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株式相場「4つのステージ」の考え方と実際

提供元:SBI証券

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(1)株式相場「4つのステージ」の考え方

2022年、米国株式市場を中心とするグローバル株式市場は、6月後半から8月前半にかけて上昇基調をたどりました。インフレが落ち着き、2023年にはFRB(米連邦準備制度理事会)が利下げに転じるとの見方が強まり、株式市場では楽観的な見方が戻りました。しかし、8月下旬のジャクソンホール会合において、パウエルFRB議長がインフレの脅威は続き、2023年の利下げは時期尚早とするタカ派的な発言をしたことから、株価は下落基調に転じました。

上昇相場から下落相場へ、株式市場が大きく揺れ動く中で、投資家の心理は強気と弱気の間を大きく揺れ動くことになりました。株式相場が強いときは「どこまでも株価は上がる」と舞い上がり、弱いときは「奈落の底まで下げる」という恐怖におびえるというのは、投資家として避けたいことではありますが、なかなか逃れがたいことも現実です。

ただ、株式相場は一定のサイクルの中で動いていること、「金利が下がっている時や景気・企業業績が良い時に株高となり、逆に金利が上がっている時や景気・企業業績が悪いときに株安になる」とは限らないこと、を知ることで、これまでよりも株式相場に冷静に対応できるようになると考えられます。

今回のレポートでは、株式相場の「4つのステージ」について考え方を整理し、それを現在の株式相場の中で再考してみたいと思います。

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株式相場には、4つのステージがあるといわれています。下落相場として「逆金融相場」と「逆業績相場」があり、上昇相場として「金融相場」と「業績相場」があるというのが、一般的な考え方であると思われます。

(1)「逆金融相場」・・・景気・企業業績の拡大は続いているものの、金利の上昇を嫌気して株価が下落局面に転じる相場です。大きな波乱になることも多々あります。高PER・PBRのグロース銘柄にとっては正念場となりそう。借金の少ない好財務銘柄やバリュー銘柄が買われやすくなります。

(2)「逆業績相場」・・・その後、金利上昇が効いて企業業績が悪化に転じ、金利が低下に転じてくると、そこは「逆業績相場」で、株価の下落は続いています。ディフェンシブ銘柄が相対的に強くなりやすい局面です。

(3)「金融相場」・・・金利低下が本格化してくると、将来の景気回復を期待して「金融相場」という上昇局面に入っていくことになります。そこでは、景気・企業業績は回復直前の状態です。金利低下が好感されるグロース銘柄が買われやすくなります。

(4)「業績相場」・・・景気・企業業績が本格的拡大期となってくれば「業績相場」となり、金利は上昇に転じてきます。その金利上昇が嫌気されるようになると、再び「逆金融相場」へ戻ります。グロース銘柄からバリュー(好業績)銘柄へシフトが望まれるタイミングです。

なお、「逆金融相場」と「逆業績相場」の間には中間反発局面が、「金融相場」と「業績相場」の間には中間反落局面が起こりやすいとみられます。

株式相場の「4つのステージ」と外部環境

※各種資料を基にSBI証券が作成

(2)株式相場「4つのステージ」と実際

2020年春以降、新型コロナで急激に冷え込んだ世界経済が、各国中央銀行による未曽有の金融緩和で上昇した局面が「金融相場」と考えられます。

グロース銘柄の多いナスダック指数は、2020年3月安値から2021年11月高値まで2.3倍にも高騰し、東京市場では東証マザーズ指数が大幅高しました。米10年国債利回りは2019年末の1.9%台から2020/7には0.5%台まで低下し、2020年いっぱいは1%未満で推移していました。東京株式市場では、企業業績の不透明感が急速に強まりPERは上昇傾向となりました。

なお、株式相場のステージと金利には密接な関係がありますが、金利上昇はより広義に「テーパリング(量的緩和縮小)まで含む金融引き締め」を、金利低下は「量的緩和を含む金融緩和」を含めて良いと考えられます。FRBがテーパリングを示唆した2021年9月は株価が短期調整し、その後再び上昇に転じました。この上昇相場は「業績相場」と言えるかもしれません。

しかし、FRBは2021年11月にテーパリング(量的緩和縮小)を開始し、2022年3月には利上げを再開するなど、金融政策は明確に引き締めモードに変わります。米国株式相場(S&P500)は2022年年明けにピークを付けた後は下落基調に転換しましたが、そこが「逆金融相場」のスタートになったと考えられます。

事実、2022年は米10年国債利回りが上昇局面となり、2021年末1.51%から2022年6月には3.47%まで上昇しました。2022年前半、グロース銘柄が多いナスダック指数や東証マザーズ指数の下げが厳しくなりました。

現在は、「逆金融相場」と「逆業績相場」の間くらいの局面かもしれません。

6月10日発表された米消費者物価は、金利上昇懸念を強め、相場の下落につながりました。しかし、7月13日発表の米消費者物価は、米長期金利の低下につながり、株価は波乱を免れました。「逆金融相場」と「逆業績相場」の間には中間反騰局面があるとされ、現在はそこに位置していると考えられるため、株価の落ち着きを得ているのかもしれません。

教科書的に考えれば、今後は「逆業績相場」が控えており、今後の決算発表ではその様相がいっそう強まると考えられます。株式市場に対しては慎重に構えるべきなのかもしれません。

ただ、東京株式市場についても、米国の金利動向を単純に当てはめて、同じステージと考えてよいのでしょうか。そもそも、日銀はいまだ金融緩和を続けており、日本の金融政策と金利動向を考えると、現在が「逆金融相場と逆業績相場の間」と考えるのはしっくりいかないものです。

グローバルな株式市場を4つのステージで語ろうとするとき、世界の金融政策は同一方向に動くことが前提条件になっているように思われます。現在のように、日銀と欧米の金融政策の方向感が異なる場合は、異なる考え方が必要ではないでしょうか。すなわち、東京株式市場は「金融相場」と「業績相場」の間かもしれません。経済再開について、日本は欧米から遅れており、業績回復はここからが本番ではないでしょうか。

また「金利」といっても、政策金利(短期金利)もあれば、長期金利もありますし、すでにご説明したように、量的緩和や縮小等も含めて金融政策をトータルで考える必要も出てきます。短期金利は金融政策の方向感をおもに反映しますが、長期金利は中長期的な景況感やインフレ等への予想が入ってきます。

現在、米政策金利は年末に向けて上昇が続くと予想されていますが、市場が「金融引き締めが効きすぎて米経済は不況になる」と予想すれば、長期金利が低下する局面も出てくるでしょう。この辺は応用問題となりますが、現在の相場をよく見ることで、良い学習効果を得る機会になるかもしれません。

(提供元:SBI証券)

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