新しい金融のカタチ

掛金の限度額は高く、もちろん非課税

「iDeCoと遜色なし」なのに導入わずか1.5%。企業型DCを広めるFinancial DC Japan

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ここ数年、イデコの愛称でiDeCo(個人型確定拠出年金)はすっかり有名になったが、確定拠出年金(DC)にはもうひとつ、「企業型DC」というものもある。企業型DCは、iDeCoと比較してもメリットは多いが、認知が十分でなく、導入が進んでいない現状があるという。

その現状に目をつけ、企業型DCの導入支援を行っている会社がある。Financial DC Japanだ。2018年12月に創業し、最初の1年は25社ほどの導入支援だったが、現在は180社に拡大。2030年には累積5000社への導入を見据える。そんな目標を本気で掲げるほど、企業型DCの潜在的ニーズは高いようだ。

そもそも企業型DCとはどんなものなのか。また、同社の行う“導入支援”の内容とは。Financial DC Japan代表取締役社長の岩崎陽介氏に取材した。

企業型DCとは。iDeCoと比較してのメリットを考える

まずは企業型DCの概要に触れていきたい。これは従業員・役員のための年金制度で、企業が従業員それぞれの掛金を毎月積み立て、その資産の運用は従業員が行う。そうして、基本的には60歳以降に従業員本人が年金を受け取る仕組みだ。

iDeCoの場合、月々の積み立てや口座管理、手続きは個人みずから行うが、こちらは、それらも企業が行う形。従業員からすれば、iDeCoでも企業型DCでも、自分の資産を運用していることに変わりはない。掛金や運用益も非課税だ。しかし、企業型であれば、従業員は細かな手続きをしなくて良いケースが多い。

そのほかにも、企業型DCとiDeCoを比較すると、こんな違いがあるようだ。岩崎氏が説明する。

「iDeCoの場合、掛金の限度額は月額2万3000円まで。企業型DCは月額5万5000円まで可能です(その他の企業年金がある場合は月額2万7500円)。従業員からすれば、iDeCoより多くの掛金を非課税で積み立てることができるのです」

また2つの違いとして、iDeCoでは口座管理料や手数料は個人で負担するが、企業型DCは企業側が負担する。

こういった特徴をもつ企業型DCだが、私たち一般生活者が加入するには、そもそも自分の勤務する会社が企業型DCを導入していなければならない。では、企業にとってこの制度を導入するメリットはあるのだろうか。

「企業の大きなメリットは福利厚生になることです。いま言ったように、従業員はiDeCoよりも大きい掛金を運用できますから。また、従業員の資産形成を支援することにもなります。そのほか、退職金の準備として運用している企業も多くあります」

岩崎氏によれば、中小企業は従業員の資産形成を後押しするため、大企業は退職金制度として企業型DCを活用するケースが目立つという。

導入企業は少ないが、加入者は多い。そこにつながる「導入支援」の中身


こういった特徴を踏まえて、企業型DCは「企業にとってやらない理由がない、メリットの多い制度」だと岩崎氏。しかも、社員数1名の企業から導入可能で、ハードルも高くないはず。なのだが、現状は導入が進んでいないという。

「企業型DCを導入している企業は約3.8万社(2021年3月31日現在)。日本の厚生年金適用事業所は約250万社あり、これらの企業は導入する資格を有しています。だとすると、単純に考えて全体の1.5%ほどしか導入していないことになります」

ただし、この数字には「注意点がある」と岩崎氏。というのも、日本のiDeCo加入者は約240万人ほどだが、企業型DCの加入者は780万人いる。iDeCoの3倍以上だ。加入している企業数は少ないが、人数は多いというギャップがあるのだ。

「このギャップが意味するのは、加入企業の多くが大企業ということです。理由として、企業型DCに加入するきっかけの多くは、金融機関からの提案ですが、金融機関にとって大企業は利益が出るものの、中小企業では利益が出にくく提案に行かない。結果、中小企業では企業型DCの制度や情報を知る機会がなく、導入が進まなかったといえます」

なぜ中小企業では利益が出にくいのか。理由として、企業型DCを導入するには、厚生局への申請が必要。細かな手続きや調整が不可欠になる。たとえば「導入にあたり、就業規則の見直しや修正などが発生します」と岩崎氏。

「そのほか、従業員の投資教育も大切です。運用は従業員自身が行うので、投資の概念や仕組みを伝えなければなりません。また、導入したのに従業員が使わないというケースも避けたいでしょう」

金融機関はこれら一連のサポートを行うのだが、それをした上で一定の利益を生むには、大企業に絞らざるを得なかったようだ。

一方、Financial DC Japanが行う導入支援とは、おもに中小企業に対するもの。上記のサポートを小規模な企業にも細やかに実施していく。

冒頭で述べたように、同社の支援のもとで企業型DCを導入した企業は、創業から3年半で180社に増えた。多くが社員30名以下の企業だ。最初は岩崎氏が1人で営業をしていたが、それではリソースや利益化に限界がある。そこで、途中からビジネスモデルを切り替えたという。

「地銀や保険営業、IFAや社労士、税理士など、経営者とつながりのある職種の方とパートナーを組み、その方たちが案内役となって、各々の本業とあわせて企業型DCを紹介する形を取りました。これにより、中小企業への支援でも利益が出るビジネスモデルになりましたし、案内するパートナーの方も経営者に提案するカードが増えるのでメリットになっています」

導入すると、コンサルティング費用(一時金)と制度継続中の管理費用が発生するという。導入企業が増えるほど利益も積み上がるストック型のビジネス。岩崎氏は「中小企業において企業型DCはブルーオーシャンであり、まだまだ増えていく余地があります」と話す。それが冒頭の5000社という目標につながるのだ。

そして何より、岩崎氏はこの事業の社会的意義も感じている。

「3年前に、いわゆる老後2000万円問題が大きく取り上げられました。その中身の正当性は別にしても、老後資金の不安は、向き合わなければならない社会課題のひとつです。iDeCoも広がりましたが、同じDCなら企業型には多くのメリットがあります。その普及は、いまの日本で優先的にやるべきことだと考えています」

中小企業ではまだまだ普及が進んでいない企業型DC。これらの存在を広め、導入企業が増えることは、従業員のメリットになる。それはつまり、老後の不安を少しでも和らげ、生活者や社会の豊かさを生むことにつながるだろう。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2022年8月現在の情報です

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