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再エネ界の名バイプレーヤーに!

24時間働ける地熱発電の可能性に注目

提供元:ちばぎん証券

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7月24日午後8時過ぎ、突然のニュース速報に驚いた人も多かったのではないでしょうか。

―鹿児島県の桜島で爆発的噴火が発生。鹿児島地方気象台は噴火警戒レベルを「3~入山規制」から、最高レベルの「5~避難」に引き上げ―

桜島は言わずと知れた世界有数の活火山。

噴火そのものは珍しいニュースではないかもしれませんが、噴火警戒レベルが「5」とされるのは2007年12月に現在の基準が導入されて以来初めてです。気象庁によると、大きな噴石が火口から約2.5キロの地点まで飛散したとのことで、改めて地球が持つ巨大なエネルギーを実感することとなりました。

「地熱発電」はこの地球のエネルギーを活用します。

エネルギー源は地下のマグマ。マグマが地下水を熱することで生じる高温・高圧の蒸気を取り出し、タービンを回すのです。発電時にCO2などの環境汚染物質をほとんど排出せず、使用した蒸気は水に戻した後地下に還元。再生可能なクリーンエネルギーと位置付けられます。

地熱発電が可能な場所は、火山地帯など高温な地熱エネルギーを取り出せる地域に限られます。

世界で資源量が多いのは環太平洋火山帯に位置する地域やアフリカの一部、アイスランドなど。国別では米国が首位、インドネシアが2位、火山大国の日本は3位です。

わが国における地熱発電の歴史は終戦後に遡ります。

復興に向け、電力の安定供給が大きな課題であった日本は、水力や大型火力の発電所建設を進めるとともに、地熱の実用化に向けた調査・研究開発にも注力。1966年に日本で最初の本格的地熱発電所として、岩手県の松川地熱発電所が運転を開始しました。二度にわたるオイルショックは国に石油代替エネルギー政策の推進を促し、地熱資源開発も順調に拡大しますが、その後原子力発電優先に政策が転換すると開発は止まり、停滞局面となってしまいます。

地熱発電は油田と同じで掘ってみないと正確な資源量が分からず、資源量の調査から稼働まで、10年以上かかると言われます。掘削の成功率は3割程度とされ、1本掘削するのに5億円以上かかる井戸を何本も掘る必要があります。資源は豊富と言いながらも、その8割が国立公園などの自然公園に立地しており、地元との調整は不可欠。関連する法律も複雑に絡んできます。バブル崩壊、金融危機が列島を襲うなか、お金も手間もかかる案件から撤退せざるを得なかったのは無理からぬことと言えるでしょう。

転機は2010年代。東日本大震災による深刻なエネルギー危機をきっかけに、固定価格買取制度が導入されるなど、再生可能エネルギー拡大の機運が高まりました。世界的な脱炭素の流れも追い風となり、今再び脚光を浴びようとしているのです。

政府は昨年6月の「グリーン成長戦略」で、地熱産業を成長分野として育成する方針を公表しました。国が地熱を成長分野と位置づけるのは初めて。事業者への資金援助や開発にかかる規制緩和も進め、現在国内に約60カ所ある発電施設を30年までに倍増、発電出力を60万キロワット(kW)から150万kWに拡大する方針です。

それでは、地熱発電をめぐる企業の取り組みはどうでしょうか。

Jパワー、三菱マテリアル、三菱ガス化学の3社は2010年、地熱発電の調査を担う共同出資会社を設立。2019年、秋田県湯沢市で山葵沢地熱発電所の営業運転を開始しました。発電出力は4万6199kW。出力1万kWを超える大規模地熱発電所の稼働は実に23年ぶりで、地熱発電見直しの先駆けということができるでしょう。この3社は現在、岩手県八幡平市に安比地熱発電所を建設中です。

出光興産、INPEX、三井石油開発は今年秋田県湯沢市で地熱発電所を着工。出力は1万4900kWで25年にも運転を始める計画です。九州電力は鹿児島県霧島市で23年6月着工、24年度末の運転開始を目指して準備を進めています。この他、太陽光、風力など再エネのマルチ電源開発を志向するレノバも北海道函館市や熊本県南阿蘇村で地熱プロジェクトに取り組んでいます。

地熱発電に関連する施設や装置面では日本企業が強みをもっています。

富士電機は1960年に日本初となる実用的な地熱発電設備を納入しましたが、2000年以降の受注実績は世界シェア1位の36%(2019年11月20日現在、同社HPより)。個々の設備のみならず、プラント全体の設計、製作、建設を手がけています。同社に三菱重工、東芝を加えた3社で地熱発電用タービンの世界シェアは7割に達します。

金融セクターでは東京海上日動火災が地熱発電保険を販売しています。

これは地熱発電(開発)業務に関連して周辺温泉の湧出量の減少、泉質や温度の変化が発生した場合、原因調査費用と温泉事業者への損害賠償責任を補償するというものです。地熱発電の開発に関する規制緩和が進む一方、地元との合意形成は依然として大きな課題で、こうした保険の普及が円滑な合意形成の一助になると期待されます。

前述のとおり、政府は2030年までに地熱発電の出力を150万kWに拡大する方針です。

ただ仮にこの目標を達成できたとしても、その規模は普通の火力発電所1~2基分程度。ボリューム面で日本のエネルギーの屋台骨を支える存在にはなり得ません。それでも地熱発電が注目される理由は、再エネ電源の中で群を抜く安定性にあります。太陽光や風力は天気次第で発電量が変わるのに対し、地熱発電は天候に左右されず24時間安定して稼働できます。設備利用率は70%を優に超え、太陽光、風力の10~20%程度をはるかに上回ります。様々なリスク要因を踏まえて国の電源構成を考えるとき、貴重な個性ということができるでしょう。

その個性を存分に発揮し再エネ界の名バイプレーヤーに、期待は高まっています。

(提供元:ちばぎん証券)

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