東証市場再編

全国上場会社の旅

【愛知県】ビジネスを通じて「偉大な作品」を創る。事業の成長により社会貢献も叶える会社

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年3月31日に掲載した記事の再掲載です。

リネットジャパングループ株式会社
代表取締役社長グループCEO 黒田武志

ビジネスを通じて「偉大な作品」を創る。
事業の成長により社会貢献も叶える会社
―愛知県― リネットジャパングループ株式会社

1998年、愛知県においてリユース事業で創業したリネットジャパングループ株式会社は、都市鉱山の掘り起こしをするリサイクル事業、そしてカンボジアでの複合的な事業へと事業の幅を広げてきました。これまでの事業拡大の系譜や今後の成長に向けた意気込み、そして“ビジネスを通じて「偉大な作品」を創る”という経営理念に込められた想いについて、代表取締役社長 グループCEOの黒田武志さんに伺いました。

柔軟な発想と対応で事業を拡大

――まずは御社の事業について教えてください。

黒田社長 当社の祖業は、現在も「ネットオフ」という名称で展開している、中古の本やCDの販売と買い取りを行う無店舗型のリユース事業です。1998年にブックオフコーポレーション株式会社の起業家支援制度の第1号として現在の会社の前身を起業しました。無店舗型のリユース業界ではパイオニアと自負しています。

そして、2014年に始めたのが、社名にもなっている「リネットジャパン」のリサイクル事業です。不用になった小型家電やパソコン、携帯電話を中心に回収し、資源として再活用するビジネスです。ネットオフ事業で培った、宅配回収の仕組みを応用しました。

もうひとつがカンボジア事業で、これは大きく分類するとふたつの事業があり、農村地帯を中心としたマイクロファイナンスを途上国の貧困救済するために少額の融資をする事業と、自動車の整備士を技能実習生として日本の整備工場に送り出す事業です。

――リユース事業とリサイクル事業は近接しているように思えますが、カンボジア事業は少し異色な印象があります。

黒田社長 実はカンボジア事業も、リユースやリサイクルの事業から派生したものです。当時、新たな中古の商材として国内の農機具が浮上し、これをカンボジアで販売しようということになったんです。ところが、中古といっても現地の人にとっては高いので、レンタルをしていました。しかし、壊れて戻ってくることが多いので、農機具の整備・修理を教えるようになったんです。

しかし、それだけではビジネスにならないということで、私が自動車メーカー出身ということもあり、自動車の整備を教えようということになりました。日本では自動車整備士の高齢化が進み、著しい人材不足という課題がありますから、カンボジアから自動車の整備士となる技能実習生を日本に送り出すことができれば、社会課題の解決にもなります。さらに農機具レンタルからの派生として、農村地帯のマイクロファイナンス事業を始めたというわけです。

今では当初の農機具レンタルの事業がなくなったので、結果的にほかの事業と離れているように見えるかもしれませんが、自社の強みに軸足を置いてピボットをしていった結果です。

収益性と社会性を両立するビジネスモデル

――事業を社会課題の解決につなげるというお考えは、いつごろからお持ちなのですか。

黒田社長 2000年の設立当初から上場を目指していましたが、なかなか叶わずにいました。その間、ずっと経営のあり方を考えてきたのですが、設立から10年経った頃、何のために仕事をするのかと自分自身に問い直しました。上場を志すことはもちろんですが、今後の大きなテーマとなるのは社会に貢献することだと思いました。その中で、事業を行いながら、本業を社会的な課題解決につなげる、つまり収益性と社会性を両立したビジネスモデルを作るという考えが生まれたのです。そこで掲げたのが、“ビジネスを通じて「偉大な作品」を創る”という経営理念でした。

――ユニークな経営理念ですね。

黒田社長 自分たちで「偉大な」というのはおこがましいのですが、この理念のもとに2014年に誕生したのが、現社名になっているリサイクル事業の「リネットジャパン」です。

日本は天然資源の少ない国ですが、年間約65万トンものパソコン・スマートフォン等の小型家電が使用済みになり、この中には約28万トン分のレアメタルが含まれています。いわゆる“都市鉱山” と言われている資源です。地球の天然資源を枯渇させないため、この都市鉱山の掘り起こしには社会的な意義があると思いました。また、回収したパソコンなどは手作業で解体・分解するのですが、この工程は障がい者雇用に繋げています。みなさん、非常に集中力が高くとても生産性が高いんです。回収が増えれば増えるほど、障がい者雇用が増やせます。

私たちが事業に邁進することが、社会の課題解決の拡大につながる。これが、“ビジネスを通じて「偉大な作品」を創る”ということです。実現は難しいように見えるかもしれませんが、どんなことでも一工夫すれば、事業の発展と社会の問題解決を組み合わせられると考えています。

