東証市場再編

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【滋賀県】エレベータ・エスカレータの技術革新に挑み、世界を舞台に人の移動と仕事を助ける

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年3月28日に掲載した記事の再掲載です。

フジテック株式会社
執行役員物流本部長 中山忠久/執行役員財務本部IR推進室長 若林英仁/サステナビリティ推進室兼広報室 酒匂奈穂子

エレベータ・エスカレータの技術革新に挑み、
世界を舞台に人の移動と仕事を助ける
―滋賀県― フジテック株式会社

戦後間もない1948年に創業したフジテック株式会社(創業当時の社名は富士輸送機工業)。グローバル展開も積極的に進め、高品質の昇降機を世界に送り出す製造業としてポジションを確立しました。一つの事業に集中的に投資できる専業のメリットを生かし、より効率的に”安全・安心”な商品を各地に届けること、またきめ細やかなメンテナンス体制の構築にも余念がありません。

本企画では、執行役員物流本部長の中山忠久さん、執行役員財務本部IR推進室長の若林英仁さん、サステナビリティ推進室兼広報室の酒匂奈穂子さんに、社会のニーズに合わせて進化する同社の事業について様々な角度から伺いました。

専業メーカーの強みは、商品の長期サイクルを支える一貫体制

――御社はエレベータ・エスカレータ・動く歩道の専業メーカーとして、一貫体制で事業を推進されています。具体的な事業内容と強みについて教えてください。

中山本部長 商品の研究開発から営業、生産、物流、新設( 設置工事)、新設後の保守、修理まで、全て当社でおこなっています。例えばエレベータは通常15年以上、使用されるケースが多く、その後に新しく取り替えますが、この長期サイクルにも全て対応しています。

当社の商品は、建設過程で組み込まれるので、箱や階段のかたちで輸送するわけではなく、資材(半製品)として持ち込み、現場で仕上げます。そのため物流は重要なプロセスで、国内に2カ所ある物流拠点には最新の物流機器を導入し、自動化を推進しています。少数のスタッフで効率的に正確な商品管理ができ、お客様にお届けするリードタイムの短縮にも役立っています。自社のオペレーションシステムとして、ロジスティクスに投資ができるのは、専業メーカーとしての強みの一つです。

また、トラックの荷台を連結し、1人のドライバーが大型トラック2台分の荷物を輸送できる「ダブル連結トラック」の運行も開始し、よりスピーディで効率的な配送にも取り組んでいます。


また、保守サービススタッフへの教育体制、関連設備、遠隔監視システムについても充実を図っています。メンテナンスは、古い油圧式のものなど様々な機種への対応が必要です。緊急時、定期保守すべてにおいてサービス品質を高めるため、社員の技術力向上と均質化に取り組んでいます。

当社は24時間365日、いろいろな人が当たり前に使う機械を扱っています。メンテナンスや修理を的確にしなければ何十年も使えません。全ての業務が回って初めて成立する事業で、一つのプロセスでも信頼を失うわけにはいきません。

――物流などの取組みも重要ということですね。商品においても様々な独創的な技術を開発されています。

若林室長 当社の経営理念は「人と技術と商品を大切にして、新しい時代にふさわしい、美しい都市機能を、世界の国々で、世界の人々とともに創ります」です。常に新しい商品やサービスを生み出そうという気概が創業当初からあります。研究開発力の強化のために、彦根にある生産工場の隣にウィングスクエアという研究施設をつくり、そこで新しい技術を検証し、最近の様々なヒット商品につながっています。

現在、コロナ禍で評価をいただいているのは、非接触ボタン「エアータップ」を搭載したエレベータです。センサーで行先階を指定でき、間違った場合もすぐに取り消せます。研究をスタートしたのは4 年以上前で、コロナ禍は想定していませんでした。着眼したのは衛生面で厳格さが求められる食品工場、医療関連施設などでは、非接触は必要な技術ではないかということです。

リリース当初は、新モデルの標準機のオプション機能として設定しましたが、現在は標準装備としており、またリニューアルなど、後付けでの設置も可能です。エスカレータでも、ハンドレールを稼働中に紫外線を使って除菌する装置を搭載した「エバーフレッシュ」という商品を開発し提供を始めています。

近江商人の経営哲学「三方よし」につながる経営理念、地域社会にも貢献

――大阪で創業され、現在は滋賀県彦根市に本社を移されています。経緯を教えていただけますか。
若林室長 2000年に滋賀県彦根市にエレベータの標準機を製造する工場を新たに設立したのが分岐点です。それより前は大阪に国内の経営資源の多くが集中していましたが、その後は彦根市の工場を拡張しました。

