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【富山県】くすりの富山で誕生してまもなく150年 医薬品パッケージ分野の国内トップシェア企業

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年2月8日に掲載した記事の再掲載です。

朝日印刷株式会社
代表取締役社長 朝日重紀

くすりの富山で誕生してまもなく150年
医薬品パッケージ分野の国内トップシェア企業
―富山県― 朝日印刷株式会社

富山県富山市で明治5年に創業し、業歴はまもなく150年を迎える朝日印刷株式会社。「くすりの富山」という医薬品産業が盛んな環境を生かし、1950年代から医薬品の印刷包材に特化。1970年代には化粧品パッケージ分野にも進出し、さらに成長。現在は富山に5工場、京都に1工場、全国に20の支店・営業店をもち、医薬品・化粧品パッケージ分野では国内トップのシェアを占めています。その分野で圧倒的な強さを誇る理由と、今後の戦略について、代表取締役社長の朝日重紀さんにお聞きしました。

国内製薬メーカー上位100社のうち93社と直接取引

――たとえば、どんな商品に貴社の印刷包材が使われているのでしょうか。

朝日社長 多くの取引先に恵まれており、国内の製薬メーカー上位100社のうちの93社、国内の化粧品メーカー上位30社の21社と直接取引をしています。ほんの一例をあげれば、ドラックストアの薬棚にある誰もが知る風邪薬やドリンク剤のパッケージ、病院などで使用される医療用薬剤のパッケージのほか、医薬品の効能効果などが記載された添付文書、医薬品ラベルの印刷製造もおこなっています。

――この分野の印刷包材はどのような特徴があるのでしょうか。また国内トップシェアを占めている貴社の強みを教えてください。

朝日社長 薬のパッケージには大きく3つの役割があります。まず1つ目は大切な中身を守ることです。デリケートな医薬品を衝撃から守る必要があり、箱の内部で薬の入ったビンを浮かせて保持する構造のパッケージなど当社が特許を取得しているものが多くあります。2つ目は、情報を正しく伝えること。薬機法で細かく決められた方法で情報を表記する必要があり、ここにも当社の長年のノウハウと専門知識による正確さが活かされており、信頼をいただいています。3つ目は商品の顔としての役割です。当社のデザイン部門が薬のイメージをくみ取りデザインをつくります。また化粧品では高級感を出すことを求められることもあるため、それを可能にする設備と技術力も当社の強みです。この対応力と安心感が、他社には提供できない価値ではないかと考えています。

――近年は包装の機械やラインまでをトータルで提案されているとのことですが、それはなぜですか。

朝日社長 一つはパッケージの高度化です。一般的な箱であれば、お客様がお持ちの箱詰め機をお使いいただけますが、ビンを浮かせる緩衝機能を持つ箱のような場合、当社が機械メーカーと共に開発したオリジナルの箱詰め機を納めて、お使いいただいています。もう一つは、お客様の省人化・省力化を支援するためです。機械メーカーと独自の機械やシステムを開発し、包装の様々なプロセスの自動化をお手伝いしています。現在では売上の1割ほどが包装システム販売の売上となっており、大きな事業に成長しています。包装資材の設計、デザイン、製造、包装、そのための機械・システムまで、あらゆるニーズにワンストップで応えられるグループ体制が整っています。

顧客本位の精神で富山の製薬業とともに成長

――富山での創業から、全国的なトップシェア企業へ、どのように成長してきたのでしょうか。

朝日社長 明治初期の創業当初は教科書や百貨店の包装紙など、一般商業印刷を主に手掛けていたようです。薬品の包材が増えてきたところで、1950年代にあえてその難しい分野だけに特化する判断をして、高い品質を作り上げようと決断したと聞いています。時代の流れとともに富山の地場産業である製薬業も、置き薬からOTC薬品(一般用医薬品)、医療用医薬品などの分野へ広がっていき、それとともに当社も発展してきました。全国各地、お客様の半径50キロ圏内に営業所を置き、何かあればすぐに対応する全国網の営業展開をしたことが現在の高いシェアにつながっています。災害などの緊急事態の中においても全国のお客様に安定供給を続けるために、2015年からは京都にも製造拠点を設け、BCP(事業継続計画)対応を行っています。

