東証市場再編

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【北海道】ミルクの未来を信じ続けて。 人々の生活を支える乳製品メーカーが受け継ぐ精神

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2022年4月1日に掲載した記事の再掲載です。

雪印メグミルク株式会社
社長執行役員(CEO) 佐藤雅俊

ミルクの未来を信じ続けて。
人々の生活を支える乳製品メーカーが受け継ぐ精神
―北海道― 雪印メグミルク株式会社

「未来は、ミルクの中にある。」というコーポレートスローガンを掲げる雪印メグミルク。その前身の一つである雪印乳業株式会社は、1925年(大正14年)、当時の社会課題であった、「安定的で豊かな食生活の充実」を目指し、酪農家による酪農家のための生産組織「有限責任 北海道製酪販売組合」として設立されました。「北海道バター」の製造販売から始まった歴史はまもなく100年に到達します。日常生活に欠かせない食品として愛され続ける乳製品はどのように開発され、今後のビジネスはどのように展開されていくのでしょうか。代表取締役社長の佐藤雅俊さんに話を聞いていきます。

ミルクにこだわる4つの事業分野

――雪印メグミルクの事業は大きく4つに分かれていますね。それぞれの概要や最新の動向について教えていただけますか。 

佐藤社長 当社グループの売上高の約43%を占めているのが、創業から製造販売しているバターなどを中心とした乳製品事業です。ロングセラー製品は「雪印北海道バター」「雪印 6Pチーズ」「雪印北海道100カマンベールチーズ」などです。カマンベールチーズは1962年、当社が日本で初めて生産、販売したものですし、1980年にはチーズを“さく”ものとして位置づけた「さけるチーズ」を、当社独自の製法によって日本で初めて販売しました。また、バターでは市場のシェア44.4%(2020年度 家庭用 全国金額ベース 出典:インテージSRI+)を獲得しており、北海道の磯分内工場ではさらなるバター供給量の向上に向け、設備の増強を図ったところです。

――牛乳、乳飲料、ヨーグルトなどを中心とした市乳事業についてはいかがでしょう?

佐藤社長 当社グループの売上高の約45%を占めています。牛乳、乳飲料、ヨーグルトといった製品は皆様が毎日、召し上がっていただくものですので、お客様とのつながりが最も濃い事業と言えます。この事業分野においては健康志向の広がりによって、特定保健用食品または機能性表示食品への注目が高まっており、さらなる新商品開発が着々と進行しています。

最新の動向としては2022年3月29日より、人気を博している「雪印メグミルク牛乳」を「おいしい雪印メグミルク牛乳」として全面的にリニューアルし、展開していきます。「低温脱気製法」と「赤い遮光パッケージ」の「おいしさW技術」により、クセなく、好ましい香りと後味を持ち、生乳本来のおいしさを楽しんでいただけます。また、手軽にいつでもどこでも牛乳を楽しんでいただけるよう、キャップ付き容器の小型牛乳も展開する予定です。「雪印コーヒー」においてもキャップ付きのパッケージを販売予定で、こうした工夫によって当社の牛乳やコーヒーと接するシーンが増えてもらえればうれしいです。

――ニュートリション事業は育児用の粉ミルクや、「毎日骨ケアMBP®」といった機能性食品の分野ですね。

佐藤社長 はい、こちらの事業分野では「毎日骨ケアMBP®」を中心とした、機能性食品の定期購入型通販ビジネスが堅調です。また60年以上も研究を進めている乳児用のミルクでは、従来の粉ミルクに加え、哺乳びんに注いで使える液状タイプのミルクを発売するなど、生活様式の変化に対応した商品の開発を進めています。

――飼料・種苗事業は、御社の事業として一般消費者は認知しにくい分野ですが、生乳生産や農業を支援する事業なのですね。

佐藤社長 当社グループの事業の中では酪農家に最も近い事業です。飼料事業では、牛など家畜の餌を含めた配合飼料等の全国への展開が主軸となっています。種苗事業では、牧草の品種改良、優良品種の開発などを行っています。加えて、野菜などの種子と苗の販売や、環境緑化事業にも力を入れております。

地道な研究開発、原動力はお客様の声

――バターやマーガリン、チーズ、スキムミルクではそれぞれ市場シェア1位を堅守しているほか、各製品においても市場での存在感を高くキープしていますね。なぜ御社の製品は市場において高い支持を得られているのでしょうか?