――カンボジア事業も、事業と社会課題の解決がリンクしていますね。

黒田社長 実は、カンボジアでは交通事故が多発していて、その原因のひとつに車やバイクの整備不良が挙げられます。整備士を増やし、レベルアップすることができれば、問題解決の一端を担えると考えました。技能実習生には、日本で技術をしっかり習得して帰国してもらい、カンボジアでの就労につなげていきたいのです。さらに母国で独立して整備工場を開業したいという人には、マイクロファイナンスで応援することができます。

――利用者の買取代金の一部または全部をNPOやNGOに寄付する「スマイル・エコ・プラグラム」で、お客様にも社会貢献活動への参加を呼びかけていらっしゃいますね。

黒田社長 「スマイル・エコ・プラグラム」は、今の経営理念を掲げる前の2007年に始めました。お客様の1割の方が寄付に参加してくださいます。私たちが頑張って本やCDの買い取りを進めることで、NPOやNGOの活動資金が増えます。その意義を実感していたからこそ、本業の事業を進めながら社会の問題解決をしていくという発想に繋がったのだと思います。

2016年には「スマイル・エコ・プラグラム」から発展した「KIFT(キフト)」という寄付プログラムも誕生しました。寄付とギフトをかけ合わせた造語で、ネットオフで買い物をするか買取サービスを申し込んでもらった方に「KIFT」専用封筒を送り、自宅に眠っているはがきや切手、使用済みインクカートリッジなどを入れて、宅配便に同梱してもらいます。買取を利用する予定がなくても、着払いで受け付けています。

全国の自治体との連携の端緒が愛知県

――本社がある愛知県との関わりについて教えてください。

黒田社長 大学卒業後、トヨタ自動車に勤務したのが愛知県との関わりの始まりです。起業時には同社から出資をしていただきました。また、現在レーシングチームである「GAZOO」は、当時オンラインのショッピングモールを展開していて、当社はオンライン書店として出店しました。その後、愛知県の大府市に商品センターに適切な物件が見つかり、のちに本社も起業時の三重県四日市市から名古屋市に移しました。

現在、リサイクル事業は国の許認可事業として行っており、全国の500以上の自治体と協定を結んで、7,500万人に及ぶエリアをカバーしていますが、創業当初は協定を結んでもらうことに非常に苦労しました。端緒となったのが大府市です。民間と行政が手を結ぶ新しいチャレンジに対して、先陣を切って賛同していただき、本当に感謝しています。その後、次第に近隣の市町村に波及し、県内で多くの自治体と協定を結んだのが実績となり、全国の自治体に広がっていきました。地元の応援は本当に力強いと感じています。

――「愛知県知事賞」を受賞されたそうですね。

黒田社長 県内での知的障がい者の雇用促進と職業定着を推進に貢献したということで、「2020年度障害者雇用優良企業表彰」で県知事賞をいただきました。2019年に名古屋市内に開設した約1,000坪のパソコン処理センターでは、知的障がいのある方を雇用するだけでなく、全国の福祉事業所と連携して、一般企業向けに知的障がい者の雇用支援を行う場所として、新たな事業を展開しています。

強みを生かし、経常利益100億円企業へ

――競合の事業者は数多いと思いますが、自社の強みについてどのように捉えていますか。

黒田社長 リサイクル事業の「リネットジャパン」は小型家電リサイクル法に基づき、環境省と経済産業省の許認可を受けて事業を行っています。法律に基づく宅配回収を行っているのは、当社だけです。法律に則った正規のサービスであるというのが、当社の大きな強みです。また、協定を結んでいる自治体では、当社の回収を行政サービスの一環としてご案内いただいていることも、利用者の方にとっての安心感や信頼感に繋がっていると思います。

カンボジアの人材事業でも、中央省庁の一つである労働職業訓練省と一緒に取り組んでいて、国立の職業訓練校の中に当社のオフィスと研修センターがあります。こうした連携があることで、カンボジアの皆さんの信頼を得ることができているのではないでしょうか。

――今後の経営戦略について教えてください。

黒田社長 コロナ禍においても、国内のリユース事業とリサイクル事業が伸びていますので、この2事業が牽引する形で、2、3年以内に経常利益10億円を到達できると思っています。この2事業をさらに強化するため、インターネットマーケティングに注力していきます。2021年11月に東京・渋谷にマーケティング部門を拡大すべく、渋谷オフィスを開設しました。もちろん、経常利益10億円は通過点であり、中長期的には経常利益100億円を目指します。数年以内には新型コロナウイルスの影響も収まり、海外の事業も活発に行えるようになると思います。

経常利益100億円を目指すとなれば、自力の成長に加えて、資本市場からも資金を調達し、M&Aなども活用して成長に繋げていくことになるでしょう。M&Aについては、マイクロファイナンスで有名なバングラディシュのグラミン銀行のノウハウを用いていたNGOをカンボジアで買収したことがあり、既に経験済みです。これからも3つの事業で利益を追求しながら、同時に社会問題の解決にも力を注いでいきたいと考えています。

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