東証市場再編

全国上場会社の旅

【山梨県】卓越した金型技術で時代が求める精密部品をグローバルに供給

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年2月18日に掲載した記事の再掲載です。

株式会社エノモト
代表取締役社長 武内延公

卓越した金型技術で
時代が求める精密部品をグローバルに供給
―山梨県― 株式会社エノモト

山梨県上野原市に本社を置き、国内の4工場、海外の2工場で、精密な電子部品をつくる株式会社エノモト。今年で創業60年を迎える当社は、創業以来培ってきた金型技術で、高い精度が求められる部品の量産を可能にし、世界の顧客から信頼を獲得しています。その強さの理由は何なのか。今後はどのような分野の機器がエノモトの部品を必要としていくのか。代表取締役社長の武内延公さんにお聞きしました。

半導体にもスマートフォンにも必須の部品

――様々な精密部品をつくっておられます。どんなところに使われているものなのでしょうか。

武内社長 当社は、表には出ない部品の、さらにそれを構成する部品を手掛けているため、なかなか知っていただきにくいのですが、将来性と夢のある製品を数多く取り扱っています。

1つ目の柱はパワー半導体用のリードフレームです。パワー半導体とは、電力の制御や変換を行う半導体のことで、リードフレームとは、その半導体に電流を流すのに欠かせない金属端子のことです。自動車や一般家電、データセンターなどに広く使用されています。大容量の電流を流す必要がある一方、放熱性も要求されるため、高い技術力が必要とされます。今、パワー半導体は脱炭素や省エネで注目を集めており、当社のリードフレームも国内外のパワー半導体メーカーからの受注が増加しています。

2つ目の柱がオプトデバイス(光半導体)用のリードフレームです。付加価値の高いLEDやセンサー向けの製造販売がメインで、自動車のヘッドライト、信号機、高速道路の交通表示板、スタジアムの大型スクリーンなどに使われています。

3つ目の柱が信号電流を通電させる接続部品であるコネクターで、多いときは月産1億個以上を国内外に供給しています。スマートフォンはもちろんウェアラブル端末の市場が成長を続けており、ニーズは日々高まっているところです。いずれもメイド・イン・ジャパンの信頼性を世界のお客様が高く評価してくださっています。

――その極めて精密な部品をつくり出すのが、貴社が誇る「金型の技術」なのですね。

武内社長 そのとおりです。当社の中核となる強みは、創業以来、現在まで培ってきた「金型の技術」であり、金属プレス用金型や樹脂成形用金型のほか、2次工程、3次工程で必要とされる折り曲げ金型や切断金型など、1/1000mm単位での精度を伴う金型製造技術はエノモトならではの技術です。もちろん、時代に応じた変化も推進しており、近年では、金型製造に関してロボット化による合理化も進めています。

また、とても重要なのが、金型をメンテナンスしながら長く活用し続ける生産技術です。摩耗を予測して必要なパーツを交換し、常に新品のように金型を維持することで高い精度を実現できます。この保全の技術において多くのノウハウを蓄積しているのも当社の強みです。

ものづくりの歴史あるまち、山梨の上野原で創業

――山梨県上野原市で創業されたのはどのような経緯だったのでしょうか。

武内社長 当社のある山梨県上野原市は昔から織物の産地で、機織り機をつくる人なども多く、ものづくりへの意欲や先進的な考えを持っている人が多い地域だったようです。ある時代から計算機、発信機をつくる会社ができて、当社の創業者もそこで修業をしたと聞いています。その後、1962年に上野原でプレス加工業を創業したのが当社の始まりで、手狭になって一時は創業者の出身地である神奈川県の相模湖町(現・相模原市)に工場をつくった時期もありましたが、創業の地に広い土地を確保し、再び上野原を起点としたそうです。

