東証市場再編

全国上場会社の旅

【熊本県】電気自動車の主要部や半導体の生産に欠かせない設備を世界に供給

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年1月27日に掲載した記事の再掲載です。

平田機工株式会社
取締役常務執行役員 藤本靖博

電気自動車の主要部や半導体の生産に
欠かせない設備を世界に供給
―熊本県― 平田機工株式会社

熊本県熊本市でリヤカーなどの産業用車輌の製造・販売を目的として設立された平田機工株式会社。以来、70年にわたって、時代のニーズに応じた機械や生産設備を開発し、世に送り出してきました。現在は熊本だけでなく栃木県、滋賀県にも生産拠点を持ち、海外にも子会社9社を開設。自動車、半導体製造装置、家庭用電化製品を製造するメーカーを主な顧客とし、高度な生産設備・装置・システムを供給しています。世界で評価されている理由や熊本への想い、今後の展望を、取締役常務執行役員の藤本靖博さんにお聞きしました。

EV用ドライブユニットの組立ラインなど、自動車の電動化を支える生産設備も拡大中

――貴社が提供する生産設備によって、どのようなものがつくられているのですか。

藤本常務 まず1つ目が自動車分野です。エンジンやトランスミッションといった自動車の心臓部となる装置をつくる設備を多く手がけています。最近は、電気自動車向けの生産設備やラインも増えています。バッテリーやエレクトリックドライブユニットといった重要な部分の組立ラインを手がけたり、他にも電力を制御するパワー半導体IGBT、エアバッグを膨らませるインフレーターなども私たちの設備でつくられています。

――カーボンニュートラルを目指す潮流で世界的に自動車のEV化が進み始めています。その領域には早くから取り組んでいたのですか。

藤本常務 実は電気自動車に関する生産設備にはずいぶん前から取り組んでいました。そのような実績が評価されて、次の受注につながっています。ある電気自動車メーカーからスピンアウトされた方が、「こういう設備なら平田機工が得意だ」と新しい会社で紹介してくださるケースもあります。2021年9月には、北米の新興EVメーカーから約40億円の大型案件を受注しましたが、このお客様も私たちの実績や評判を聞かれてのことと聞いています。

半導体のウェーハをクリーンな環境で搬送するロボットもHirata製

――自動車以外では、どのようなものの生産設備を手がけていますか。

藤本常務 2つ目が半導体分野です。これは生産設備の中でも、ウェーハを投入したり、取り出したり、次の処理装置に移す搬送ロボットなど、特化した装置を担っています。その他にも、有機ELや液晶ディスプレイを製造する装置の一部も手がけています。

3つ目が、家電製品の中に搭載されているモーターなどの組立設備です。たとえばよく知られているところではダイソンさんの掃除機のモーターをつくる設備を手がけています。

――熊本には海外の半導体メーカーの生産拠点ができることも話題です。

藤本常務 はい。世界最大の半導体デバイスメーカーである台湾積体電路製造(TSMC)の工場進出予定地は、私たちの本社の近くです。TSMCさんでお使いの半導体生産設備にも私たち平田機工の装置が搭載されています。地域性を生かして積極的にアプローチしていきたいと考えています。

エンジニアリングも、設備の開発や製作も、一貫して自分たちでやることで獲得してきたもの

――開発から、生産の立ち上げ、保守まで、すべてのプロセスを自社で行う一貫体制を特長とされています。そこからは、どんな強みが生まれていますか。

藤本常務 まずは品質です。非常に高い品質が求められる設備なので、すべてに自分たちが関与することで、求められる品質を実現しています。世の中にまだ存在しない設備やラインをつくることも多く、それはつまり、部品からソフトウェアまで自分たちでつくらなければならないということ。エンジニアリングだけをやる会社、部品だけをつくる会社は多くありますが、どちらもやる会社は少ない。設計するだけでなく、つくり上げて品質の保証までできるのが私たちの強みだと思います。途中で諦めず、やり抜くことによってお客様からの信頼を得ることができているのだと思います。

