「後払い決済」だけで“多重債務化”する可能性あり!?
手元にお金がなくても買い物できる「後払い決済」の注意点
コロナ禍を機に、急速に浸透してきたキャッシュレス決済。その支払い方で、最近増えてきているのが「後払い」だ。手元にお金がなくても利用できて便利な気もするが、気づかないうちに使いすぎてしまいそうな怖さもある。
そこで、ファイナンシャルプランナーのFPよしおさんこと秋山芳生さんに、「後払い決済」を利用する際の注意点や支出管理のコツについて、聞いた。
与信審査が緩いから誰でも使える「後払い決済」
「後払い決済」は、一定期間の購入代金を後日まとめて支払う決済方法。クレジットカードと似た仕組みだが、大きな違いがあるという。
「クレジットカードは、カード会社と契約する際に与信審査があるため、誰もが持てるわけではありません。しかし、プリペイドカードやQRコード決済などで選択できる『後払い決済』は与信審査が非常に緩く、収入のない学生や専業主婦でも利用できます。そこがメリットであり、デメリットでもあるのです」(秋山さん・以下同)
学生や専業主婦だと、どうしても必要なものがあるものの、手元にお金がないという場面はあるだろう。そのような時に、ひとまず購入し、後で支払うという買い方ができるのは、メリットといえるだろう。
ただし、以下のようなデメリットがあることも忘れてはいけない。
●収入がなくても利用できる
「繰り返しになりますが、『後払い決済』は与信審査が非常に緩いので、収入がない人でも利用できます。つまり、自身で支払える金額以上の買い物ができてしまう可能性があるということです」
●支出を管理しづらい
「『後払い決済』は、買い物をした時点ではお金が減らないため、何にいくら使ったか、その後いくら使えるのかといったお金の管理が難しくなります」
●手数料がかかる場合がある
「サービスによって、手数料が発生するものがあります。例えば、『PayPayあと払い』は翌月一回払いであれば手数料はかかりません。一方、プリペイドカードの『バンドルカード』で後払い式のポチっとチャージを利用すると、1万円チャージで510円の手数料がかかります。実は手数料によって損をしているケースがあるので、事前に確認しましょう」
複数のサービスの同時利用は“高リスク”
「後払い決済」は使い方によっては、多くの負債を抱えてしまうことになりかねないそう。
「『後払い決済』は、(1)お金がない、(2)先に物品が欲しい、(3)与信審査でクレジットカードを持てない、という3つの条件が揃った人が使うであろうことを考えただけでも、リスクが大きいことがわかると思います。この条件を満たす人でもどんどん買い物ができてしまうので、支出が収入をオーバーし、借金ができてしまう可能性が高いのです」
支払えないからといって踏み倒そうとすれば、自身の信用情報に事故情報が登録されてしまうだろう。さらに、負債が増してしまう使い方もあるという。
「『後払い決済』は与信審査が緩いので、A社の『後払い決済』の利用上限額に達した後も、B社の『後払い決済』を利用すれば、さらなる買い物ができてしまいます。3つも4つも『後払い決済』を利用して、多重債務化してしまうことが一番のリスク。気軽に使える便利なサービスではありますが、手を広げすぎると危険です」
後払い決済利用のコツは「事前確認」と「家計管理」
「後払い決済」を利用する際には、どのような部分に注意を払うといいだろうか。
「まずは、手数料をチェックすること。手数料がかかるサービスだと余計な支出が増え、損をしてしまいます。手数料無料のサービスを選ぶようにしましょう」
注意点や使い方のコツを聞いてきたが、秋山さんは「そもそも『後払い決済』を利用しないで済むように、家計を管理することが大事」と話す。
「『後払い決済』は、リスクの高い買い物です。このサービスを利用しなくても生活が回るように、お金を管理しながら使っていくことが大前提となります。『後払い決済』を利用する前に、日々の支出の見直しから始めることをおすすめします」
その便利さと手軽さで、うっかり使ってしまいそうな「後払い決済」だが、さまざまな落とし穴が隠されていそうだ。利用する際は、今後のことも考えて慎重に。
(有竹亮介/verb)
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秋山芳生
ファイナンシャルプランナー。立教大学卒業後、博報堂に入社し、2014年にマネーフォワードに参画。また、家計再生コンサルタント横山光昭氏とお金の相談窓口「miraitalk」を立ち上げ、年間1000件以上の家計相談を受ける。現在は独立し、FP YouTuberとして家計改善やライフプランニング、資産形成に関する情報配信やオンライン面談などを行っている。