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【三重県】願うは半導体立国・日本の復活 全国各地の工場を一気通貫で多角的に支える

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年3月29日に掲載した記事の再掲載です。

ジャパンマテリアル株式会社
代表取締役社長 田中久男

願うは半導体立国・日本の復活
全国各地の工場を一気通貫で多角的に支える
―三重県― ジャパンマテリアル株式会社

ハイテク産業や基礎素材型製品製造を中心に産業構造の多角化が進む三重県四日市市で1997年に設立されたジャパンマテリアル株式会社。半導体工場等で必要な特殊ガスの販売・供給管理業務から始まった事業は、特殊ガス、超純水や薬品、動力、空調等の運転管理を一括して請け負うTFM(トータルファシリティマネジメント)へと広がっています。同社設立にも携わり2006年から代表取締役社長に就任した田中久男さんに、工場の黒子企業としての強みと将来性についてお話を伺いました。

一気通貫でモノづくりを支える

――御社は、エレクトロニクス関連、グラフィックスソリューションと太陽光発電の3事業を展開しています。

田中社長 主軸はエレクトロニクス関連事業で、半導体工場等にとって生命線である特殊ガスや薬品、超純水、装置のメンテナンスを一手に引き受けています。通常の工場設備では、特殊ガスはガス関連企業、超純水は水処理専門企業、薬品は化学メーカー、など分野ごとに個別で委託するのが一般的で、各種販売から配管や設備の保守・管理、超純水の供給管理などに至るまでを一貫して手掛ける企業は多くありません。当社は、それらをトータルで担うことを強みとして成長してきました。

――他の2事業、グラフィックスソリューションと太陽光発電についてはいかがでしょうか。

田中社長 グラフィックスソリューション事業は、画像・映像の表示や伝送に関わる各種のハードウェアとソフトウェアを専門に各国から輸入した製品の販売、用途開発、保守メンテナンスを行っています。複数台のモニターを同期表示させるマルチディスプレイ機能に強みがあり、医療、金融、放送やデジタルサイネージなど、幅広い分野で利用されています。具体的には、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けて非接触型インタラクティブサイネージの提供なども行っていますし、テレビ番組や大型商業施設、大規模イベントなどのプロジェクション・マッピングなどのビジュアル効果の実現にも携わっています。また、半導体工場における監視システムの運用も始まりました。監視システムを導入することによって、お客様側のオペレーションの工数を圧倒的に減らすことが可能になりました。

太陽光発電につきましては、カーボンニュートラルの実現に向けて、少しでも使用電力量を減らすことを目的としています。地域を代表する企業として、環境に配慮した活動を何か進めなければならないという責任で始めたものです。

三重とのつながり

――1997年に四日市市で創業し、2005年からは同市に隣接する菰野町に本社をかまえています。

田中社長 もともと、四日市市で操業を開始した東芝(現キオクシア)の半導体工場の力になれればと設立されたのがジャパンマテリアルです。その後も東芝とは親しくしており、東芝の工場拡大に伴い、当社の事業が拡大してきた一面もあります。

――地域に密着した活動も積極的に行われていますね。

田中社長 地域にはお世話になっていますから、イベント事には積極的に参加しています。地域イベントでのボランティア活動や地域清掃活動の実施、社員やその家族と地元の人々を対象にしたファミリーイベントの開催などは、CSR活動の一環として進めています。コロナ禍で一時的に中止していますが、ファミリーイベントは例年300名ほどの来場者を迎えており、当社に50名ほど在籍しているベトナム人技術者と地元の交流を図る機会にもなっています。地元とのかかわりについては、2008年に結成されたCSRプロジェクトのビジョン構築や企画を行うチームが運用しています。

昨年4月には、医療にかかわっている約7000名に、全員一律で15000円分のクオカードを感謝の意を込めて贈りました。

工場が稼働し続ける限り、事業は続く

――ベトナム人技術者が沢山いらっしゃるのですね。

田中社長 日本の半導体工場は、圧倒的に人材が不足しています。工場を新設するには、1200名程度のエンジニアが必要です。設備自体はお金を出せばそろいますが、エンジニアはそう簡単にはいきません。

その解消策のひとつとして、ベトナム人材の活用を進めています。数年前から、工業系の学生や社会人に声をかけ、費用を会社が補助して日本語を勉強してもらっています。最終的には渡日前に面接と意思確認を行い、向こうのご家族と食事をともにし、信頼していただいたうえで日本に来ていただいています。しばらくはベトナム1国にしぼって、人材の育成と雇用を継続していく予定です。2019年には、ベトナムから日本に留学する学生に対する奨学金の支給などを目的として、ジャパンマテリアル国際奨学財団も立ち上げました。

また、日本国内においても、人材育成を積極的に進めています。2017年には、本社工場の新棟に半導体製造装置の保守・メンテナンス作業のトレーニングセンターを設置しました。また、装置メーカーからの要望の高まりを受けて、昨年12月に本社に隣接する新たなテクニカルサポートセンターが完成し、本年1月より稼働しています。今後は、年間で200名ほどのエンジニア教育を進めていきたいと考えています。

――今後の取り組みを教えていただけますか。

田中社長 キオクシアの四日市工場・北上工場の拡張、世界的な半導体メーカーの台湾積体電路製造(TSMC)の日本初となる熊本工場の設立など、当社の主要顧客である半導体業界では積極的な設備投資が進んでいます。その動向からも、当社の登るべき稜線は2027年頃まではっきり見えています。向こう2年ほどは、ロッククライミングに例えることができるほど困難な山登りであり、大変忙しい状況にはなりますが、半導体業界のためにも、達成していかなければならないと考えています。

半導体業界を支えるうえで当社が取り組むべき事項としては、物流の変革が挙げられます。具体的には、物流の倉庫と配送を集中させられないかと考えています。半導体工場には、毎日毎日様々な部材が運び込まれていますが、たとえば九州だけでも20カ所以上ある工場に、それぞれ別の車が荷台に余裕を持った形で個別に運び込んでいるのです。これをまとめて、1つの物流センターから数台のトラックが順々に下ろしていく形にすれば、サステナビリティの観点でCO2削減にもなりますし、物流コストも低減させることができます。日本全国で中部・九州・北日本と3カ所の物流倉庫を備えれば、業界全体で大きなコスト削減にもなり、海外企業とのコスト競争に対する対策のひとつになりうるので、ぜひ実現させていきたいと思っています。

昔、日本の半導体産業は世界においてナンバーワンでした。当社が願っているのは、半導体立国としての日本の地位の復活です。だからこそ当社は、工場を支える黒子的な存在として、何ができるのかを常に考えています。

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