――そのほかに平田機工の強みだとお考えのことはありますか。

藤本常務 いちばん長い工場は200メートル以上あり、そこでお客様の生産ラインを実際に組み上げて検査することができます。また、有機EL関連の設備で必要になる大型の工作機械を数多く保有しています。そのような規模も他社にはなかなかできない当社の強みだと思っています。

1981年から東京に置いていた本社
熊本に戻すことを決断したきっかけとは

――東京に移していた本社を、2016年に熊本に再移転した経緯を教えてください。

藤本常務 日本の九州という南の島の会社だと話しても、海外営業の際に知名度の低さで信頼していただけない時代がありました。そこでメインの生産拠点は熊本のまま、本社を1981年に東京に移して、東京の会社として営業活動をしてきました。以降、多くの海外企業と取引ができるようになって当初の目的は達成されました。そして、今度は業務の効率化を図るため、いずれは熊本に本社を戻すことを考えていました。

実際に再移転する契機となったのは、2016年の熊本地震です。大きな被害を受けた故郷を見て、こんなときだからこそ育ててもらった熊本に恩返しをしようと、本社を熊本に戻すことを決断しました。ただ、地震後の混乱の中ですから、社内では熊本への本社移転はリスクが大きいと反対の声もありました。何よりも、株主がどんな反応をするか心配でした。しかし、いざ株主総会で社長が熊本に本社を移転する、そのことで熊本に恩返しをしたいと説明すると、株主は大きな拍手で支持してくださいました。そのとき、なぜか社長はその拍手を遮るように次の議題に移ったのです。あとからその理由を聞くと、「あのまま拍手を聞いていたら、涙が止まらなくなりそうだから」と。

――本社移転後、熊本との関わりは深まっているのですか。

藤本常務 地震で傷ついてしまった熊本城の復興に貢献しようと、株主優待制度に熊本城の復興支援への寄付の仕組みを取り入れました。また、Jリーグの「ロアッソ熊本」のメインスポンサーになり、会社を上げてチームを応援してきました。胸に「Hirata」の文字が入ったユニフォームが、サポーターのみなさんにも定着してきています。2020年の人吉市の豪雨災害のときはボランティア休暇制度をつくり、多くの社員がボランティアに参加する環境を整えました。社員の地域貢献の意識が高まっているのを感じます。

2020年、本社に隣接する新工場を設立
医療、ライフサイエンス領域にもチャレンジ

――世界40カ国で販売実績があるとのことですが、グローバル化へのきっかけはどのようなものだったのでしょうか。また、海外でビジネスを営む上で大事にしてきたことは何ですか。

藤本常務 当社がグローバルに進んだきっかけは、日本企業のお客様が海外に出られるときに、設備担当として一緒についてきてくれないかと相談されたことからでした。結果的に、先にお客様が撤退されても、現地のメンバーが頑張って新しいお客様を獲得して今に至っています。だから非常にたくましいです。その国ごとの規制をしっかり勉強して、規制に合う設備をつくることを大事にしてきました。お客様によって育てられてきたというのがいちばんだと思います。

――さらなる企業価値向上のための取り組みを教えてください。

藤本常務 事業の拡大とともに増設してきた古い工場は、ものの流れが必ずしも効率的ではありませんでした。そこで2020年、効率の良い最新の工場を本社の隣に建てました。半導体関連を中心に受注環境が良く、現在、フル稼働しています。利益率の高い保守メンテナンスも、より伸ばしていこうと考えています。

ただ、今のところ大半が受注生産の企業であり、自分たちでマーケットメイクできるビジネスではありません。そこで医療機器やライフサイエンスの分野を今後の成長領域と考えて、すい臓がんの治療ができる機器の開発などを始めています。まだ始まったばかりで、成果を上げるには至っていませんが、今後のビジネス拡大の大事な領域として位置付けています。

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