選択のポイントは「地域の電波状況」「よく利用するお店」
スマホ、買い物、投資「○○経済圏」ってどう選べばいいの?
近年、「楽天経済圏」や「PayPay経済圏」といった言葉が出てきて、耳にしたことがあるという人も多いのではないだろうか。ここでいう「経済圏」とは、消費や投資といった経済活動を特定の会社のサービスで完結させることを指している。
同じ会社のサービスを連携させることでポイントが増えるなど、一社に統一するメリットは大きそうだが、どの会社に絞るとよりお得に使えるのだろうか。ファイナンシャルプランナーのFPよしおさんこと秋山芳生さんに、各経済圏の特徴を教えてもらった。
とにかくポイントが貯まりやすい「楽天経済圏」
「経済圏と呼ばれるところは、スマートフォン、キャッシュレス決済、ECサイト、証券会社、ふるさと納税のサービスなどを総合的にカバーしている会社が挙げられますが、そのなかでも圧倒的に強いのは楽天といえるでしょう」(秋山さん・以下同)
秋山さんが楽天を「強い」と表現する理由のひとつに、「SPU(スーパーポイントアッププログラム)」という制度がある。
「『SPU』とは、対象サービスの条件を満たすことで、楽天市場での買い物のポイント付与率が上がっていくもの。楽天モバイルを契約するとプラス1倍、楽天カードを利用して楽天市場で買い物をするとプラス1倍といった形で、最大14倍(2022年11月1日以降は最大16倍)まで増やすことができます。例えば、『SPU』でポイント10倍になる条件を満たし、楽天市場で1万円買い物した場合、本来1%還元のところが10%還元になるので、1000円分のポイントが返ってくるのです」
さらに、「楽天お買い物マラソン」「楽天スーパーSALE」といった、楽天市場のポイントが増えるイベントを狙って買い物をすると、「SPU」も相まってポイント付与率がかなり高くなるという。
「楽天が強いといえるもうひとつの理由は、QRコード決済の楽天ペイが利用できる加盟店がかなり多いことです。コンビニやドラッグストアの多くで利用できますし、楽天カードから楽天ペイへのチャージで0.5%、楽天ペイでの買い物で1%、さらに加盟店利用で1%のポイントがつくといったポイントの3重取りができます。楽天モバイルや楽天ひかりといったインフラも強化されてきているので、日頃から楽天市場や楽天カードを利用している人であれば、かなりお得になると思います」
公共料金が払えるなど独自路線を進む「PayPay経済圏」
「楽天経済圏」と並んで「PayPay経済圏」もよく聞くが、こちらはまったく異なる個性を持っているとのこと。
「チェーン店を網羅している楽天とは異なり、PayPayは個人経営の飲食店や美容室などを独自に開拓していて、クレジットカードが使えないお店でも導入されているイメージがあります。よく利用するお店でPayPayが使えるなら、ほかのサービスを集約してもいいでしょう」
また、PayPayモールやYahoo!ショッピングといったECサイトは、合計4億点以上の商品を扱っているため、買い物の面でも利用しやすいという。
「ただ、2022年10月にPayPayモールがYahoo!ショッピングに統合されることを受けて、ポイント制度が変化するので、今後お得になるかどうかは判断しづらいタイミングです」
PayPayには、他社にはないサービスも存在する。水道光熱費や税金の支払いだ。
「住んでいる自治体や利用している電力会社、ガス会社、水道局がPayPayに対応していれば、公共料金や税金の支払いをスマートフォンで完結できます。請求書を持ってコンビニに行く手間が省けるので、メリットと感じる人は多いのではないでしょうか」
携帯会社が展開する「経済圏」も要チェック
経済圏というと、キャッシュレス決済やECサイトのポイントばかりが注目されるが、そのベースとなるスマートフォンも重要なポイント。その点では、「docomo経済圏」や「au経済圏」も見逃せない。
「地方でも電波が安定しやすいdocomoは、スマートフォンにおいての優位性が高いといえます。また、dカード GOLDで電話料金やドコモ光の料金を支払うと、10%ポイントバックがあるのも魅力です。ただ、dカード GOLDは年会費1万1000円(税込)かかるので、固定費が大きくなるというデメリットはあります」
秋山さん曰く、「docomoの格安プラン・ahamoを利用して通信費を抑えたうえで、dカード GOLDを使うと、ポイントが貯まりやすくていいかもしれない」とのこと。
一方で、auは個性的な経済圏を築いているという。
「auのスマートフォンやau PAYカード、ローソンなどで貯まるPontaポイントを、au PAYマーケットで利用できるポイントに変えると、auスマートパスプレミアム会員(有料)ならポイントが1.5倍(非会員は1.1倍、ともに交換上限あり)になるという独自のサービスがあります。1000ポイントあったら1500ポイントに増えるので、auユーザーやローソンをよく利用する人であればお得でしょう」
auでも「買い得メンバーズ」というポイントアップ制度があり、au PAYカードでの支払いでプラス1.5%、au PAYふるさと納税寄付の利用でプラス1%など、各種サービス利用で最大9%増える。au PAYマーケットでの購入金額に応じて、クーポンがもらえるという特典も。
「auは、金融サービスにも強い印象です。au PAYカードを利用してauカブコム証券で投資を行うと、1%のポイントバックがあります。また、auじぶん銀行とau PAY、au PAYカード、auカブコム証券を連携すると、普通預金の金利が最大年0.2%に上がるという仕組みも取り入れています。預金の金利が上がるのは、かなり大きいですよね」
投資でポイントゲットするなら「三井住友カード×SBI証券」
投資家であれば、押さえておきたい経済圏もあるという。
「まだ経済圏という呼ばれ方はしていませんが、三井住友カードとSBI証券は、投資家にとってお得になりやすいタッグだといえます。この2つを連携すると、SBI証券での毎月の積立額に応じて0.5~2%のポイントが付与されるんです。例えば、ポイント付与率2%で毎月3万円積み立てたとすると、1年間で7200ポイントが貯まります」
さらに、三井住友カードのナンバーレスカードまたはカードレスカードを、全国のセブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、マクドナルドで利用すると、最大5%のポイントが還元されるそう。頻繁に利用する店舗があれば、あっという間にポイントが貯まるだろう。
「それぞれの特徴を紹介してきましたが、大切なのは自分の生活圏で利用できるかどうか。料金が安いという理由で楽天モバイルを選んでも、電波が通じない地域に住んでいたら意味がありません。それなら電波が通じるdocomoやauの回線が使える格安プランのahamoやpovoを活用しながら、『docomo経済圏』や『au経済圏』を軸にした方がいいかもしれない。頻繁に利用するお店で使えるのは楽天ペイかPayPayか、投資をするかしないか、経済活動にまつわるさまざまなことを洗い出して、利用する経済圏を決められるといいでしょう」
さまざまなサービスを1つの会社に絞ると、お得になりやすくなってきている。バラバラに利用している人は、見直してみるいいきっかけになるだろう。
(有竹亮介/verb)
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秋山芳生
ファイナンシャルプランナー。立教大学卒業後、博報堂に入社し、2014年にマネーフォワードに参画。また、家計再生コンサルタント横山光昭氏とお金の相談窓口「miraitalk」を立ち上げ、年間1000件以上の家計相談を受ける。現在は独立し、FP YouTuberとして家計改善やライフプランニング、資産形成に関する情報配信やオンライン面談などを行っている。