名前は似ているけれど…
厚生年金と厚生年金基金はまったくの別物 厚生年金基金は「もらい忘れ」に注意
提供元:Mocha(モカ)
「厚生年金基金とは?」と聞くと、公的年金制度の厚生年金と混同している人は少なくありません。また、自分が厚生年金基金に加入していたかどうかがわからない人もいます。厚生年金基金のことを正しく理解していないと、加入歴があるにもかかわらず年金をもらい忘れることがあるかもしれないのです。
そこで今回は、厚生年金と厚生年金基金の違いや概要のほか、厚生年金基金の加入歴を確認する方法をご紹介します。
厚生年金と厚生年金基金はまったく別物
あなたは、厚生年金と厚生年金基金の違いをご存じですか?実は、まったく別物なのですが、名前が似ていることで同じものだと勘違いしている人も少なくありません。そこで、ここでは厚生年金と厚生年金基金の違いについて解説します。
●厚生年金は公的年金制度の1つ
日本の公的年金制度には、国民年金と厚生年金があります。国民年金は、20歳になると誰もが加入する年金です。それに対して厚生年金は、会社員や公務員が加入する年金です。厚生年金に加入すると、国民年金にも加入したことになります。会社員や公務員は、国民年金と厚生年金の両方から年金をもらえます。
●厚生年金基金は企業年金制度の1つ
厚生年金基金は1966年10月から始まった企業年金制度の1つです。企業が厚生年金基金を設立して、国が支給する老齢厚生年金の報酬比例部分を代行して給付し、さらに独自の年金を上乗せして給付を行うしくみになっています。勤め先が厚生年金基金に加入している場合、社員は自動的に厚生年金基金に加入することになります。
つまり、厚生年金は原則すべての会社員が加入するものですが、厚生年金基金は勤め先が加入しているかどうかによって加入の有無が決まるのです。
2014年の法改正で厚生年金基金がなくなった?
1966年に制度が始まった厚生年金基金ですが、バブル崩壊で資産の運用状況が悪化し財政難となり、年金の代行部分(厚生年金基金が国に代わって給付を行う部分)を給付するのに必要な額を確保できない(代行割れ)基金が出てきました。
加えて、とある運用会社による不祥事が発覚したことがきっかけとなり、2014年4月から「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」が施行されました。そのときに見直された部分は以下の通りです。
●厚生年金基金の見直し内容
・施行日以後は厚生年金基金の新設を認めない
・施行日から5年経過後は基準を満たさない基金は解散命令を発令する
・厚生年金基金から他の企業年金への移行を促進する
要するに、法改正によって厚生年金基金は実質廃止となったのです。
厚生年金基金の加入歴がある人はもらい忘れに注意!
加入していた厚生年金基金が廃止・解散している場合でも、厚生年金基金への加入歴があれば年金を受給できます。年金のもらい忘れに注意しましょう。
解散が2014年3月31日以前の厚生年金基金の場合、企業年金連合会が年金を引き継いでいるので、老齢年金の代行部分と上乗せ部分は企業年金連合会から支給されます。
解散が2014年4月1日以降の厚生年金基金の場合は、代行部分の年金資産は国が引き継ぎ、上乗せ部分は加入者本人の選択によって企業年金連合会に移管されています。よって、代行部分は国から老齢厚生年金として支給され、上乗せ部分は企業年金連合会から給付されます。
ただ、厚生年金基金がどのようなものかを理解していない人も多く、転職歴のある人は自分が厚生年金基金に加入していたかどうかがわからない場合もあるでしょう。特に、2014年3月31日以前に解散している基金の場合、年金の給付先が国ではないため、もらい忘れが発生しやすいかもしれません。
では、自分が厚生年金基金に加入していたかどうかは、どうしたら確認できるのでしょうか?
実は、日本年金機構と企業年金連合会が、厚生年金基金に加入歴がある人のデータを突き合わせる作業を進めています。データ突き合わせの結果、加入歴がある人に対して、本人へ職歴や加入記録などを確認するための文書を送付しているそうです。
また、企業年金連合会のサイトでは、厚生年金基金への加入記録があるかどうかを確認できるフォーム「企業年金連合会の年金記録の確認」が設置されています。自分の加入歴がわからない人は問い合わせてみることをおすすめします。
まとめ
企業年金制度の1つである厚生年金基金は、2014年4月以降に実質廃止となりました。廃止となった厚生年金基金の年金資産は、解散時期によって、国が引き継いでいる場合と、企業年金連合会が引き継いでいる場合があります。
企業年金連合会が引き継いだ基金に加入していた人や転職歴がある人は、年金のもらい忘れが起きやすいかもしれません。でも、企業年金連合会のサイトから加入歴を確認することができるので、自分の加入履歴がわからないときはぜひチェックしてみてください。
[執筆:ファイナンシャルプランナー 前佛朋子]
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