佐藤社長 当社では創業の翌年の1926年に近代的工場を設立し、バター製造を始めました。以来、人々に喜んでいただけるような乳製品の研究を続けてきた経験、知見が商品の強みとなっていることは間違いないと思います。さらに、お客様、市場がどのような製品を求めているかについて、つねに把握し、開発につなげてきたことが、多くの皆様から支持をいただくことにつながってきたのだと感じています。

たとえばバターであれば、お客様が使用しやすいように工夫した「雪印北海道バター(10gに切れてる)」は定番商品として人気です。昨今、植物由来の原材料を使用したプラントベースフードが話題ですが、当社は1968年の時点で、バターに替わる植物性の食品としてマーガリンを発売し、バター風味や低カロリーの商品など、こだわりを持ちながら開発を進めてきました。このように徹底的に市場の声を聞くということが、事業の発展につながるのだと信じています。

加えて、日本人の口にあう風味とは何かをつねに深く考えていることも、市場で評価される一因となっているのではないでしょうか。たとえばヨーグルトなど乳酸菌関連の製品において、日本人の口に合うものに進化させることができたのは、発酵や熟成の方法を始めとした研究を地道に続けてきたからです。「どうすればお客様に喜ばれるか」というシンプルな問いに、いつも向き合い続けていることが、当社の原動力と言えるでしょう。

――商品開発の核となる部門としてミルクサイエンス研究所が機能していますね。こちらの概要について教えていただけますか。

佐藤社長 埼玉県川越市にある「ミルクサイエンス研究所」は当社最大の研究・開発拠点で、おいしさや健康のために幅広くミルクの可能性について研究を続けています。そのほか北海道札幌市にはバター、脱脂粉乳、ナチュラルチーズといった乳製品の研究開発を行う「札幌研究所」を、山梨県北杜市にはナチュラルチーズの製法を研究する「チーズ研究所」があります。

現在、「ミルクサイエンス研究所」を建て替えて、「イノベーションセンター」としてさらなる技術の融合を図ろうと計画が進行しています。様々な事業分野の垣根を超えて技術を融合させ、競争力強化、市場創出を実現するほか、SDGsを考慮した環境対策を強力に推進していく予定です。

――たくさんの製品を開発されてきましたが、ミルクにはまだ知られざる機能があるということですか。

佐藤社長 現在、当社の研究所では3,000種類以上の乳酸菌を保有しています。これらの菌にはまだ探り当てられていない機能がたくさんあって、その可能性にはおおいに期待しているところです。こうした乳酸菌のあらたな機能を発見し、製品に活用できる可能性はまだまだありますし、乳酸菌以外にも注目すべき機能がミルクには秘められています。私自身、これらの機能を製品に付加して多くのお客様にお届けし、喜んでいただける日を楽しみにしています。

北海道を起点に、社会の発展に貢献

――御社の本店は北海道にあるとのことですが、佐藤社長ご自身も北海道出身ですね。北海道の魅力をあらためて教えていただけますか?

佐藤社長 なんといっても雄大な大自然でしょうか。こうした環境で育まれる農産物、海産物の豊富さ、おいしさはやはり大きな魅力ですね。日本という国は全国的に四季がはっきりしていますが、北海道の四季の移ろいは格別です。期間は短いですが素晴らしい夏、しっかりと雪が降り積もる冬のメリハリも北海道の魅力と言えるのではないでしょうか。

――冬といえばウインタースポーツですが、御社はスポーツ振興においても長年、注力されていますね。

佐藤社長 当社にはスキージャンプのチームがあり、北京五輪では日本代表に3名を送り出しました。残念ながらメダル獲得には至りませんでしたが、社員一同、元気をもらいましたし、日本全国へも明るい話題を提供することができたのではないかと感じています。2030年に札幌に五輪を招致するための活動にも積極的に関与しているほか、子どもたちのスポーツ教育にも注力していきます。北海道を起点として日本全国にスポーツの喜びを届けたいと考えています。

――創業の精神「健土健民」には、どのような思いが込められているのでしょうか。

佐藤社長 創業の2年前、1923年に関東大震災が発生しました。この災害によって食料不足が深刻化し、日本は海外から大量の食料を緊急輸入し始めました。急激な輸入の増加によって国内の食料需給が大混乱し、生産者は悲鳴を上げる状況になっていき、北海道の酪農家も窮地に立たされました。

そこで、「豊かな食生活を国民に届けたい」、「栄養価の高い乳製品を家庭に届けたい」という思いを抱いていた創業者達が、酪農家を救うため、酪農生産者による組織「北海道製酪販売組合」を設立し、そのとき創業の精神として掲げたのが「健土健民」です。今で言うSDGsの精神を1925年の時点で意識していたということでもあります。「酪農の大地を豊かにすることで、この大地から栄養価の高い乳製品を生み出そう、そしてこれを食する人々に健やかな精神と丈夫な身体をつくっていただきたい」という思いが込められています。