――直近では、2018年に市場第一部に上場されていますが、何か変化はありましたか。

武内社長 大きかったのは資金調達の選択肢が増えて、戦略的な投資が大胆にできるようになったことです。また、投資家の皆さんと交流する機会も増え、経営の質の向上を今まで以上に意識するようになりました。社員にも自信と誇りが増して、会社へのエンゲージメントが高まったと思います。採用活動でも良い人財が確保できるようになりました。

――地域社会への貢献や地域環境の保護という観点で取り組んでいることはありますか。

武内社長 経済的に困窮されているご家族への食料支援をするNPO法人フードバンク山梨への支援を長く続けています。また、地元山梨のJリーグクラブであるヴァンフォーレ甲府のサッカー教室や清掃活動などのボランティア活動を支援する目的で、スポンサーとして協賛をしております。隣接する神奈川県では、不登校の子どもたちを支える教育支援NPOバンブーまなび塾にも支援をしています。8年前からは山梨県が主催する「やまなし水素・燃料電池バレー戦略」に参画して、現在も山梨大学とともに燃料電池のセパレータの開発をしています。

グローバルな目線で事業も経営も展開

――海外における事業展開や今後の予定について教えてください。

武内社長 海外事業の基本戦略は、最適地生産です。お客様の近くで日本と同じ品質のものを供給するという方針で進出し、すでに20年以上が経過しています。現時点では、フィリピンと中国・広東省に工場を、香港にオフィスを開設しています。

フィリピンでは自動車部品メーカーのお客様が多く、特にエアバッグを作動させるためのコネクターや、インバーターエアコンに使われるモジュールを多く生産しています。中国工場でのメインは、パワー半導体のリードフレームです。中国国内で半導体の需要が爆発的に伸びているので、非常に忙しい状況です。他にも付加価値の高い車載向け小信号トランジスタを月産20~30億個、生産しています。

需要の高まりを受けて、中国では来期にもう一カ所、工場を増設することを検討しています。売上比率は2021年3月期で53%が海外です。コロナ以降、国内回帰のお客様もおられ、国内の売上もだいぶ増えていますが、海外売上も増やしていく目標なので、今後もこの比率を維持することになると考えています。

――サステナビリティの観点は国内外の投資家からの注目も高いテーマですが、貴社で取り組んでいることはありますか。

武内社長 はい。脱炭素対策として、山梨とフィリピンに太陽光の発電設備を設置済みで、約1.4メガワットの発電をしています。今後、青森、岩手、中国の各工場にも増設予定で、2030年までに、2012年比で33%のCO2削減という目標に向けて動き出しています。また、水素社会の実現に向け、燃料電池の基幹部品であるセパレータの開発をさらに進めて、グリーン燃料の普及に貢献したいと考えています。

ダイバーシティ推進の面では、女性が働きやすい環境整備の観点から厚労省の「プラチナくるみん」認証の取得を2012年から継続しています。

様々な成長分野に付加価値の高い部品を供給

――今後、注力していく分野はどのようなものでしょうか。

武内社長 狙っている成長分野は5つあります。「半導体分野」「通信関連分野」「ヘルスケア分野」「産業機器やロボット分野」「環境ビジネス」です。

半導体分野はEVやADAS(先進運転支援システム)など、車載の電子部品が増えるところを狙っていきます。通信関連分野では、5G、6Gなどのモバイル機器やデータセンター、通信基地局が当社の製品を必ず必要とするでしょう。ヘルスケア分野は、ワイヤレスデバイスがどんどん増えてくるため、当社の技術力が活かせる分野です。産業機械・ロボット分野では、工作機械のロボット化や自動化が私たちの部品を必要とします。環境ビジネス分野では、山梨大学、大阪大学との燃料電池セパレータ開発が、2021年7月にNEDOの研究開発事業に採択いただきました。2030年の実用化を目標に加速させていきます。

これら5つの成長分野に取り組むとき、生産規模の拡大はより必要になってきます。自動化、ロボット化、スマート工場の新設、M&Aや他社との提携も視野に入れて、事業の拡大と展開を図っていきたいと考えています。

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