東証市場再編

市場関係者メッセージ

東証 新市場区分スタートと今後への期待

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年2月7日に掲載した記事の再掲載です。

翁百合
株式会社日本総合研究所 理事長

本年4月より東証において新市場区分がスタートする。スタートに当たって今後の上場企業や資本市場への期待について述べたい。

新型コロナ感染症が2020年より拡大し日本経済は大きな打撃を受けたが、長期的にみても低成長が持続している。コロナ後を見据えても、欧米先進国や中国などと比較するとその成長率見通しは低水準にとどまり、DXやグリーン投資など世界の企業との競争は一層厳しくなる。上場企業の経営者は、コロナ禍の中で実現する新市場区分スタートを変革の機会ととらえ、アフターコロナに向けてDXを本格的に進めビジネスモデルを改革していくとともに、グリーン投資、人的投資など無形資産投資等に積極的に取り組んで、稼ぐ力をつけ、持続的に企業価値を上げていくことが求められる。

各上場企業経営者は、長期的な経営の在り方を検討して自ら新市場を選択している。今後は選択した各市場で期待される十分な情報開示と建設的で深い投資家との対話が求められる。また、今後の日本を牽引する新たなスタートアップの参入と成長は大いに期待される。今回グロース市場が新たにできるが、スタートアップのダイナミックな成長に必要な制度改革は間断なく進めていく必要がある。

グローバルにみると、ステークホルダー資本主義の視点から、上場企業経営者には、とりわけ社会的課題にこたえながら持続的な成長を実現することが求められている。経営者にとって、資本コストを上回る資本収益率の実現のみならず、地球環境、未来世代、従業員、地域社会といった、EやSに十分に配慮したガバナンスを備えた経営により、持続的な成長の道筋を示し、それを実現することが課題となる。特に日本の長期投資家には、様々な社会的課題に応える企業の成長を長期的にサポートする責任投資へのコミットと、効果的なエンゲージメントを期待したい。

社会的課題に応えながら持続的な企業価値向上を実現する企業に有能な人材や資金が集まり、さらに成長を後押しする資本市場に進化していくためには、市場インフラの面でもまだ多くの課題がある。たとえば人的投資、知的財産など無形資産投資と企業価値の関係をどうわかりやすく開示するか、責任投資に積極的に取り組む投資家層の厚みをどう増やしていくか、等の様々な課題について早急に検討が行われ、環境整備が進むことが期待される。

翁百合
株式会社日本総合研究所 理事長

京都大学博士(経済学)。84年慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了、日本銀行入行。日本総合研究所に移り、主席研究員などを経て2018年から現職。この間、慶應義塾大学特別招聘教授、産業再生機構産業再生委員、規制改革会議委員、未来投資会議・構造改革徹底推進会合「健康・医療・介護」会合会長、内閣官房「全世代型社会保障検討会議」構成員、内閣府「選択する未来2.0」懇談会座長、などを歴任。現在、金融審議会委員、産業構造審議会委員、内閣官房「新しい資本主義実現会議」構成員などを兼務。
主な著書に、『金融危機とプルーデンス政策』(日本経済新聞出版社)、『不安定化する国際金融システム』(NTT出版)、『国民視点の医療改革』(慶應義塾大学出版会) 等。

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