東証市場再編

市場関係者メッセージ

新市場区分を踏まえての今後の期待

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年1月17日に掲載した記事の再掲載です。

江良明嗣
ブラックロック・ジャパン株式会社 インベストメント・スチュワードシップ部長 マネージング・ディレクター

高い競争力を有するビジネスモデルを持つ日本企業が多数上場する日本市場の魅力は依然として高いものであると考えています。一方で、世界の中における日本企業のプレゼンスは低下しつつあり、市場全体で見た場合、PBR1倍割れの株価が珍しくないことや世界の時価総額ランキングで上位に食い込む銘柄数が減少傾向にあることが周知の事実であることも直視しなければなりません。これは日本企業や投資家だけではなく、あらゆるステークホルダーにとって死活問題です。

日本企業が世界における存在感を引き上げるためには、持続的な企業価値の向上が不可欠です。そのためには、より一層の経営の高度化や実効性のあるガバナンスが重要なポイントになります。加えて、企業が長期的かつ持続的な企業価値の実現に向けた取り組みについて、投資家が正しく理解できるよう、積極的な情報開示による透明性の向上も求められます。

今回、東京証券取引所の市場区分が「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つに再編成されました。長期投資家として期待することは、原則としてどの市場に対しても変わりませんが、日本を代表する企業が集まるプライム市場に上場する企業については、国内外で長期的な価値創造を牽引する役割を担い、多くの企業の模範となる存在としてより大きな期待と責任を背負っていることは言うまでもありません。その一端は、コーポレートガバナンス・コードの改訂にも表れているのではないでしょうか。例えば、直近の改訂では、プライム市場に上場する企業に対しては、より高いガバナンス水準や気候変動に関する情報開示の強化などが求められています。

気候変動の問題は企業にとってリスクであると同時に新たな事業機会ともなり、長期的な企業価値を大きく左右するものと考えていますが、プライム市場の上場企業には、市場再編を一つの契機として、気候変動の分野にとどまらず世界を牽引する存在になるべく、前進し続けて頂きたいと考えています。そして、より多くの日本企業が長期的かつ持続的な企業価値向上への取り組みを加速することを期待しています。

江良明嗣
ブラックロック・ジャパン株式会社 インベストメント・スチュワードシップ部長 マネージング・ディレクター

インベストメント・スチュワードシップ部長として、コーポレート・ガバナンスの問題に取組む日本企業に対する株主議決権行使を担当し、株主議決権行使における方針やガイドラインを確立させる。
2011年ブラックロック・ジャパン入社。ブラックロック入社以前は、2006年より日興アセット・マネジメントにおいて、コーポレート・ガバナンス・マネジャー及びファンダメンタル株式のアナリストとして従事する。また、1999年より7年間、創業したインターネット関連企業の代表取締役社長を務める。
日本経済団体連合会(経団連)、経済産業省等のコーポレート・ガバナンスに関する様々な社外ワーキング・グループにも数多く参加。また経済産業省主導の伊藤レポート「『(持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト」にも貢献。

2002年 国際基督教大学(教養学部)卒業
2006年 慶應義塾大学大学院(経営管理研究学科)修士課程修了

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