうとしていること何でしょうか。

各種センサの市場規模拡大と、長年注力している「生産の効率化」です。国内自動化設備の投資など、効率的に設備、製品を作れる環境を整えていく方針です。

また、プライム市場の企業として、サステナビリティを実現する社会課題解決の活動にも取り組む責任があると感じています。当社の経営理念である「真価のある製品を社会に納め人類に貢献する」に加えて、環境方針の「センサで、人にやさしく、環境にやさしく」 に基づき、環境を守り、安心・安全な暮らしを実現するセンサを提供し続け、地球と人々の暮らしに貢献したいと考えています。

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