さらに2006年には大阪に残っていた生産機能が移転し、本社・研究開発・生産の各機能を統合したビッグウィングが完成しました。同じ時期に、高さ170mのエレベータ研究塔も竣工し、近くを走る東海道新幹線の車窓から見える高層タワーは乗客のランドマークになっています。当社は滋賀・近江商人の「三方よし」と同じ考え方を持ち、滋賀県の土地柄には共感性やなじみがありました。

――地元の企業として滋賀県ではどのような活動をされていますか。

酒匂さん 地元琵琶湖の生態系を壊さないための葦(ヨシ)の刈り取りや外来魚の駆除、湖岸清掃のボランティアは、社員とその家族が参加して継続しています。地域の子どもたちには、エレベータ・エスカレータの乗り方を学校で教える安全教室を、滋賀本社周辺の学校だけでなく、東京本社でもおこなっています。

――製造業として環境課題に対する取り組みについても伺えますか。

酒匂さん 生産工程においては、物流拠点同様に自動化を進めています。これにより、省エネ、省資源や環境への配慮などを積極的に行ってきており、これからも継続して推進をしてまいります。また、GHG排出削減、化学物質低減、廃棄物の削減・再利用 にもグローバルで取り組んでいます。

“安全・安心”を保証する確かな技術で、海外でメーカーとしての地位を築く

――御社は高度成長期の頃から海外に進出されています。進出のきっかけと現況を教えてください。

若林室長 創業当時、エレベータのメーカーは海外勢が先行し、その後徐々に日本の総合電機メーカーもつくり始めました。当社は、国内にあるそれらエレベータのメンテナンスをおこなっていました。自社で製造できる能力はあっても、ネームバリューでは勝てず忸怩たる思いがあったところに、香港やシンガポールでは技術力や品質で製品を見てもらえることもあり、いち早く持っていこうと考えたのがきっかけです。

最初に香港に進出した1964年当時は、両都市に高層ビルが数多く建設された頃でもあり、需要もありました。日本での事業拡大は、海外での実績によるところが大きかったのが実際です。

現在進出している国と地域は23にのぼります。売上規模では6:4で海外のほうが大きく、事業セグメントを東アジア、南アジア、米州・欧州、日本と4つの体制に分けています。初期に香港とシンガポールに進出したこともあり、現在もアジアが中心。特に中国はエレベータ市場が最も大きく、新設の6割を占めるので、当社も中国の比重が高まっています。

――海外事業において大切にされていることは何ですか。

若林室長 当社は”安全・安心”を大切にしており、それをないがしろにした量の拡大は考えていません。当社の商品が採用されている一番の理由は品質だと自負しています。故障しない、メンテナンスは手間がかかっても丁寧にやっていくことが重要で、社員教育には力を入れています。メンテナンスなどを担うフィールド技術者の研修センターをシンガポールやインドに設けています。

また、自動化を進めている「東京フィット」内には、物流機能に加えて、研修機能も併設し、施設内で様々な種類の機器に関する修理や設置工事などの実機訓練を実施しています。一概にエレベータ・エスカレータといっても、商品ごとに仕様やメンテナンス方法が全く異なりますので、様々な商品に対応できるように研修を重ねています。

海外で日本本社からサポートするのは技術教育とフィロソフィーの伝承で、マネジメントやマーケティング、現地でのビジネスは現地採用の社員に任せています。当社はメーカーですが、作って販売して終わりではありません。保守やリニューアルなどを通じて、お客様との関係がずっと続いていくので、適切な権限委譲が必要だと考えています。

人の仕事を助ける、未来のエレベータ・エスカレータのかたちを現実に

――今後の展望をお聞かせください。

若林室長 中期経営計画「Vision24」では、フジテック・グループ全体として成長しながら収益を上げる戦略を描いています。そのためにはシェアを国内外問わず拡大していく考えです。地域によって市場の成長度が異なります。中国やインドのように新たにビルがどんどん建っている市場、すでに成熟している市場など、その市場に応じて商品やサービスの提供の仕方を変えます。

成長市場では、標準機種を中心に新設機器を提供し、地域の成長に貢献していきます。日本を含めた成熟市場では、古い昇降機のモダニゼーション(エレベータの改修や交換)にビジネスチャンスがあります。実は新設よりも、モダニゼーションのほうが難しいのですが、できることを拡大し、当社が先行している技術、お客様からニーズがある商品 は確実に投入していきたいと思います。

――エレベータ・エスカレータは、将来的にはどんな進化が考えられますか。

若林室長 当社では、将来のエレベータ・エスカレータがどうあるべきか、どんなニーズがあるのか常に考え、研究しています。近い将来では、スマートエレベータの実用化に期待しています。ロボットがエレベータに乗ってほかのフロアに行く自動化の仕組みは、すでに彦根の本社で検証を開始しています。医療現場や物流現場など、需要が見込まれる場所に拡大していく考えです。山を一気に登るような超高速エレベータの開発も進めており、必要とされるプロジェクトがあれば導入は可能です。

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