――経済産業省の「地域未来牽引企業」に選定されているとのことですが、地域の牽引役として取り組んでいることを教えてください。

朝日社長 地震などの災害の少ない富山県の立地を生かして、医薬品の印刷包材を安定供給しつつ、地域経済の活性化を実現していること。また、事業を通じて豊かで快適な生活文化の創造に寄与していることで「地域未来牽引企業」として認められたと認識しています。地域での新規雇用は積極的に行っていますし、障がい者雇用も特例子会社を設立して力を入れています。また、富山県とともに海外の優秀な学生の留学支援プログラムも立ち上げており、外国人留学生2人を卒業後、当社で採用し、専門性の高い分野で活躍してもらっています。

売り手も買い手も従業員も幸せな経営が原点

――CSR活動に積極的に取り組まれています。その理由や思いをお聞かせください。

朝日社長 私の祖父であり、朝日印刷を設立した朝日重利が経営者として実践したのは、従業員の幸せを何よりも大切にした経営でした。夏にはスイカを差し入れしたり、年始には家に呼んで新年会を開いたり、従業員の幸せな顔を見るのが一番の楽しみだった祖父でした。また、戦時の空襲下では、お客様ファースト、不惜身命の心で取引先に向き合った経営者でした。富山大空襲で工場を焼失しましたが、第二の創業と捉えて、従業員の皆さんとともに再興しています。お客様の会社が燃えて自社が残る苦しさより、お客様が残って自社が燃えるほうがよほどいいと語ったという、お客様本位の精神が語り継がれています。売り手も買い手も、働く従業員も、みんなが幸せになる経営が朝日印刷のCSR経営の原点。先人たちが残した財産を大切にして、社会に貢献していくことが使命だと考えています。

――より応えていきたいニーズにはどのようなものがありますか。

朝日社長 化粧品メーカー、近年では医薬品メーカーにおいても環境に対しての要望が強くなっています。森林認証紙の使用、ゴミの減量につながる簡易廃棄パッケージ、植物由来のバイオプラスチックパッケージなど、環境対応のニーズには当社もさらに応えていきます。また緩衝機能だけでなく、改ざん防止機能や、子どもの誤飲を防ぐチャイルドレジスタント構造など、機能の高度化にも当社の技術力で一歩先行く提案をしていきます。

――日本の経済や社会を支えていくことへの思いをお聞かせください。

朝日社長 包装を通じて、当社も人々の健康を支える社会的責任を負っていると考えています。また、地域経済、ひいては日本経済の発展に期待されているところも大きいと感じています。ニッチな分野ではありますが、これまで安定的な業績をあげ続けていることについては市場からも評価をいただいていると感じます。新しい市場区分での存在感もさらに増していきたいと考えています。

次の朝日印刷をつくる次世代リーダー育成に注力

――今後も企業価値を向上させていくために、取り組んでいること、大事にしていきたいことを教えてください。

朝日社長 2022年4月から新たな中期経営計画をスタートさせる予定です。既存の市場のさらなる深耕、付加価値の最大化、ワークエンゲージメントの構築、海外事業の推進、グループ企業の経営資源の有効活用を柱として、現在、計画の詳細を策定中です。そのプロセスとして大事にしているのは、次世代を担う若手従業員の意見を取り入れることです。各事業部の若手メンバーで「朝日イノベーションプラン」という会議体をつくり、彼らにもこの先の朝日印刷のあるべき姿を協議してもらい、中期経営計画に盛り込んでいるところです。今後はジュニアボードの設置も検討していく予定ですが、それらの取り組みを通じて、若手メンバーに自分たちの意志が会社の未来につながっていくことを感じてもらい、次のリーダーとして、会社を変えていく原動力になってほしいと考えています。

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