現在、企業は何のために存在しているのかということがあらためてクローズアップされています。そんな時代にいまいちど「健土健民」の精神をしっかり認識し直し、グループ全体として社会に貢献していこうと決意をあらたにしているところです。

――北海道の道庁と包括連携協定を結んでいるそうですね。

佐藤社長 2007年に北海道庁と包括連携協定を締結しました。酪農と乳製品の製造において培った知見を活かし、北海道の経済活性化に協力をしていくという内容です。たとえば道庁と共催で、ナチュラルチーズの製造を始めて間もない方や、これから製造を目指す方のために講習、実習を開催し、業界全体において品質向上、衛生管理面でのレベルアップを図っています。

また、食育、健康づくりの支援という側面で、小学生を対象とした牛乳に関する授業の実施や、高校生を対象としたチーズやカルシウムに関する授業を、当社の栄養士の資格を持つ職員が参加して行っています。こうした活動の幅は今後も広げていきたいですし、当社グループは北海道を起点とした知恵の共有、教育を非常に重視しています。

酪農とミルクの未知のポテンシャルに期待

――グローバルな展開において今後の展望をお聞かせください。

佐藤社長 人口増加の動向、経済成長性、さらには日本からのオペレーションなどを考慮すれば、今後、重点的にビジネスを展開していく国外のエリアとしてはオセアニアを含むアジア圏ということになるでしょう。

たとえばインドネシアでは「雪印メグミルクインドネシア」が商品の製造販売をしていますが、日本のチーズ市場の規模は現在35~36万トンであるところ、インドネシアはおよそ5万トン程度です。インドネシアの人口は日本のおよそ2倍あるので、インドネシアのチーズだけを見てもまだまだ伸びしろはたくさんある状況です。加えて、乳製品だけではなく多様な商品の展開を、海外市場に向けて取り組むべき課題と位置づけています。それだけ海外市場にはニーズが眠っているという認識です。

――先ほど、雪印乳業の創業時からSDGsを意識されていたと伺いましたが、サステナビリティについては投資家からも注目が集まるところです。今後、サステナビリティの視点でどのような展開を目指しているのでしょうか?

佐藤社長 大きくはミルクを通して、食の提案、健康への提案を深めていきたいと考えています。さらに、持続可能な酪農への貢献です。当社グループ事業の中核が酪農乳業であることは間違いなく、この基盤をしっかり維持、強化していくことが事業のサステナブルな成長にも合致するものだと感じています。また、「日本酪農青年研究連盟」の活動をサポートすることも重点課題であると考えています。国内の酪農において経営管理、技術指導、飼料開発など多様な角度で当社グループは積極的に関与し、社会のサステナビリティにも、一層貢献していきたいと思っています。

――企業価値向上に向けた取り組みについて、その方向性を教えていただけますか?

佐藤社長 私は、成長に向けた3つのキーワードとして「スピード」「共感」「チャレンジ」を掲げています。環境変化に素早く対応するために、スピーディーにひとつひとつの事業、ビジネスを遂行、革新していくこと。社会課題の解決を目的に「全力を尽くす者たちが集い」、そしてそこには「全力で応援する者たちが集う」、そんな熱意ある共感の輪を広げること。さらには歴史と伝統を守りながら、一歩踏み出す勇気を忘れず、新たな価値を生み出すためにチャレンジを続けていくこと。そして個々のチャレンジに対しては全社的に称えるような企業風土を確立していくこと。これら3つの方向性を示し、皆が思いを共有することで進化を続ける企業でありたいと考えています。

――最後に、一般の消費者の皆さんや投資家の皆さんにメッセージをお願いします。

佐藤社長 当社グループはこれまで、酪農、生産からお客様のお手元まで届けるというミルクのバリューチェーンを安定的、かつ革新的に築き上げてきました。しかし、こうした一連の流れにおいて、まだまだ未知のポテンシャルがあると確信しています。酪農の原点である飼料や牧草、牛乳そのものから機能性食品まで、様々な可能性を探り当て、これからますます日本人の健康寿命の延伸や生活の質の向上に貢献できると考えており、それがグループの企業価値向上にもつながるものと思います。雪印メグミルクグループは、これからも社会の期待に応えられる企業であり続けるため、全力で取り組んでまいります。ぜひ、期待し、注目していただければと思います。

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